[5・6年生向け]ガイドラインからみる107回国試
第2回:ズバリ出題された『新ワード』はこれ!(その2)
こんにちは,編集Aです.
107回国家試験と,平成25年医師国家試験出題基準(ガイドライン)について
お送りしているシリーズの2回目です.
前回は,新ガイドラインに追加された疾患である
視神経脊髄炎(NMO)と副鼻腔真菌症が,
早速107回で登場したことをご紹介しました.
今日は,その続きです.
ガイドラインに新しく加わった用語の中から,
実際に107回国試に出題されたものを紹介していきます.
3.医師憲章
医師憲章については,メディックメディア発行の無料情報誌『INFORMA』2012夏号(44号)
で注目していました.
(画像をクリックすると拡大します)
まさに今回,基本3原則とプロフェッショナルとしての10の責務について問われました.
その問題がこちらです.
107C1
医師憲章による医師の責務に含まれないのはどれか.
a 利己主義
b 医療の質の向上
c 医療へのアクセス向上
d 患者との適切な関係の維持
e 有限な医療資源の適正配置
正解:a(正答率:99.3%)
医師憲章については『サブノート2013』3ページに掲載していますので,
必ず内容をおさえておきましょう!!
4.ヘプシジン
ヘプシジンについては,『INFORMA』2012夏号(44号)だけでなく
このWEB INFORMAでも紹介.メルマガでも配信しました.
(画像をクリックすると拡大します)
106回に引き続き,今回も間違い選択肢の中に登場しました.
107G34
体内の鉄動態について正しいのはどれか.2つ選べ.
a 鉄は2価イオンの形で吸収される.
b ヘプシジンは鉄の吸収を促進する.
c 腸管からの鉄吸収率は50%を超える.
d Hb 15g/dlの血液10mlには10mgの鉄が含まれる.
e 血清鉄はトランスフェリンと結合して細胞に輸送される.
正解:a,e(正答率:80.4%)
鉄代謝についての基本事項をおさえておけば解ける問題ですが,
ヘプシジンに関する間違い選択肢bを選んでしまった人も1割近くいました(9.8%).
ヘプシジンは,鉄代謝の負の調節因子でしたね.
ヘモクロマトーシスなどの鉄代謝異常に関わる重要な因子です.
ヘプシジンの遺伝子に変異が起こって働きが弱まると,
血清鉄が過剰になり,心臓や肝臓などの臓器に鉄が沈着して
臓器障害をきたします.
鉄代謝研究の発展に伴って、この領域は今後も要注目です.
今一度知識を確認しておきましょう.
*参考記事:https://informa.medilink-study.com/web-informa/post4490.html/
*『イヤーノート2014』D-144
5.災害派遣医療チーム(DMAT)
こちらも『INFORMA』2012夏号(44号)で紹介しました!
(画像をクリックすると拡大します)
正答ではありませんが,DMATという用語が初めて国試に登場しました.
107B5
災害医療について正しいのはどれか.
a 災害拠点病院は市町村が指定する.
b トリアージは医師でなくても行うことができる.
c 災害現場では医師は救急救命士の指揮下に入る.
d 防災体制を整備する地域的単位を二次医療圏と呼ぶ.
e 災害医療とは災害派遣医療チーム〈DMAT〉の医療活動のことである.
正解:b(正答率:95.3%)
震災後の昨今の社会的ニーズに沿う内容といえますね.
『社会的に要請の高い分野を含めた幅広い領域』からの出題を優先させることは
ガイドラインの冒頭にも明記されています.
今後も災害や救急医療に関する問題は出題されると考えられます.
6.GPA:granulomatosis with polyangiitis
これはWegener肉芽腫症の新名称です.
WEB INFORMAでも何度かご紹介しているので,もうおなじみでしょうか.
https://informa.medilink-study.com/web-informa/post4706.html/
直接解答に影響するわけではありませんが,
今年の国試から,早速この「GPA」が併記されました.
107I38
疾患と自己抗体の組合せで正しいのはどれか.2つ選べ.
a 多発性筋炎・・・・・・抗ミトコンドリア抗体
b 関節リウマチ・・・・・・抗Sm抗体
c 混合性結合組織病・・・・・・抗RNP抗体
d 全身性エリテマトーデス〈SLE〉・・・・・・抗Scl-70抗体
e Wegener肉芽腫症〈granulomatosis with polyangiitis〉・・・・・・抗好中球細胞質抗体〈ANCA〉
正解:c,e(正答率:98.7%)
学会ではすでに「Wegener肉芽腫症」という言葉は使わず
『GPA』が一般的になっているそうです.
ちなみに和名は「多発血管炎性肉芽腫症」ですが,
この和名までは国試ガイドラインには書いていません.
ただし和名が登場しても驚かないように,
疾患名が変わったことは知っておきたいですね.
最新情報を知っておく必要性は,これだけではありません.
HbA1cについても,今回の国試で変化がありました.
計測規格が2012年に臨床現場でも『NGSP値』に移行されたのを受けて,
今回の国試では,HbA1cはNGSP値で表記されるようになりました
(107D47,F23,I69など).
こうした動向が早速反映された今回の国試.
日頃から,疾患概念などの知識をアップデートしておくことが重要です.
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この他,
●t-PA(107I35で出題)
●民法(107G2で出題)
●栄養サポートチーム(NST)(107B27で出題)
●GPIアンカー蛋白(107D17で出題)
などが,107回試験に登場しました.
やはり過去に間違い選択肢として
ひっそり登場していた言葉もありますが,
いずれも出題テーマとなったのは今回が初めてです.
これらに関する知識は,今後さらに進化して出題される可能性があるので,
知識をしっかり確認しておいてくださいね.
ここまで,具体的な言葉をピックアップしてご紹介しました.
次回は,もう少し広い目でとらえて,
新ガイドラインが107回国試でどう活きているのかを
もう少し掘り下げてみていきたいと思います.
お楽しみに!
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実際のガイドラインは厚生労働省のサイトをご覧ください.
PDFで公開されています.
http://www.mhlw.go.jp/topics/2012/05/tp0510-01.html
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(編集部A)