[分析]データでみる107回国試(その2)国試の鬼門!「必修問題」はどうだった?

みなさんこんにちは!編集部のS藤です.

前回の,データでみる国試(その1)では,
国試の合格率・合格基準と,問題の出題形式についてお伝えしました↓
http://web-informa.com/kokushi/data/20130329-2/

続いては,国試の出題内容についてより深く迫りたいと思います.

もうご存知の方も多いと思いますが,
国家試験は,必修問題,(必修以外の)一般問題,(必修以外の)臨床問題
の3つに分けて採点され,
3つの問題の合格基準を全て上回った場合,合格となります.

この中で今回は『必修問題』について,
どのような問題なのか,
また,107回ではどんな問題が出題されたのかを,お伝えしていきます.

◆107回必修問題基本データ,難易度◆

必修問題は,一般形式50問,臨床形式が50問(うち2連問×9)で,
合計200点,合格基準は絶対基準で80.0%です.
107回では,必修除外の扱い(不正解の場合,採点対象とされない問題)となった問題はありませんでした.

いくつか,やや専門的な問題も出題されましたが,
全体的な難易度に大きな変化はありませんでした.

必修問題であるC(初日),F(二日目),H(最終日)のうち
初日のCが最も難しかったため,
初日から精神的ダメージを負ってしまった先輩も多かったようです.

メック&メディックメディアの国試採点サービス「TAKE OFF」
http://web-informa.com/kokushi/107/20130319-4/
にご参加いただいた6,500人のデータによると,
今回の必修問題100問中の正答率の分布は以下の通りです.
107必修問題_正答率分布
正答率90%以上は,誰でも反射的に解けるレベル
70~80%は,国試受験生であればだいたいの人が知っているレベル
70%未満は,「これ必修なの?」とざわつくレベルで,必修としては難問です.

正答率80%以上の問題は必ず解けなくてはいけない問題
と意識しながら過去問を解いてみてくださいね.

◆必修問題は国試の鬼門◆

平成25年度版医師国家試験出題基準(ガイドライン)には,
「必修の基本的事項」では,医師としての基本的姿勢を含めた基本的診療能力を主題として出題する.
と書かれています.

要は,診療科にかかわらず必要とされる「医師としての常識」を問う問題です.
簡単そうですね.
実際,一般問題,臨床問題に比べると問題の難易度は全体に低いことは間違いありません.

しかし,例年国家試験の不合格の主要な原因として,
“必修落ち”があり,国試の鬼門として恐れられています.
なぜでしょうか.

主に,次の3つの理由が考えられます.

1.合格基準は絶対基準で8割
2.『臨床医の常識』は勉強しづらい
3.独特の出題傾向や緊張感

この3つについて,実例をお見せしながら,対策を考えていこうと思います.

◆合格基準は絶対基準で8割◆

必修以外の一般問題や臨床問題の合格基準は相対基準であり,
問題の難易度が高ければ下がりますが,
必修問題では問題の難易度にかかわらず,合格基準は80%で変わりません

極端に難しい場合には,必修除外の扱い(不正解の場合,採点対象とされない問題)
により,救済が行われることもありますが,
必修除外の扱いとなる問題は,ここ2年は出ていません.

200点満点なので,許される失点はマイナス40点までです.
配点は,必修一般が1問1点,必修臨床が1問3点です.
特に必修連問を間違ってしまうと,一気に6点のマイナスになります.

1問1問を大切に,油断しないで解く必要があります.

◆『臨床医の常識』は座学で勉強しづらい◆

次の2問を見て下さい.

107C15
適切に管理され感染徴候のない中心静脈カテーテルの入れ替え時期について正しいのはどれか.
a 48時間ごと
b 96時間ごと
c 1週間ごと
d 2週間ごと
e 定期的な入れ替えは不要

【解説】
正解はe「定期的な入れ替えは不要」で,正答率は45.5%でした.
中心静脈カテーテルを留置している患者さんを受け持ったことがあり,
なおかつ管理についての視点を持って実習をしていた学生さんでなければ,
解答は難しかったと思います.

今までは「発熱+カテーテル刺入部に発赤→すぐに抜去」という,
異常時の対応はよく問われていましたが,
そもそも基本的な管理について問われるとは,やられました.
※必修ではありませんが,同様の問題として「メチシリン感受性黄色ブドウ球菌」への抗菌薬選択も出題されました.
MRSA→バンコマイシンは知っているのに,こちらは答えられない人が多かったです.基本は大事ですね.

107F10

凍結切片による迅速診断時の組織の取扱いで適切なのはどれか.
a アルコール固定液につける.
b ホルマリン固定液につける.
c ドライヤーでよく乾燥させる.
d 生理食塩液で湿らせたガーゼで包む.
e グルタールアルデヒド固定液につける.

【解説】
正解はd「生理食塩液で湿らせたガーゼで包む.」で,正答率は54.7%でした.
輸送の様子や標本作製を見たことがあれば,一発でわかる問題ですが,
学生実習では必ず見られるとは限らないですよね.
研修医になれば,手術室から検体を病理検査室まで運ぶことも多いので,
常識なのでしょうが・・・

2問とも,確かに臨床医の常識ではあるのですが,
正解率はご覧の通り低く,多くの受験生にとって難しい問題でした.

各科にまたがるような基本的な手技,管理などの問題は,
実習が終わってから座学で勉強するのはとても難しいです.

臨床実習中には,国試でどのようなことが問われうるかも意識しながら,
異常事態への対応だけではなく,
病棟でルーチンに行われていることにも,目を光らせておく必要があります.

◆独特の出題傾向や緊張感◆

必修問題では,特に緊張度が高いため,
いつもはしないようなミスをしてしまうことがよくあります.
(私は105回国試の受験者でしたが,国試受験の時,「これは明らかに間違いだろ!」と真っ先に除外した選択肢を解答用紙にマークしているところがありました・・・)

また,設問が何を問いたいのかイマイチわかりにくかったり,
選択肢の表現が曖昧であることも多く,
本当は簡単な問題であるのに「深読み病」に陥って,間違ってしまうことがあります.

また,いくつか正解になりうる選択肢の中から,
優先度の最も高い「ベスト1」を選ぶような問題もよく出されますが,
動揺していると,深読みしてベスト2やベスト3を選んでしまうことがあります.

ある先輩の失敗談を教えてもらったので,見てみましょう.

107C8
腹部触診で呼吸に応じて移動する腫瘤はどれか.
a 膵嚢胞
b 胆嚢癌
c 腹部大動脈瘤
d 腹膜偽粘液腫
e Krukenberg腫瘍

【解説】
正解はb「胆嚢癌」で,正答率は71.7%でした.

Murphy徴候を思い出せば,腫大した胆嚢は呼吸性に移動することが容易に思い出せますが,
深読み病になると,
「いや待てよ,進行癌になれば,周囲と癒着して可動性が不良になるのでは」
→例外的なことを考え始める.
「癌で可動性不良は国試のテッパン,これは引っ掛けに違いない」
→考えついた不安要素にとらわれる
「ところで,腹膜偽粘液腫ってなんだっけ?よく知らないけど,bが間違いだと考えると,これが答えかもしれない!」

みなさんこのように考えたかはわかりませんが,
実際,dの「腹膜偽粘液腫」を選んだ人が16.2%もいました・・・

緊張によるミスや深読み病を防ぐためには,
必修問題をまとめて演習して,問題慣れをすることが必要です.

問題演習を数多くこなすことにより,
・必修問題では,医療者としてどのような考え方が求められているのか
・どういう答えが正解であることが多いのか
・出題者の意図は何か
のパターンがつかめてきます.

また,
・正解となりそうな選択肢が複数ある場合でも,動揺せずベターな選択肢を選ぶ
・深読みせず,直感を重視してサクサク解く
という,必修問題を解く上で独特な技術が身についてきます.

ざっくり言ってしまうと,
“必修の空気”を読めるか,が攻略のポイントです.
空気が読めるようになるまで,練習して下さい!

以上,少し長くなってしまいましたが,
『必修問題』についてお伝えしました.

次回も,お楽しみに☆

(編集部S)

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