第117回 医師国家試験分析(前編):大学別合格状況・合格基準は?

2023年2月4,5日の2日間にわたり,117回医師国家試験が行われました.

メディックメディアでは国試採点サービス「講師速報」を毎年行っているのですが,
おかげさまで今回なんと9,500人を超える受験生の方にご参加いただき,
たくさんの解答情報を得ることができました.

そこで,このコーナーでは採点サービスで得られた情報などに基づき,
117回国試の傾向はどうだったのか,
受験生はどのような問題でつまずくのか
を分析していきたいと思います.

118回国試対策に,ぜひ分析結果を活用してください.

 

目次

■合格状況(117回医師国家試験)

117回医師国家試験合格状況
医師国家試験合格率グラフ

まずは受験者数.

近年は毎年約10,000人が受験しており,合格率は90%前後で安定しています.
10人のうち9人が合格する試験だけに,「他の人が解けない問題を解けた人」が合格する試験ではなく,
「多くの人が解けた問題を確実に解いた人」が合格する試験といえるでしょう.

つまり,他の受験生の動向から大きく外れた勉強をしない,
不合格とならない勉強」を心がける必要があります.

■大学別合格状況(117回医師国家試験)

117回医師国家試験大学別合格率

■出題数と時間割

医師国試は,全400問を2日間で解きます.

113回までは各日で出題数に微妙な違いがありましたが,
114回からは1・2日目の時間割が統一され,出題数が均等に200題ずつになっています.

医師国家試験時間割

●1問あたりの所要時間

さてここで,1問をどれくらいのスピードで解いたらいいか考えてみましょう.
ブロックごとに1問あたりの所要時間を概算してみました.

医師国家試験 1問あたりの所要時間

どのコマもだいたい2分で1問解かなければなりません.
ただ,どの問題も均等に2分使っていいわけではありません.
当然,一般問題より臨床問題の方が問題文を読む時間がかかります
また,どのブロックにおいても見直しの時間を設ける必要があります(マークミスに要注意!).
模試などを受けて,自分なりに時間配分を検討してみましょう.

ちなみに,両日とも試験開始時間が9:30,終了時間が18:30です.

■出題形式

●五肢択一だけじゃない!

国試は400問すべてマークシート方式ですが,
出題形式で最も多いのはA形式と呼ばれる五肢択一の問題形式です.
他に,X2形式と呼ばれる“2つ選べ”問題,X3形式と呼ばれる“3つ選べ”問題,
多肢選択と呼ばれる6肢以上の選択肢から選ぶ問題,そして数値を解答する計算問題といった出題形式があります.
下記の円グラフが示すとおり,117回もダントツでA形式の問題が多かったです.

117回医師国家試験問題形式内訳グラフ

●曖昧な知識では正解できない!

では次に,選択形式の問題の平均正答率をみてみましょう.

医師国家試験問題形式内訳

117回の選択形式の問題における平均正答率は,X2問題は113回以降で最も低く,
反面その他の形式は113回以降で最高値となりました.

しかしながら,111回以前のX2,X3形式の平均正答率がA形式よりも低くなるという傾向は
117回でも変わらず続いています.

知識が曖昧なままだと,解答を1つ(2つ)選べず,失点してしまうというのがX2,X3形式の恐ろしさです.

●計算問題は落ち着いて正確に!

117回国試では【C75】,【F71】,【F75】と,3問の計算問題が出題されました.
中でも正答率が低かったのは【F75】の細胞外液量を求める計算問題(正答率34.9%)です.

細胞外液量については解剖学や生理学で真っ先に学習する内容ですが,今まで国試には出題されておらず,
具体的な求め方について覚えている方が少なかったのではないかと考えられます.

計算問題の演習では,
まず感度・特異度や寄与危険割合,標準化死亡比といった計算問題に出てくる用語の定義や,
その求め方をすぐに使えるように覚えておくことが重要です.
さらにA-aDO2や血漿浸透圧の求め方といった重要な公式
特に出題されたことのある公式やその周辺の公式をピックアップして,使えるように覚えてください
また,日頃から問題文中から計算方法を読み取ることや,丁寧に手計算することを心がけましょう.

また,117回では初めて臨床長文問題(いわゆる3連問)において計算問題が出題されました.
116回では,これまでA形式(五者択一)しか出題のなかった必修ブロックで出題されたこともあり,
どのブロックのどの箇所に計算問題が来ても,慌てないように心構えをしておく必要がありそうです.

■合格基準

●3項目を全て満たせば合格

国試では,必修問題,一般問題・臨床問題それぞれに合格基準が設けられています.
どちらも合格基準を上回らなければ合格できません.
また,臨床現場において絶対にしてはいけない選択肢禁忌肢と呼び,
この禁忌肢をある一定の数以上選択してしまうと,それだけで不合格になってしまいます.

117回の合格基準をみてみましょう.

117回医師国家試験合格基準

必修問題の合格基準は,年によって変わらない絶対基準です.
他の人ができていようがいなかろうが,80%以上の得点率でなければ合格できません.

対して,一般・臨床問題の合格基準は相対基準です.
他の受験生の出来具合で基準が毎年変わりますが,例年70%前後です.

また,117回から禁忌肢問題数が3問以下から2問以下になりましたが,
これについては中編で詳しく述べていきます.

■採点除外等の取り扱いとした問題

国試では例年,合格発表時に厚労省から採点除外となる問題や,複数正解となる問題が発表されます.
問題そのものは適切だが,国試で出題するには難度が高すぎるものや,
設問文の解釈次第で複数パターンの正答が出てしまうものに対して,これらの対応がなされます.

117回では5問が該当していました.

117回医師国家試験除外問題

なんと今年は5問全てが③の採点除外でした.

①のケースは,今のところ必修問題のみが該当します.
採点除外は,基本的には平均正答率の低いものが該当しますが,常にそうとはいいきれないので注意しましょう.

117回国試分析,前編はここで終わりです.
中編では不合格者についての細かい分析を行っていきます.

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