[新5年生・新6年生]QBの特徴分析:国試問題集は「科目別」に分冊化がよい?「正答率」で分冊化がよい?
編集部のMです.こんにちは.
今日は,4月に5年生・6年生になる方向けに,記事を書きます.今回は重要ですよ.
さて,『QB』といえば国試対策問題集の定番.
過去10年分と,それ以前でも解いておいてほしい過去問をセレクトし掲載しています.
分冊の仕方は,「循環器」「呼吸器」というように科目別です.
一昨年前の『QB2010』で,1周目でスピーディに国試の全体像をとらえるように「1周目問題」マークを追加.これが大好評となりました.
この『QB』の「1周目問題」システムをはじめた2009年まで,他社から別のシリーズが出ていたのですが,翌年,つまり2010年に,このシリーズがなくなってしまい,正答率で問題を分冊化した新しいシリーズが出ました.
このシリーズは,科目よりも上位の概念で正答率を導入し,正答率別に過去問を「Level I」「Level II」「Level III」の3系統に分冊化しています.
つまり,循環器の場合,全体を制覇するには3冊やる必要があります.
このうちの「Level I」が,『QB』における1周目問題のような位置づけとされているようです.
おおざっぱにいえば,
(1)科目別で分冊化され,その1冊1冊のなかで,「国試のリンカクをつかむ」のに必要な重要問題(1周目問題)だけを解いてそれ以外の問題を飛ばせるようになっているのが『QB』.
(2)正答率で分冊化し,「Level I」で,問題を飛ばさず『QB』の1周目問題に相当するような問題を解ける反面,各科目の全体をみるには3分冊解く必要があるのが「他社の問題集」といえます.
どちらがよいか,というのは極論「好みの問題」ですが,昨年も何回か新5年生の方に相談され,そのたびにメールの返信をするのがちょっと大変だったので,今年はここでお答えします.
結論からいいます.
正答率は重要な要素かもしれませんが,私たちは,循環器,呼吸器,神経といった「科目」よりも上位に行くほどのものだとは考えていません.
〈1〉
循環器なら循環器1冊を,1周目は「1周目問題」だけ解き,問題を飛ばしながらスピード重視で終え,すぐ次の科目へ.
〈2〉
まずは他の内科外科・小児産婦・マイナーなど全科目に目を通すことを優先する.
〈3〉
2周目で1つ1つの科全体を塗りつぶす.
という方法が,「リンカクをつかんだが,まだ制覇していない」→「やった!制覇した」という実感が得られやすく国試対策に向いていると思うからです.
1つの科目が難易度別に分冊化されていると「全体の何割終わった」とか「全部制覇した!」という実感がもちにくいと思うのです.
臨床実習に沿って解いたり,勉強会で使ったりするときも,科目別分冊の方が便利と考えます.
そしてもう一つ大きな理由があります.
それはプール問題や過去問との類題がかなり出題される国試において,正答率が低い問題が,今後も正答率が低い=「合否を分けない問題」ということにならないからです.
実例をみてみましょう.
2007年の101回国試で出題された問題です.
101B109
正常組織で放射線感受性が最も高いのはどれか.
a 下咽頭 b 食道 c 胃
d 小腸 e 直腸
このとき,この問題の正答率は28.3% でした.(正解はdです)
国試は「プール問題」といって過去に出題された問題と同じ問題が毎年一定量出るのですが,過去に一度出題された問題は,正答率が跳ね上がります.
101B109の場合,3年後の2010年,104回国試(昨年の国試)に再び出題されました.
104E11
正常組織で放射線感受性が最も高いのはどれか.
a 下咽頭 b 食道 c 胃
d 小腸 e 直腸
まったく同じ問題ですね.さて,正答率はどれだけだったでしょう….
なんと83.8%!! なんと55.5ポイントもアップしているのです!
合格率が90%前後の医師国試において,この問題は絶対落としたくない「合否を分ける」問題に変わっていました.
つまり,101B109のように低正答率の問題は,正答率で分冊化する問題集の場合,「Level III」(超難解問題)や「Level II」(難解問題)のように,購入する人と購入しない人が分かれそうな巻に分類される可能性が高いですよね.
QBの場合,科目別で分類されるので,「1周目問題」として掲載されるかどうかは問題の内容や出題年にもよりますが,基本的にはその科1冊(この問題の場合,放射線科)をきちんと演習すれば1回解いています.
(もちろん他社の問題集も全巻買って解いていれば問題はないですよ)
さらにもうひとつ.
国試では,「問われた知識は基本的だけど問題の作り方が下手で正答率が低い」っていう問題もよくあります.
そういう問題は,2~3年後に欠点が改善され再び出題されることがあります.
こういう問題をメディックメディアでは「リベンジ問題」と呼んでいます.
この手の問題も,当たり前ですが,初回の出題は正答率は低く,リベンジ問題として出題されたあとは正答率が高くなります.
最新105回の問題でみてみましょう.
103回国試の必修問題F27は正答率25.4%.
必修としては難易度が高すぎるという判断で,正解した人は採点され間違った人は採点されない “必修除外”となりました.
この問題が改善されて,今年は105G52として出題されたのですが,今回の正答率は70.7%(最終集計ではありません).
やはり急激に上がっています.
つまり,国試勉強において,正答率は絶対的な指標にはならないのです.
ちなみに『QB』では,過去5年の問題は難易度や正答率にかかわらず,悪問・奇問でなければ「1周目問題」としています.
「プール問題」「リベンジ問題」ともに,過去5年以内に再出題される可能性が高いからです.
例えば104回国試では,プール問題14問のうち11問が過去5回の国試からの再出題でした(105回は未集計です).
これまで挙げてきた理由や国試の出題傾向から,私たちは,正答率に必要以上の重要性を見いだせません.正答率で分冊することがいいように思えないのです.
ただ,これはあくまで私たちの考え方にすぎません.別の考え方もあると思います.
実際に書店で手にとって自分に合うと思った方を選べばいいのではないでしょうか.
最後に,もう一つ『QB』の特徴をお伝えしますね.
104回国試後の国試受験生アンケート(有効回答:3,498人)では
「QBだけ」を使用した人が82.3%,「QBと他社の問題集の両方」を使用した人を含めると,93.7%の人が「QB」を使用しているという状況でした.
http://web-informa.com/benkyo/qb/20100322/
この「トップシェア」が『QB』の最大の武器だと思います.
平均合格率90%前後の医師国試の場合,高い順位を目指すことに意味はなく,10人中の1人にいかにならないようにするかということが重要.
つまり「多数派に沿う」勉強法が一番ディフェンス力が高いのです.
そういう意味では『QB』には『QB』ならではのメリットがあります.
ちなみに最新の『QB2012』シリーズは3月3日から続々刊行されます.
『QB2012』では「QBオンライン」導入.問題のシャッフルや問題検索など好みに応じた解答が可能となります.
1周目問題→メシュラン→QBオンラインと毎年パワーアップしています.
「多数派に沿う」という文脈で,他の本にも簡単に触れておきます.
『イヤーノート』(YN)はご存じの通りシェア率はほぼ100%です.
また,ここ3年くらい『病気がみえる』が急激に伸びてきています.
3月に神経が,2011年中には「腎・泌尿器」が出る予定ですので,さらに伸びると思います.
これからの国試対策のスタンダードは,
「QB」+「YN」+「病みえ」
という感じになるのではないでしょうか.
マイナー対策は,「QB」+「レビューブック・マイナー」ですね.
『YN』や『病みえ』の参照ページが充実しているだけでなく,『YN』や『病みえ』から多数の図版を転載しているのも,『QB』の特徴の1つです.
これまでの『QB』の良さはそのままに,進化し続ける『QB』.どうぞご期待下さい.
それでは,今日はここまでにしますね.
最後に繰り返しになりますが,3月3日は『病気がみえる vol.7 脳・神経』も発売です.
今仕事で105回の神経の問題をみていますが,国試対策にも十分活躍できると実感.
「重症筋無力症クリーゼで直ちに行うべき治療は?」など結構的中してます.
後日詳細に分析したいと思いました.
こちらもどうぞよろしくお願い申し上げます.
(編集部 M)