[分析]データでみる111回国試(その1)合格率・合格基準は?

こんにちは!編集部のA.Mです.
新学年が始まって,もう3週目に入りました.
6年生の方は国試まですでに1年を切っていますね.
先輩が受けた111回国試を詳しく知って本格的な試験勉強を始めませんか…!

というわけで,これから6週にわたって
「データでみる111回国試」というメルマガを配信してまいります.
今後どう国試対策をしていくのがよいか,みなさん一緒に考えていきましょう!

まず第1回目の今回は,皆さんに
「医師国家試験」のイメージを掴んでいただくために,
・111回国試の合格率と合格基準は?
・採点除外・必修除外って?
というテーマでお届けします.

■111回の合格率と合格基準は?

医師国家試験では必修問題,一般問題,臨床問題のそれぞれに
合格基準が設けられており,その全てをクリアしなければなりません.
また,一定数以上の禁忌肢を選択してしまうと,
それだけでも不合格になってしまいます.

必修問題,禁忌肢は例年基準が一定です.
それに対し一般問題と臨床問題は,
相対評価で判定され,毎回基準が異なります.

直近5回で比較すると,合格率が最低値をマークしています.
(ちなみに直近10回(102回以降)の中でも最低値です.)

一方で合格基準をみてみると,
必修問題および,禁忌肢の基準は例年と変わりありませんでした.
ただし,今回は必修除外が4問もありました.

さて,一般問題および臨床問題はというと,
現在の医師国試出題基準(平成25年度版)に変わった107回以降,
一般問題はそれほど大きな変動はないものの,
臨床問題の基準は徐々に下がっています.
今年はついに,一般問題よりも臨床問題の基準の方が低くなりました.

臨床問題よりも一般問題の方が難しいというイメージをもつ学生さんは多いと思います.
(実際,一般問題の点数に伸び悩む受験生の方は多いです.)
しかし,今後は臨床問題も一筋縄ではいかない問題
(例えば,典型的な症状ではない症例の問題や,
経過を追って考えなければならない問題)が増えてくるかもしれません.

また,112回国試から,一般問題が大幅に削減されます.
詳しくはこちらの記事へ↓
https://informa.medilink-study.com/web-informa/post10530.html
点数配分などはまだ発表されていませんが,
今後,厚労省からの発表には注意しておきましょう.

■採点除外・必修除外って?

医師国家試験では,合格発表にあわせてその年の
「採点除外・必修除外・複数正解」の問題が発表されます.

採点除外は,必修問題を除く一般・臨床問題が対象となるものです.
111回ではE35(一般),G34(一般)の2問が
「選択肢(あるいは設問)が不明確で正解が得られないため」
といった理由で採点除外となりました.
この場合,該当する設問が採点対象から除外されます.
そのため,111回の一般問題は198点満点となりました.

複数正解は,「複数の正解があるため」複数の選択肢を正解として採点される問題です.
111回では,B57(臨床)が複数正解となりました.

それでは必修除外とはなんでしょうか.
まずは111回で実際に必修除外となった問題をみてみましょう.

【11H19】
体液平衡の指標について誤っているのはどれか.
a eGFRは筋肉量の影響を受ける.
b 高ナトリウム血症は水分不足を意味する.
c 血清尿酸値の推移は水分状態の良い指標である.
d 血清尿素窒素〈BUN〉値は蛋白異化の影響を受ける.
e 血清Na値とCl値の差の開大は代謝性アルカローシスと判断できる.

こちらは111回で必修問題として出題された設問です.
a 8.4%,b 20.9%,c 22.2%,d 0.5%,e 48.1% と
各選択肢の解答率から,実際の受験生が悩んだ問題であることがわかります.
みなさん,自信をもって解けるでしょうか.

誤りなのは「e 血清Na値とCl値の差の開大は代謝性アルカローシスと判断できる」です.

みなさんご存知のアニオンギャップ(AG)を求める計算式
「AG=Na+-(Cl-+HCO3-)」を変形すると,
「Na+-Cl-=AG+HCO3-」
となります.(まずこの変形を思いつけるかがポイント!)

※編集注:Na+の+,Cl-の-,HCO3-の-は上付き,HCO3-の3は下付き

血清Na値とCl値の差が開大する,つまり,
この式の左辺が大きくなる状態としては,
①AG増大
②HCO3-高値
の2つが考えられます.

②は確かに,血清Na値とCl値の差が開大すれば,
代謝性アルカローシスと判断できます.
①のようなAGの増加は,ケトアシドーシスなどの
不揮発性酸の産生過剰状態で起きますが,
この場合はアシドーシスが惹起されて同量の
HCO3-が低下するため,通常 Na+-Cl-は開大しません.

しかし,AGの増加は,低ガンマグロブリン血症存在下で
測定されない陽イオンが低下する場合や,
ペニシリン系抗菌薬投与時などに測定されない陰イオンが
上昇する場合でもまれに惹起されることがあるため,
血清Na値とCl値の差の開大が「代謝性アルカローシスと判断できる」とは
必ずしもいえないのです.

必修問題として出題するには,とても難しい内容ですね.
他の選択肢にも,内容があいまいで正誤の判断が難しいものがあり,
選択肢eだけで正誤を判断するのは難しく,
試験本番でこの問題を考えることになった受験生のみなさんは,
相当頭を抱えただろうと思います.
(他の選択肢と比べて“判断できる”と断定している点もポイントかもしれません)

このように,「問題としては適切であるが,必修問題としては妥当でない」問題が
必修除外として扱われるのです.

必修除外は一般・臨床の除外問題と異なり,
正解した場合は点数に含み,不正解だった場合は含まれません.
今年の必修除外はC21(必修臨床),F3,H7,H19(必修一般)の計4問でした.
つまり除外となった問題が全て正解だった場合は160/200点以上,
全て不正解だった場合は157/194点以上が合格基準となったわけです.

皆さんが受験当日には「何だこれ…訳がわからん…」となった問題も,
いざフタを開けてみれば,「採点除外か!気にしなくてよかった!
となるような場合もあります.
本番であまりに悩む問題に遭遇した際は,こういったことも思い出して,
その1問にあまりとらわれ過ぎないようにするのも大事かもしれません.

今回の「データでみる111国試」はここまで!
まずは一発目ということで,「医師国試って,こういう試験なのか」
ということが少しでもつかめたら幸いです.

残り5週は
・選択肢の形式とその内訳
・不合格の原因と内訳
・科目別出題数と正答率
・難問・割れ問の対策
・類似問題とリベンジ問題
について,111回受験生の解答データをもとに分析し,
実際の問題にもいくつか触れながら,ご紹介していけたらと思います!

それでは,次週もお楽しみに!
(編集部A.M)

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