[6年生向け]
注目したい感染症(その3)

こんにちは,編集部のA.Mです.
いよいよ年が明けました.
みなさん,どのように年末年始を過ごされたのでしょうか.
私が受験生だったときは,苦手な一般問題を克服すべく,
「データ・マニュアル」をひたすら解いていた記憶があります・・・

 

さて,年末からお届けしてきた『注目したい感染症』シリーズ,
最終回の今回は,次の内容についてです.
●敗血症
●E型肝炎
●B型肝炎とC型肝炎の合併とHBVの再活性化

 

◆◆◆定義の変更があった感染症◆◆◆

 

●敗血症●

 

敗血症の定義,今年に入って大きく変わったことを
みなさんご存知でしょうか.
おそらくニュースで聞いたか,大学・予備校の先生から
お話があったかと思います.

 

敗血症のこれまでの定義は,
感染症によって生じたSIRS(全身性炎症反応症候群)」でした.

 

さて,新しい定義はというと,
感染症に対する宿主の調節不能な免疫反応によって引き起こされた,
致死的な臓器障害」となりました.
敗血症では,免疫の活性化だけでなく,
抑制も生じていると現在では考えられています.
とても複雑な病態なのです.

 

臓器障害については,quick SOFA(qSOFA)scoreを用いて評価します.
次の3項目のうち,2つ以上を満たし,
かつ感染症が疑われれば敗血症と判断されます.
●呼吸回数≧22回/分(頻呼吸)
●精神状態の変化(意識障害など)
●収縮期血圧≦100mmHg(血圧低下)

 

qSOFA scoreは,ベッドサイドなどで簡易的かつ
早期に敗血症による臓器障害をとらえ,治療を行うための評価方法です.
SIRSに比べて血液検査などを行うことなく,判断することができます.

 

さらに,敗血症性ショックは,
「敗血症のうち,十分な輸液などの処置を行っても,
平均動脈圧65mmHg以上を維持するために循環作動薬(ノルアドレナリンなど)が必要で,
かつ,血清乳酸値>2mmol/L(18mg/dL)の場合」と,定義されました.
ショックからの離脱などがより明確になったといえます.

 

ちなみにそろそろ日本版の最新ガイドラインも出るとの話もありますので,
研修医になったら目を通しておくといいと思います.

※「日本版敗血症診療ガイドライン2016」は,2016年12月に公開されました.

 

◆◆◆肝炎ウイルスによる感染症◆◆◆

 

●E型肝炎●

 

2015年10月,肝臓移植時の輸血によりE型肝炎ウイルス(HEV)に感染し,
慢性肝炎を発症したというニュースが報道されました.
これまでHEVの感染は報告されてきましたが,
わが国でのE型慢性肝炎の報告は初となります.

 

移植時には免疫抑制剤を用いるため,免疫能が低下しており,
これが慢性化につながったと考えられています.

 

ちなみに,急性E型肝炎は,主に猪肉,鹿肉,豚レバーなどの生食による
ウイルス感染により生じます.
症状や経過はA型肝炎に似ており,わが国では北海道に多い疾患です.
重要なのは,妊娠後期に感染すると,
10~20%で重症化や劇症化がみられることです.

 

●B型肝炎とC型肝炎の合併とHBVの再活性化●

 

B型肝炎とC型肝炎が合併している場合,
C型肝炎ウイルス(HCV)の活動性が強く,
B型肝炎ウイルス(HBV)の増殖は抑制されていることが多いです.
このような場合にC型肝炎の治療を行うと,
HCVの減少を機にHBVが再活性化し増殖することがあります.

 

例えば,C型肝炎患者に治療を行った際に
肝炎が増悪(黄疸の出現など)した場合,
HBVの再活性化を疑う必要があります.

 

また,再活性化を避けるために,
C型肝炎の治療(抗ウイルス薬の投与)前・中には,
必ずHBVマーカーをモニタリングし,
HBV-DNA量の増加がみられた際には核酸アナログを投与します.

 

共感染例だけでなく,HBV既往感染者に免疫抑制を起こす薬
(ステロイド,抗リウマチ薬,生物学的製剤,抗がん薬など)を
投与した際,HBVが再活性化することがあります.
HBV既往感染者に上記のような薬を投与する場合も,
HBVマーカーのモニタリングを行う必要があります.

 

HBVの再活性化は重要トピックであり,
110回医師国家試験の一般問題(110A4)でも問われている内容ですので,
111回では臨床問題で問われるかもしれません.

 

3回に分けてお届けしてきました『注目したい感染症』シリーズ,
いかがでしたでしょうか.
111回国試の助けになればと思います.

 

感染症に関することだけでなく,どの分野であっても,
ニュースやトピックスについては耳に入れておきたいものですね.
ただ,情報を自分で追いかけるのは大変!というアナタには,
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それではこのへんで.
国試まであと少し,がんばってください!

 

(編集部A.M)

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