[5年生向け]国試からみる,臨床実習のポイント!(その6)気になった問題を解いてみよう
こんにちは,編集部のA.Mです.
「国試からみる,臨床実習のポイント!」もついに最終回.
今日は私が個人的に気になった問題をみていきたいと思います.
■ 時間軸を意識した問題
第3回でお話しした教科書丸暗記では答えられない問題,
他にもこんなのがありました.
【111E56】
32歳の女性.2回経妊2回経産婦.1年前からの不正性器出血を主訴に来院した.臨床病期1期の子宮頸癌と診断され,3週間後に広汎子宮全摘術とリンパ節郭清術が予定されている.予測出血量は800mLである.血液所見:赤血球380万,Hb 11.4g/dL,Ht 37%,白血球5,200,血小板16万.血液生化学所見:総蛋白6.4g/dL,AST 32U/L,ALT 29U/L.血液型はAB型RhD(-)である.
現時点の対応として誤っているのはどれか.
a 鉄剤投与
b 自己血貯血
c 不規則抗体スクリーニング
d 赤血球液-LRとの交差適合試験
e 血液準備量について院内輸血部門と調整
みなさんはどれが誤っているかわかりますか?
正解はdで,正答率は19.4%でした.
半数以上の受験生がa 56.9%を選びました.
手術中,輸血が必要と考えられる本症例.
では輸血の前に何が必要かと考えると,実は,b~e全て必要となるのです.
ではdのどこが問題なのでしょうか.
考えなければいけないのは「時間軸」.
この問題は「手術が3週間後」に設定されています.
交差適合試験は輸血前3日以内に原則行われます.
3週間前の「現時点」で行うのは誤りであることがわかりますね.
ちなみに本症例はRhD(-)であり,自己血貯血を考慮するため,
aの鉄剤投与は,その後の貧血を想定して行います.
輸血に必要なものを丸暗記!ではなく,
これっていつ必要な検査?といったことを意識して実習に臨みましょう.
■経験していればわかったかも!
次は2日目の必修問題です.
【111F24】
78歳の男性.呼吸困難を主訴に夜間救急外来を受診した.呼吸困難のために病歴は十分に得ることができない.家族の話によると,5年前から自宅近くの診療所で在宅酸素療法が導入されており,1L/分の酸素を吸入している.来院時は,酸素ボンベを持参している.意識は清明.体温36.8℃.脈拍96/分,整.血圧130/80mmHg.呼吸数20/分.体格はやせ型.吸気時に肥大した胸鎖乳突筋が特に目立ち,口すぼめ呼吸をし,喘鳴が著明である.動脈血ガス分析(鼻カニューラ 1L/分 酸素投与下):pH 7.35,PaCO2 55Torr,PaO2 60Torr,HCO3-30mEq/L.
酸素療法による適切な初期対応はどれか.
a リザーバー付マスク 10L/分
b リザーバー付マスク 5L/分
c 鼻カニューラ 5L/分
d 鼻カニューラ 1.5L/分
e 鼻カニューラ 0.5L/分
COPDの急性増悪で低酸素状態です.
CO2ナルコーシスに気を付けつつも,低酸素血症を長引かせないように
適切な対応を行わなければなりません.
正解はd,正答率は44.3%.
bを選んだ人が36.6%いました.
高濃度の酸素は入れちゃダメだとわかっていても,
具体的に何Lが正解なの?そこまで求められた問題でした.
まさに実習で見ていたかどうかが分け目となったと思います.
■鑑別疾患を絞り込むための問診
それでは最後の問題です.
【111F17】
8歳の男児.腹痛を主訴に母親に連れられて来院した.昨日午後の授業中におなかが痛くなり早退した.帰宅したら腹痛は治まり,いつも通り夕食を食べて入眠したが,今朝おなかが痛くて目が覚め,痛みが続くため受診した.
急性虫垂炎を鑑別するために患児に尋ねる有用な質問はどれか.
a 「学校に行くのは楽しいかな」
b 「おなかのどこが痛いのかな」
c 「うんちは1日に何回するの」
d 「昨日の給食は何を食べたの」
e 「おなかを痛がっているお友だちはいるかな」
問題文だけでは心因性または器質性腹痛どちらの可能性も残っています.
器質性腹痛のうち急性虫垂炎を疑った場合に有用な質問はどれか考える問題です.
答えはbですね.
国試では基本的に,問題文中に患者の情報が必要最低限そろっています.
しかし,実臨床ではどうでしょうか.
まずは問診からスタートし,さらに身体診察,検査は何が必要か,
自分で判断していかなければなりません.
【111B50】【111B56】【111I51】なども,
問題文の情報からさらに必要と考えられる問診事項を考える問題となっています.
身体診察や検査を問われる問題はよくありますが,
問診について問われる場合があることも意識してみてくださいね.
病棟実習では患者さんの疾患が判明していることが多いかもしれませんが,
疾患が確定していない患者さんを受けもった場合や,
救急外来見学の際には,自分で鑑別疾患を挙げて何を聞く必要があるのか,
考えることを癖付けられたらいいですね.
「国試からみる,臨床実習のポイント!」,
6回にわたりお送りしてきましたが,みなさんいかがでしたか?
最後までお読みいただき,ありがとうございました.
みなさんの臨床実習が,より充実したものになりますように.
(編集部A.M)