[分析]103回医師国試レポート(その4) 公衆衛生
103回国試レポート,4回目は“公衆衛生”のお話です.
前回に引き続き,
新ガイドラインで追加されたキーワードをご紹介します.
テーマは「地域包括支援センター」!
…なのですが,みなさんはこの言葉,ご存知でしたか?
地域包括支援センターは,
平成17年の介護保険法の改正により創設された施設であり,
“公正・中立的”な立場から,地域における介護予防ケアマネジメントや
総合支援,権利擁護などを担う中核機関です.
カンタンにいうと,地域で暮らす高齢者に対し,
様々な面から支援をするための拠点になる施設,ということ.
(だから,運営主体は市町村)
ここに配置されるのは保健師,社会福祉士,主任ケアマネジャー
の3職種が中心,ということで,そこから連想すれば
どういう事業が行われているかイメージできるはずです.
国試初登場にしてこの言葉が出てきた問題は,なんと3問!
知っているのと知らないのとでは大違いですよね.
でもこの内容,実は『QB公衆衛生』付録の
「よみトク」で紹介されていたのに気がついていましたか?
受験生のSさんいわく,試験会場でも
「こんなセンター知らないよ!」「QBの付録に載ってたジャン!」
なんて会話があったそうで.
いやはや,作った甲斐があったってもんです(^△^)☆
ではでは早速,
問題を解きながら確認していきましょう.( ̄▽ ̄)ゝ
【E43】
75歳の女性.回復期リハビリテーション病院に入院中である.10年前から糖尿病と高血圧症とで診療所に通院していた.1ヵ月前に左片麻痺が出現し脳外科病院に搬送され,脳梗塞の診断で1週間の入院後,転院となった.入院中,状態が安定したため,市役所に介護保険制度に基づく要介護・要支援認定申請が行われ,要支援の認定を受けた.現在の血圧は130/88mmHg.空腹時血糖122mg/dl,HbA1C 5.9%.
退院させるに当たり,担当医として行うべきことはどれか.2つ選べ.
a 介護老人保健施設への入所申請
b 介護老人福祉施設への入所申請
c 地域包括支援センターへの情報提供
d 糖尿病専門外来担当医への紹介状作成
e 通院していた診療所医師への診療情報提供書作成
正解は「e,c」で,正答率は71.8%とやや低め.
eは選べたけれど,
もうひとつのcが選べなかったという人が多いようです.
この女性は「要支援の認定を受けた」ということで,
退院後,介護サービスの利用などを相談する機関として,
地域包括支援センターへの情報提供を行うことは
モチロンOになります.
でも,対象となるのは要支援者だけなのか,
というとそんなことはありません.
次の問題を解いてみましょう.
【F2】
介護保険制度で正しいのはどれか.
a 保険者は都道府県である.
b 被保険者は75歳以上である.
c 要支援者に対して介護給付が行われる.
d 地域包括支援センターは高齢者に対する虐待への対応を行う.
e 地域包括支援センターの活動対象は要介護区分1,2の者である.
正解は「d」で,正答率は59.0%とかな~り低いです.
誤ってcを選んでしまった人が多かったようですね(選択率32.7%).
「要支援者→予防給付」,「要介護者→介護給付」は
超基本事項なので,必ず覚えておきましょう.
そして,地域包括支援センターに関する問いはdとeでした.
まずdですが,センターの事業の1つは「高齢者の権利を守ること」!
具体的には虐待への対応などを行っており,これはOになります.
(★主に社会福祉士の仕事)
またeですが,
センターでは「介護予防ケアマネジメント」事業として,
“要支援者”や,“要支援・要介護になるおそれのある者”には
介護予防ケアプランを作成しています.
(★主に保健師の仕事)
これは“要介護者”は含まれないので気をつけて!
つまり,eは×になります(選択率3.8%).
これらは,『サブノート2009』236ページの
事業内容の表を見れば,両方いっぺんに解けます.
以下にそのまま抜き出してみたので,要チェックです!
*********************************************
■ 地域包括支援センターの事業内容
(1) 共通的支援基盤構築
…地域に総合的なサービスネットワークを構築する
(2) 総合相談支援・権利擁護
…高齢者本人や家族などに対して総合的な相談・支援を行う
…虐待対応など,高齢者の権利擁護のための支援を行う
(3) 包括的・継続的ケアマネジメント支援
…高齢者を対象に,主治医,ケアマネジャー,施設を中心
とした多職種による協働や連携を行う
…ケアマネジャーへの指導・助言を行う
(4) 介護予防ケアマネジメント
…一般高齢者を対象に,介護予防事業マネジメントを行う
*********************************************
では,これらをおさえつつ最後の問題にいってみましょう.
児童虐待の問題ですが,
選択肢のひとつに地域包括支援センターがまぎれこんでいます.
【E19】
被虐待児の対応に関与しないのはどれか.
a 警察
b 保健所
c 児童相談所
d 福祉事務所
e 地域包括支援センター
正解は「e」で,正答率はたったの47.0%!!!
つまり「児童虐待」と「高齢者虐待」のヒッカケということですね.
福祉事務所を選んだ方が多いようですが(選択率26.5%),
児童虐待の通告先=児童相談所か福祉事務所(児童委員を介しても可)
というのは児童虐待の最重要ポイント.
児童虐待の問題は毎年出題されているので,必ずおさえておきましょう.
***
ところで,この地域包括支援センター,
「平成17年に創設された施設」ですが
平成19年4月末時点で,全国に3,831ヵ所も設置されており,
現在もどんどんその数を増やしています.
ペース早すぎ!なんて思いません?
実はこれ,新しい施設がどんどん作られているわけではなく,
在宅介護支援センターからの移行例が大半を占めるんです.
この辺りも『サブノート2009』236ページに詳しいので,
是非カクニンしてみてくださいね!
★“知らない言葉”を残さない
ガイドラインが新しくなった1,2年目の対処法は,
とにかく,自分の“知らない言葉”を作らないことです.
今回も特に「必修」「公衆衛生」の分野で
新しい用語が追加されましたが,
ひとつひとつについて,どこまで覚えなければならないか,
なんて,誰にもわかりません.
でも,なんとなく「これは高齢者に関わる言葉だな~」
くらい知っておくだけで,
正解の候補から外したり,自信はなくても当たったりするんです.
新ガイドラインは厚生労働省のサイトで読めますので
“知らない言葉”を国試前にはなくしておくようにしましょう!
以上,D子でした.(>▽<)
(編集部 D子)
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