[コラム]医師法20条:紛らわしい24時間問題とは?

編集部のKです.今日は小ネタをひとつ.

厚生労働省は,『医師法』20条の診断書の交付について,
誤った解釈がなされているとの指摘を受け,
8月31日付で,「適切な運用について」の解釈通知を出しました.
キャリアブレイン ニュース

『医師法』20条に関する通知は,約60年ぶりということです.

そもそもこの『医師法』20条,何が問題となっていたのでしょうか?
もとの条文を読んでみましょう.

【第二十条】
医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、
自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、
又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。
但し、診療中の患者が受診後二十四時間以内に死亡した場合に交付する
死亡診断書については、この限りでない。

『医師法』の勉強をすると必ず出てくるこの文章.
でも,最後の「この限りではない」という部分,どう解釈すればよいのでしょうか.

「24時間以内なら死亡診断書を交付してよいということは,
逆に24時間以後は死亡診断書ではなく死体検案書を交付するということか…」

と考えがちですが,実はそうではありません.
「サブノート」の37ページにそって説明していきますね.

まず,受診後24時間以内に診療中の疾患で死亡した場合は,
異状がない限り,改めて死後診察しなくても死亡診断書を交付できます.

しかしこれは,24時間を超える場合には死体検案書を交付しなければならない,
とする趣旨ではありません.

受診後24時間を超えても,診療に係る傷病で死亡したことが予期できる場合であれば,
まず診察を行い,その上で生前に診療していた傷病が死因と判定できれば,
死亡診断書を交付できるのです.

「まず診察を行い」…つまり死後診察を行う,ということです.
異状死でないかどうかを確認するため,基本的には診察してほしいのだけれど,
自分が診ている最中に患者さんが亡くなったとき,わざわざ診察は必要ないですよね.
その線引として,24時間というラインが設けられたわけです.

この経緯がわかりにくく,また60年前に出された但書(通知)もわかりにくかったため,
長らく「24時間超えたら死体検案書か」という誤解が多く生じていました.

しかし,なぜまた今になって問題となっているかというと,
在宅での看取りの場面が増加していることが関係しているようです.

在宅で療養していて,医師の往診は週に数回.
患者さんが臨終を迎えたときに,24時間以内に診察してなかった.あり得ますよね.

そんなときに「死亡診断書を書くことはできない」と誤って解釈したり,
はたまた『医師法』21条と混同して「異状死体の届出を警察に届け出なければならない」
と誤解したりするパターンがあったそうです.

そうした誤解をなくすために,今回の通知が出されることになりました.
もちろん,何らかの異状を認めたり,事件性が考えられる場合は,
21条に則って,経過した時間に関係なく警察に届け出なければなりませんが,
そうでなければ「死亡診断書を交付」でよいわけです.

最後に関連問題をひとつ紹介します.101回にこの問題を取り扱った出題がありました.

101E9
78歳の女性.肺癌と診断され,肺内転移と骨転移が認められた.家で穏やかに過ごしたいという本人の希望により,在宅医療が行われていた.診療所医師として週3回の訪問診療を行い,今朝もその準備をしていたところ家族から電話があった.午前2時ころに息を引き取ったとのことであった.
訪問して死亡を確認後,手続きとして次に求められるのはどれか.

a 24時間以内に管轄保健所に届け出る.
b 24時間以内に所轄警察署に届け出る.
c 警察の立会いのもとで検視を行う.
d 遺族に司法解剖の承諾を得る.
e 死亡診断書を発行する.

解説は「QB公衆衛生」を読んでください.

きょうはこのへんで!

(編集部 K)

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