[Dr. Yの研修医日記] 百聞は一見にしかず
早いもので,研修も半年を過ぎました.
今月は救急科と,週1回で麻酔科を回っています.
救急は内科と違い,
「緊急疾患を見逃さない」
「すばやく判断して行動する」
ということが大事な科です.
しかし,国試の文章ではすぐに分かった疾患も,
実際の患者さんを目の当たりにすると
分かるものも分からなくなってしまうものです.・・・私だけ?
【10月×日】
72歳の男性が,朝に血圧を測ったところいつもより低く,
さらに昼頃には60mmHg近くまで低下し脂汗をかいた,
と訴えて,救急外来を受診しました.
来院時は収縮期血圧が120mmHgもあり顔色も普通だったため,
迷走神経反射とかかなあ…,なんて思っていました.
しかし,患者さんが思い出したように
「そういえば,三日前から黒い便が出てたんですよ」と仰られました.
『それが原因だよ!!』と心の中で猛ツッコミです.
もちろん,ここで頭に思い浮かぶのは,
上部消化管出血→貧血→プレショックで血圧低下…というストーリーです.
採血をオーダーしたところ,
13g/dlあったHbが7.2g/dlまで低下していました.
さらに,直腸診ではタール便の付着を確認.
そのまま入院して,
上部消化管内視鏡を行い“出血性胃潰瘍”と診断しました.
低血圧が主訴でも上部消化管出血がある,
という教訓を得られた症例でした.
【10月×日】
51歳の男性が,仕事中に足に力が入らなくなり
椅子から立ち上がれなくなったため,救急外来に搬送されてきました.
到着した時は両上肢,両下肢の力が入りにくく,
時間を追うほどに弱くなっていっていました.
自発呼吸はあったものの,患者さんが「ぼーっとしてきた」と訴え,
このまま呼吸筋までやられてしまうのではないか,と焦る状況です.
なんとか自力で神経学的所見をとってみましたが,
腱反射は正常か低下か自信なし….
脳梗塞の可能性を否定するためにMRIを撮りましたが,
こんな時に限って何も病変はなし.
神経内科の先生に相談したところ,
「麻痺で大切なのは腱反射です.障害部位がわかりますから」
と言って,あっという間に腱反射の所見をとってくれました.
全身の腱反射は正常であり,
「この場合は,精神的なものか周期性四肢麻痺です」
とあっという間に診断!
「若い男性が飲酒したり,疲れた翌朝に全身の力が入らなくなる」
といった国試の文章なら分かったはずなのに!
…と,ちっとも思いつかなかった自分にがっかりしました.
皆さんは,実習の時に面倒くさがらず,
所見をとる練習をしておくことをオススメします!
(研修医 Y)
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