[5・6年生]医療ニュースから予想する国試第5回:不妊・不妊治療
みなさん,こんにちは.編集部のT.Kです.
「医療ニュースから予想する国試」シリーズも第5回目となりました.
第1回から第4回までの記事はコチラ!
108回国試に向けて知っておいて欲しい情報が載っていますので,
読んでない人はぜひチェックするようにしてください!
第1回:今年注目の医療ニュースは?
http://web-informa.com/kokushi/20130607-2/
第2回:風疹・先天性風疹症候群
http://web-informa.com/kokushi/20130618-3/
第3回:結核
http://web-informa.com/kokushi/20130621-3/
第4回:ダニと感染症
http://web-informa.com/kokushi/20130626-3/
さて,今回のテーマは“不妊・不妊治療”.
テレビでも知名人の不妊治療や高齢出産がしばしば報道されていますね.
近年,不妊症の頻度は増加しており,
その背景には,晩婚化,挙児希望女性の高齢化が挙げられています.
実際の統計によると1975年では平均初婚年齢が24.7歳,初回妊娠年齢が24.0歳でしたが,
2010年では平均初婚年齢が28.8歳,初回妊娠年齢が29.9歳となっており,
晩婚化と初産年齢の上昇がはっきりとわかります.
この傾向が今後どのように変化していくかはまだわかりませんが,
これからもますます目が離せないトピックスといえるのではないでしょうか.
本メルマガでは“不妊・不妊治療”に関して,
近年の国試でどのような知識が問われていたかをみていきたいと思います.
では,ひとまず最新国試である107回の問題をみてみましょう.
107A10
わが国の不妊症の現状について正しいものはどれか.
a 出生500人に約1人が体外受精児である.
b 女性不妊の頻度は男性不妊の約5倍である.
c 40歳代女性の不妊症の頻度は約10%である.
d 同年齢層では体外受精の流産率は自然妊娠よりも高い.
e 女性の加齢とともに体外受精による妊娠率は低下する.
1つ1つの選択肢を確実に覚えている医学生さんも少ないのではないでしょうか.
一般的に,女性の年齢とともに卵子の質が低下し,妊娠率は低下します.
体外受精の場合も同様で,加齢とともに成功率は下がるので,
正解は「e 女性の加齢とともに体外受精による妊娠率は低下する」となります.
その他の選択肢について補足を加えておくと,
a⇒出生約40人に1人が体外受精・胚移植による児ですので500人に1人は誤り.
b⇒以前は女性不妊のほうが高率と考えられていましたが,現在は不妊因子を持つ割合は男女でほぼ同等とされています.
c⇒40歳前半で挙児を希望するに至った女性における不妊症の頻度は64%とされています.
d⇒年齢が同じであれば自然妊娠と体外受精妊娠の流産率には差がないと考えられています.
具体的な数字を知っていなくても,eを選べた学生が多かったと思われますが,
正解率は62.2%とやや難しかった問題と言えるでしょう.
次に106回の問題をみてみましょう.
106G37
体外受精・胚移植の適当となるのはどれか.2つ選べ.
a 不育症
b 乏精子症
c 子宮筋腫
d 黄体機能不全
e 両側卵管閉塞
体外受精,胚移植の適応の問題です.
両側卵管の器質的障害(他の手段による治療効果が望めないもの),
重度の乏精子症,精子無力症が良い適応となりますので,正解はb,eとなります.
その他にも相対的適応(他の治療法を行い,妊娠を得られなかった場合に
IVFの適応を考慮するもの)を挙げておくと,
1.両側卵管の機能障害
2.女性が保有する抗精子抗体による不妊症
3.その他の原因によるもので,配偶者間人工授精反復不成功からステップアップ
などが挙げられますので,『病気がみえるvol.9婦人科・乳腺外科(第3版)』の249頁を
確認しておくとよいでしょう.
以上,過去2年の問題から2問ご紹介しましたが,
一種の社会問題ともいえる不妊・不妊治療,今後も国試での出題が予想されます.
また近年は“不育症”についても注目が集まっています.
不育症に関する問題は,過去の国試で何問か出題されてきましたが,
今後もチェックしておいたほうがよいでしょう.
ここで過去に出た問題を簡単にご紹介しておくと,
103B31
『不育症の原因はどれか.2つ選べ.→抗リン脂質抗体症候群,染色体異常』
107A1
『SLE(抗リン脂質抗体が出現することあり)→流産』
といった問題が出題されてきました.
あまり細かいこところまでは出題されないでしょうが,
不育症の原因は確実におさえておいたほうがようでしょう.
本メルマガでは不育症の3大原因を掲載しておきます.チェックしておいてください!
1)染色体異常(夫婦染色体均衡型転座,胎児染色体異常)
2)抗リン脂質抗体症候群
3)子宮奇形
では最後に知っておいて欲しいトピックスをご紹介したいと思います.
みなさんご存知でしょうが,人工授精の合併症として重要なのが多胎妊娠.
胚移植の際に移植する胚の数が多いと,多胎妊娠のリスクが高まりますね.
それを受けて2008年,日本産婦人科学会が多胎妊娠を防止するために,
“原則として移植する胚は1つ”という見解を示しました.
その結果,わが国の多胎妊娠が減ったという事実があります.
こういった内容は,まだ国試で問われないかもしれませんが,
1つのトピックスとして知っておいて損はないでしょう.
では今回はこれまで.
次回のテーマは『遺伝性乳癌・卵巣癌』を予定しています.
時間があるときにぜひチェックしてみてください!
追記
『病気がみえるvol.9婦人科・乳腺外科(第3版)』では226頁から253頁まで,
不妊・不妊治療について,かなり詳しく解説されていますので,
国試までに一度目を通しておくのをオススメします!
(編集部T.K)