
薬がみえる シリーズ
●ざっくり言うと…
・出題数ダントツ1位は公衆衛生!難易度No.1は麻酔科!
・臨床重視!検査や治療などの対応を問われる問題が多い!
・リベンジ問題対策が重要!
前編,中編に引き続き,今回も112回医師国家試験を分析していきます.
正答率などのデータは,メディックメディアで行った医師国試採点サービス「講師速報」で得られた情報を用いています.
まずは分野別の傾向を捉えましょう.
出題数の多い分野は勉強時間を割かなければいけません.
問題数を棒グラフにしてみます.
(クリックで大きな画像を表示)
出題数のダントツ1位は公衆衛生です.
この傾向は何年も変わらず,また,以前は一般問題での出題が多かったのですが,臨床問題でも問われるようになりました.
勉強が先延ばしにされがちな公衆衛生ですが,秋ごろには(遅くとも11月くらいまでには)手をつけ始めることをオススメします.
さて,次に多いのが小児科,循環器,呼吸器など.この他,例年,消化器(消化管,肝胆膵)や神経,代謝・内分泌,産婦人科あたりも出題数が多く,勉強に重きをおくべき科目です.
そして,マイナー科目(眼科~放射線科)は全体の約16%を占めています(例年15%前後の出題です).
その中でも精神科が多くなっています.
これは毎年言えることなので,マイナーの中でも精神科は特に重要な科目かもしれません.
また,近年は救急(研修医に必要な知識を主に)の問題も多く出題されるようになってきているため,対策を怠らないようにしましょう.
分野別出題数と同じ表で,科目ごとの平均正答率もみてみましょう.
112回全問(採点除外を除く399問)の平均正答率が約81%でしたが,そんな中,平均正答率が70%台となった科目が消化管,肝胆膵,代謝・内分泌,呼吸器,中毒,救急,婦人科でした.
平均正答率が低い(難易度が高い)分野は毎年変わりますが,わりと低くなりがちな分野は代謝・内分泌,呼吸器,婦人科などが挙げられます.
そして,112回で最も平均正答率が低かった科目は麻酔科の53.2%.
【112C30】麻酔導入が正答率52.6%,【112F50】癌性疼痛への対応が正答率19.9%と,3問中2問の正答率が著しく低くなりました.
正答率が下がる問題には「細かすぎるマニアック問題」もありますが,ほとんどが「臨床的に重要な内容だけど,初出・あるいは近年問われていなかった内容のため正答率が低くなった問題」です.
こういった問題は翌年以降,中編にてお話した類題や,あるいは後述のリベンジ問題として問われる可能性が高くなります.
112回国試でも,例年通り多くの画像問題が出題されました.
全400問のうち,111問(27.8%)が画像問題でした.
ちなみに画像を1枚ずつカウントしたところ,総数は157枚でした.
特に臨床問題では,画像問題の出題率が高く(250問のうち105問),合否を分ける大きな要素となっています.
画像問題で提示する画像は,単純X線写真やCT,MRI,超音波検査,内視鏡検査,病理像,病変の肉眼像,また,医療器具や診察の様子など多岐にわたります.
画像問題の中には症例文の情報のみでは解答できず,画像が何を示しているのかがわからないと解けない問題も多いため,学生さんの中には苦手意識をもつ人も少なくないようです.
そんな画像問題,どのように対策したら良いのでしょうか.
国試における画像問題を攻略するためには,できるだけ早いうちから勉強をするときに画像も見る習慣をつけ,画像慣れをしておくことが重要です.
まず,過去問で出てきた画像については必ず勉強しましょう.
問題集やネット講座を用いるのも良いですが,一歩進んで大学の先生に読影のポイントなども聞いてみるとなお良いです.
そしてなにより大事なのが,実習中に受け持ち患者さんの検査や治療を積極的にみせてもらい,単純X 線やCT などでは読影にチャレンジしてみることです.
特にCT,MRIなどで胸部・腹部の血管を追いかけ重要臓器を確認すると,解剖の復習にもなります(結構いいトレーニングになりますよ!).
ただし,見ることができる症例が限られているのが実習の弱点でもあります.
国試で出題される可能性がある画像を全てカバーすることはできません.
そこで,実習や国試勉強に合わせて,『year note ATLAS』や『病気がみえる』シリーズを活用してください.
また,インターネットで調べることも非常に有効な学習法になると思います.
臨床問題の出題傾向を知るため,臨床問題を3タイプに分類し,国試での出題数を数えました.
診断型:症例文で与えられた情報から,診断名を答える問題
病態型:症例の基本病態や予想される所見,合併症を答える問題
対応型:症例に対し,適切な検査や治療を選択する問題
(クリックで大きな画像を表示)
国試では,「症例文から診断名がわかるか(=診断型)」だけではなく,「個々の症例の全体像を理解できるか(=病態型)」,「個々の症例に対して適切な対応を選択できるか(=対応型)」ということも問われています.
その中でも対応型は最も出題数が多く,医師として患者さんを受け持ち,主体的に検査や治療を計画・実行していくための臨床的な思考力・判断力が求められていると言えるでしょう.
特に近年は,臨床実習に重きをおくながれがあり,実習での経験の有無によって解答可能か否かがわかれる問題に加えて,「研修医レベルの知識を問う問題」も年々増加しています.
どのような問題が出題されるのか,こちら↓の記事でチェック!
他にも,患者によって対応が変わりうる問題も出題されます.
ぼーっと実習を受けるのではなく,意味をもって挑むようにしましょう.
中編でお話しした難問や割れ問,また,後編でお話した分野別の正答率のところで,リベンジ問題という言葉が登場しました.
国試では,正答率の低い問題や採点除外となった問題が,翌年以降に少しだけ形を変えて再び出題されることがあり,これをリベンジ問題とよんでいます.
実際の問題をみてみましょう.
【111H14】
2,000mLの維持輸液(電解質組成:Na+ 35mEq/L,K+ 20mEq/L,Cl- 35mEq/L)に相当する食塩〈NaCl〉の量に最も近いのはどれか.
a 2g
b 4g
c 6g
d 8g
e 10g
正解はbで,正答率は57.4%と,必修問題のわりに非常に低い正答率となりました.
さて,続けて今年の問題をみてみましょう.
【112C4】
末梢静脈路から1Lの維持輸液製剤(電解質組成:Na+ 35mEq/L,K+ 20mEq/L,Cl- 35mEq/L)を投与する際,この製剤に追加できるカリウムの最大量(mEq)はどれか.
a 2
b 4
c 20
d 40
e 200
正解はc,正答率は42.9%.
実は,維持輸液についての問題は【110B5】維持輸液の組成(正答率34.6%)から始まり,問う内容を毎年少しずつ変えながら3年連続出題されています.
いずれの問題も正答率は低いのですが,輸液は臨床上重要な内容なので,今後も何度も問われると思います.
過去問は必ず解いた上で,周辺知識についても学ぶようにしましょう.
難しかった問題や,採点除外となった問題は,そのときの受験生は気にしなくても大丈夫です(なぜならみんな解けていないから).
しかし,これから国試を受けるみなさんは,リベンジ問題に備えて一歩進んだ勉強をしなければなりません.
単純に難しすぎたり,細かすぎたりするような問題ではなく,臨床上重要事項なのに正答率が低かった問題は,リベンジ問題となる可能性が高まります.
正答率が低かった問題はなぜ正答率が低くなったのか,同じく採点除外となった理由はなにか,解くためのポイントは何だったのか,このようなことを,過去問題集を用いて勉強しておきましょう.
以上,データをもとに112 回国試を分析してきましたが,お役に立てたでしょうか.
前編の最初にお話したとおり,国試合格に必要なことは「他の受験生が解ける問題が確実に解ける」ことです.
今まで合格してきた先輩や,周りの受験生の勉強法を意識し,同じような知識レベルと思考回路をもって本番に臨むようにしましょう.
113回国試に向けて,みなさん頑張ってくださいね!
↓前編と中編はこちらから↓
↓本記事の分析は弊社の医師国試採点サービス「講師速報」より得られた正答率などを使用しています.