[分析]データでみる107回国試(その6)研修医として即戦力になれるか?!

みなさんこんにちは!S藤です.
「データでみる107回国試」ついに最終回です.

今回は,6年生の皆さんだけではなく,
5年生までの皆さんにもぜひぜひ!読んでいただきたい内容です.
「国試はまだまだ先だから…」と思わずに,読んでみてくださいね☆
◆「医学総論」に要注意◆

前回のメルマガで,
医学総論」の出題に注意して下さい,
とお伝えしました.

106-107mondaisu
「注意しろって,具体的に何をすればいいの?」
「そもそも「医学総論」ってなに?」

そんな疑問にお応えできるように,
今回のメルマガでは,「医学総論」を分析していこうと思います.

医師国家試験出題基準(ガイドライン)によると,
「医学総論」として出題されるのは,以下の9項目です.
1.保健医療論
2.予防と健康管理・増進
3.人体の正常構造と機能
4.生殖,発生,成長・発達,加齢
5.病因,病態生理
6.症候
7.診察
8.検査
9.治療

診療科ごと(臓器別)に,疾患についての知識を問われる医学各論に対し,
どの診療科であっても,共通して必要となるような知識や,
各論を理解する上で必要な,基礎知識が問われることが特徴です.

今日はこの中から,特徴的ないくつかの項目について説明していこうと思います.
◆「即戦力となれるか」が問われる!◆

2月に国家試験を受け,合格すると,
4月からは,もう研修医として働き始めることになります.

多くの病院では,通常業務だけでも多忙を極めていますので,
右も左もわからない研修医より,即戦力になる研修医が欲しい!
と切実に願っています.

そこで,国家試験では臨床実習をより重視し,
研修医の最も基本的な業務については,
学生のうちに理解しておくことを求めているんですね.

実際,どんな問題が出ているのでしょうか.見てみましょう.
★進化した輸液問題★

107B28
5%ブドウ糖液の輸液が適応となる病態はどれか.
a 尿崩症
b 低張性脱水
c 等張性脱水
d 急性副腎不全
e ADH分泌不適合症候群〈SIADH〉

【解説】
正解は『a 尿崩症』で,正答率は27.7%でした.
尿崩症では高浸透圧性脱水となり,細胞内液が減少しますが,
5%ブドウ糖液は,ほぼ自由水の補給と考えて良いので,
細胞内液の補充を目的に使用されます.

輸液は,初期研修医になったらすぐに,
毎日のルーチンワークとして指示をしなければいけないものです.
そのため,初期対応としての輸液を選ばせる問題は,
去年までの国試でもよく狙われていました.

しかし,去年までの国試では,
「脱水やショック→治療は何か?→輸液を選択」
という程度の問題が多く,
多くは「輸液をするということがわかる」というレベル,
詳しく聞かれたとしても「たいてい乳酸リンゲルか生理食塩水を選べば当たる」,
というような問題がほとんどでした.

本問では,輸液製剤の組成とその意義を理解していることが求められています.
107回では他にも,アナフィラキシーショックの症例に対し,
輸液製剤の名称ではなく組成の呈示から選ばせる問題が出題されています.
ちゃんと「意味がわかって」輸液を指示することができなくてはいけないのですね.
★食事箋の出し方わかりますか?★

107G28
病院食のうち固形成分が最も少ないのはどれか.
a 重湯
b 五分粥
c 三分粥
d 全粥
e 七分粥

【解説】
正解は『a 重湯』で,正答率は95.1%でした.
難しくはないですが,「え,そんなこと聞かれるんだ?!」
とびっくりした人も多いと思います.

食事箋の処方も,研修医になったらすぐに必要になることです.
だいたいどんな内容を選択する必要があるのか,
どういう人が特別な食事の変更が必要なのか,
ぜひ,臨床実習中に勉強してみて下さいね.

 

以上2問のような内容は,実際に実習で経験している時じゃないと,
何が大事なのか,また最低限必要な知識は何か,がわからないため,
実習終了後に座学で学ぶことは難しいし,効率も悪いです.
実習で積極的に見て,その時に勉強しておくことが絶対にオススメです.

他に即戦力を問う問題としては,
診察や採血・静脈路の確保・導尿などの手技についても毎年多くの出題があります.
こちらについては,
『診察と手技がみえる vol.1』
『診察と手技がみえる vol.2』 がとても役に立ちます.
国試対策本というイメージはあまりないかもしれませんが,
国試前に一読しておくことをオススメします.
◆「社会人としての常識」も問われる◆

医療現場かどうか,という以前に,
社会人としての常識を問われるような問題も出題されています.

107F4
医師の振舞いとして適切でないのはどれか.
a 院内PHSで話すときは,周囲に十分配慮して話す.
b 面談室で患者に病状説明した後は,患者より後に退室する.
c 患者と話をするときは,できるだけ目線の高さを同じにする.
d エレベーターを使用するときは,緊急時以外は患者を優先する.
e 上司が外出中であることを患者に伝える場合は「◯◯先生は外出しておられます」と言う.

【解説】
正解(適切でないの)は『e 上司が外出中であることを患者に伝える場合は「◯◯先生は外出しておられます」と言う.』で,正答率は90.6%でした.
外部の人と話す時には,身内の人間に対して敬語を使わない,
という社会人としての常識が問われた問題でした.
実際のところは,選択肢eのように言っている人をよく見ますが,
「失礼だ!」と思っている(けど言えない)患者さんもいると思うので、
気をつけたいですね.
◆「リスクファクター」や「加齢」も重要!◆

ガイドラインには本当に数多くの出題項目が掲載されていますが,
頻出する事項というのは,世の中で重要視されていそうなことです.

予防医学もその1つで,
世の中では特定健診や,定期健康診断における有所見率の改善に向けての取り組みなどが行われています.
国家試験では「リスクファクター」や「患者への生活指導」の出題が目立ち,
107回では,なんと6問も「リスクファクター」を問う問題が出題されました.

もう一つ,「データでみる107回国試 その3(臨床問題)」でも触れましたが,
高齢者・加齢」は超重要テーマです.
総論的事項としては,「加齢による心身の変化」が毎年問われています.

このように,国試は世の中のニーズによっても影響されているので,
普段からそういった視点を持って勉強したり,
新聞やインターネットで医学ニュースを読む習慣があるとよいかもしれません.
以上,医学総論について,お伝えしてきましたが,いかがですか?
医学総論は,4,5年生で臨床実習をしている間から意識しておくことで,
着実に力がついていくような内容が多いです.

実習中のみなさん,ぜひ明日からは,
国家試験のことも少しだけ意識して,勉強してみてくださいね!

 

 

これで「データでみる107回国試」シリーズはおしまいです.
最後までお読みいただき,ありがとうございました!

(編集部S)

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