[3~6年生向け]医師国試 新ガイドライン発表! 第4回:新ワード紹介(その1)
こんにちは,編集部Aです.
4年ぶりに改訂された「医師国家試験出題基準」について
紹介する企画をお送りしています.
【前回までの記事はこちら↓】
■新ガイドライン,何が変わったの??
http://web-informa.com/benkyo/20120522-2/
■新しく加わった内容は??
http://web-informa.com/benkyo/20120607/
さて今日からは,
新ガイドラインに新たに加わった用語をいくつかピックアップして
1つずつご紹介していきます.
勉強の息抜きに,読んでみてくださいね.
今日は初回特大号(?)なので,2つ紹介します!
◆心腎相関(心腎連関)
『医学各論』の『Ⅷ 腎・泌尿器・生殖器疾患』に,
「慢性腎臓病(CKD)」の関連事項として登場しました.
心血管疾患と腎臓疾患,特に慢性腎臓病(CKD)が
互いに影響しながら悪循環に陥る,という概念です.
心血管疾患,CKDはいずれも患者数が増加し,
メタボリックシンドロームなどの共通のリスクファクターを持つことから,
予防医学の面からも重要な概念です.
心臓と腎臓の悪循環を仲介する因子は
レニン‐アンジオテンシン系(RAS).
心機能が悪くなり腎血流が低下すると,腎臓ではRASが賦活化され,
血中のアンジオテンシンⅡ(AⅡ)が増加します.
AⅡは,心筋肥大,線維化,動脈硬化を進め,
心機能のさらなる悪化につながります.
一方,腎血管にはもともと高い血圧がかかっていますが,
さらにメタボリックシンドロームのような要因が重なると
腎血管の硬化が進み,蛋白再吸収能が低下してアルブミン尿となり,
糸球体血流量の低下からRASが賦活化されます.
つまり,どちらが先に悪くても,同じ病態を形成してしまうことになります.
この病態からもわかるように,治療の中心はRASを抑制するための
ACE阻害薬,アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)になります.
しかし心腎相関という概念を理解し,悪循環に陥る前に生活習慣を改める,
適切な血圧管理を行う,などの予防に努めることが重要でしょう.
◆ヘプシジン ~鉄代謝の負の調節因子~
『医学総論』の『Ⅲ 人体の正常構造と機能』に,
「鉄・造血ビタミンの代謝」の関連事項として登場しました.
体内に異常に鉄が蓄積する,ヘモクロマトーシスという病気があるのは
皆さんご存知ですよね?
遺伝や血液疾患,継続的な輸血などが原因となり,
全身臓器の機能低下を引き起こす大変な病気です.
最近になって,遺伝性ヘモクロマトーシスの研究から,
鉄代謝制御にかかわる重要な因子が明らかになってきました.
そのひとつがヘプシジンで,肝臓で産生されるペプチドホルモンです.
鉄代謝の負の調節因子で,腸管からの鉄の吸収を抑え,
マクロファージなどの細胞内に鉄を貯留,つまり血清鉄を下げる方向に働きます.
そのためヘプシジンの遺伝子に変異が起こって働きが弱まると血清鉄が過剰になり,
心臓や肝臓などの臓器に鉄が沈着し,臓器障害をきたします.
一方,慢性炎症では貧血になりましたよね.
実はここにもヘプシジンが関わっていました.
ヘプシジンは炎症性サイトカインや,細菌などの病原体により誘導され
増加するのです.
さらに種々の癌では,ヘプシジンの過剰発現があり,
癌細胞内の貯蔵鉄が増えることで増殖能が上がるともいわれています.
発がんや転移に関わっているかもしれないのです.
新たな発見により,貧血,ヘモクロマトーシスなどの鉄代謝異常症だけではなく,
炎症,発がん,がん転移などとの関連も明らかになりつつあり,注目されています.
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いかがでしたか?ご感想お待ちしています.
それでは,また次回!
(編集A)