[分析]データでみる111回国試(その4)出題分野の割合と分野別得点率は?
こんにちは,編集部A.Mです.
今回で「データでみる国試」シリーズも4回目となりました.
もう少しお付き合いくださいね.
さて,今回は「出題分野の割合」をテーマに,
国試を分析していこうと思います.
■ 出題数最多は公衆衛生,続いて循環器!
まずは110回と111回で分野別出題数にどんな変化があったのか,
早速みていきましょう.
例年と変わらず最も多いのは公衆衛生で,続いて循環器(昨年は呼吸器)でした.
循環器はメジャーの中でも最初の時期に
手を付け始める科目なので,大丈夫だと思いきや,
「実は急性心不全・慢性心不全の治療薬の違いや不整脈の治療薬が曖昧だ…」
という本音もチラホラ….
ですが,メジャーの中でも最大の問題数を誇る循環器の勉強を疎かにはできません!
そこで,今年の循環器ではどんな問題が出たのか,確認してみましょう.
【111B3】
高血圧性心疾患の患者が,肺水腫を急激に発症し,急性心不全と診断された.洞性頻脈で血圧は170/100mmHgである.浮腫などの体液貯留を認めない.
呼吸管理とともにまず行う治療はどれか.
a 利尿薬の投与
b ジギタリスの投与
c 血管拡張薬の投与
d ドブタミンの投与
e 生理食塩液の急速輸液
皆さん答えがわかりますか?
答えはcで,正答率43.6%の問題でした.
この問題は,49.1%もの人が選択肢のaを選んでしまいました.
心不全の治療をForrester分類で覚えていた人には
利尿薬と血管拡張薬で悩んでしまう問題であったでしょう.
実臨床ではクリニカルシナリオ(CS)で治療方針を決定するため,
この問題では血管拡張薬が第一選択で,利尿薬は必要に応じて使用する,
ということになります.
CSについてもチェックしておきましょう.
勉強に忙しい中でも,新しい治療法やガイドラインなどの現在の医療の動向に
目を向けることがとても重要です.
また近年,【109A16】「慢性心不全の治療」や
【108B38】「急性心不全の治療」といった,
その場の臨床状況に応じて治療が変わるといった出題も増えてきており,
覚えるだけでは通用しない問題が多くなっています.
そんな循環器の対策で一番大事なのは,病態を理解した上で,
その場の状況に合わせて治療を考える思考力を鍛えることです.
ぜひ過去問を通して,「このような場合ではどうするべきか」を
自分自身に問い,柔軟に対応できるように準備をしましょう.
そして過去問を解いてわからなかった事項を
QBの解説でしっかり確認.
さらに,周辺知識を『病気がみえる』や
『year note』などで補充すれば,
自信をもって国試本番を迎えられますね!
科目別の出題数については他にも,
「全科目の中で公衆衛生の出題数が最も多い」,
「メジャー科目は循環器の他に呼吸器,神経,消化器の出題が多い」や
「マイナー科目だけでも合計で80問近く出題される」と様々なことがいえます.
「呼吸器,こんなに多く出るのにまだ演習全然進んでないから,しばらく強化期間にしよう」
「覚えること比較的少なそうだし,マイナー科で効率よく点数とろう」
といった,自分自身の分析と学習計画を立てる参考にしてもらえたらと思います.
■今年は肝胆膵・小児科が難しかった(?)
111回で得点率が最も低かったのは小児科でした.
どのような問題が出たのか,早速みていきましょう.
【111B19】
妊娠20週の胎児について正しいのはどれか.
a 網膜が完成する.
b 造血は主に骨髄で行われる.
c 生理的臍帯ヘルニアを認める.
d 肺では肺胞の発達が完成する.
e 心拍出量は右心室からが左心室からよりも多い.
皆さんすぐに答えられますか?
私自身,小児の発達生理はあまり得意ではありません.
やはり妊娠週数とそのときに起こるイベントを正確に暗記することは大変な気がします.
正解はeで,正答率54.3%の問題でした.
ただ,本問は妊娠週数とそのときに起こるイベントを正確に覚えていなくとも,
新生児期の病気,腸回転異常,呼吸窮迫症候群,
未熟児網膜症などと直結しているため,連動させて覚えておけば
解答可能な問題でもあります.
例えば,選択肢のaの網膜が完成する時期を果たして何人の
受験生が覚えていたでしょうか.
しかし,もし妊娠20週で網膜が完成していたら,
未熟児網膜症は起こり得ないことはなんとなくでもわかりますよね.
国試では胎児の発達生理の問題は必ず毎年出題されますし,
覚えることが必須な事項です.
ただし,細かい知識を覚えることに固執せず
優先すべき大事な知識を地道に覚えることを心がけましょう.
次いで正答率が低かったのは肝胆膵でした.
肝胆膵からも1問ご紹介します.
【111B24 】
肝臓の構造について正しいのはどれか.
a 短肝静脈は中肝静脈に流入する.
b 小葉内では動脈と静脈が併走する.
c Cantlie線から左側が外科的左葉である.
d 外側区域の静脈血は右肝静脈に流入する.
e 肝門部では門脈は胆管の腹側に位置する.
解剖の問題です.
解剖については,各科目を勉強する上ではじめに手を付ける項目だと思います.
解剖が頭に入っていないと病態生理も覚えられませんよね.
しかし,本設問の正解はcで,正答率は53.0%でした.
国試直前は基礎(解剖・生理)を疎かにしてしまいがちですが,
早めに勉強する分,忘れやすいポイントでもあります.
本番直前に一度は復習するといいかもしれません.
なお,解剖として出題されやすいポイントに,
手術に関係ある内容や,症状に関係のある内容,
といったことが挙げられます.
これらを意識して勉強してみてください.
今回は「出題分野の割合」から国試を分析しました.いかがだったでしょうか.
出題数や難易度を把握しておくと,勉強の優先順位を決める際に便利だとも思います.
国試の勉強,何をすべきかわからない!という方は,是非参考にしてみてください.
次回は「正答率からみる難問・割れ問」についてお届け予定です.
お楽しみに!
(編集部A.M)