[4~6年生向け]『レビューブック 内科・外科』(第10版)9月26日発売! 第4回:研修医まで使える!!鑑別力を磨くエッセンス集
編集K子です.こんにちは.
ついに『レビューブック 内科・外科』(第10版)が,
昨日9月26日に発売になりました.
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第4回:研修医まで使える!!鑑別力を磨くエッセンス集
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新発売の『レビューブック内科・外科』第10版.
今回の改訂版で,巻末ページに収載している付録が,
「鑑別!1st impression」!
今回は,この「鑑別!1st impression」について,
内容や使い方をご紹介します.
CBTや医師国試だけでなく
将来,研修医になったときにも役立つお話です.
この「鑑別!1st Impression」は,
基本的にはCBT対策・国試対策向けですが,
自然と鑑別診断のキホンが身に付くものなのです.
どういうものかを具体的に一言で説明すると,
「CBT対策と国試対策に役立つだけでなく
研修医になって必要になる“ヨコ切りの思考回路”
をつくるのに役立つまとめ集」です.
“ヨコ切り”っていきなり言われても,
分かりにくいかもしれませんね.
各疾患の各論,すなわち疾患ごとに,
疫学・病態・症状・検査・診断・治療などの情報を整理したものを,
“タテ切り”といいます.
“タテ切り”とは,『イヤーノート』や『レビューブック』で
疾患ごとにまとまっている情報です.
例えば,イレウスなら,
イレウスの特徴(症状や画像所見)や治療法などですね.
これに対して,
「この患者さんは腹痛で来院してきているけど,
そもそも腹痛をきたす疾患は何?君の診断は何?」
というように,
アタマの疾患リストを横断的に考え診断名を出す視点を,
“ヨコ切り”といいます.
実は,日本の場合,医学生のアタマの中のシナプスは
“タテ切り”までであることが多いのです.
理由は二つ.
1)“ヨコ切り”の思考は,全分野の疾患の特徴や病態が
アタマにはいっていないとできない.
(各科の“タテ切り”の理解がしっかりできてからでないと,
“ヨコ切り”の思考はできない)
2)日本の医大や国試が学生に要求するのは,“タテ切り”中心の理解で,
“ヨコ切り”の思考を磨く機会がほとんどない.
(機会があっても低学年時のPBLチュートリアルなど
“タテ切り”の理解が不十分なうちにやるだけなら効果が少ない)
欧米の医大は,症状から診断を考える臨床推論の教育が進んでおり,
学生のうちからトレーニングしているのに対し,
日本の医大では,学生のうちに臨床的な思考回路を養う機会は少ない,
と言われています.
医学部の最後をかざる医師国試も,実際の過去問をみれば分かりますが,
診断名を考える臨床問題でも所見がでそろっていて,
各論的な“タテ切り”の思考で答えが出せてしまい,
“ヨコ切り”の思考はほぼ必要ないのです.
しかし,国試を合格して研修医になると,
病院によっては,当直や救急外来(ER)で,
いきなり“ヨコ切り”の思考が要求されることがあります.
特に人気の研修病院は,
プライマリケア的な教育に力をいれていることが多く,
なおさら臨床推論の思考が要求されます.
「腹痛」ときたら?
胃十二指腸潰瘍や消化管穿孔,イレウス,虫垂炎,急性膵炎など,
当然,消化器系の疾患を思い浮かべますよね.
でもそれだけではない!
腹部大動脈瘤破裂もありえますし,
心筋梗塞も腹痛が主訴となる場合があります.
若い女性であれば妊娠や子宮外妊娠,卵巣の捻転などもありえます.
器質的な異常がなくても,DKAも考えられます.
他にも,まだまだたくさんあります.
「鑑別!1st impression」には,
腹痛の鑑別疾患が30疾患くらい列挙してありますので,
気になったらぜひ確認してみてくださいね.
重要な疾患は特に,ぱっと瞬時に,
アタマに思い浮かべられるようになっていなくてなりません.
疾患名を思い浮かべられなければ,
目的意識をもって,問診を進めたり,身体診察したり,
検査をオーダーしたりすることができません.
消化器疾患だけなら教科書の章だてを思い浮かべて答えられそうですが,
婦人科や代謝・内分泌など,腹痛をきたす疾患は他科・他系統にわたります.
まさに“ヨコ切り”のシナプスをアタマに作っておくことが大切です.
しかも,外来や当直では,
疾患名は二つの軸で整理して列挙する必要があります.
1)絶対見落としてはいけない疾患(Don’t miss it)
2)頻度が高い疾患(Common)
この二つの軸を意識する必要があります.
この思考が,見逃しを防ぐだけでなく,
やること・考えることの優先順位を決めてくれます.
ちなみに腹痛の場合,それだけではありません.
痛みの部位が,腹部全体なのか,心窩部なのか,
右上なのか,左上なのか,右下なのか,左下なのか,
解剖学的に整理することも重要になりますね.
いかがでしょうか?
1)Don’t miss it 2)Common 3)解剖学的部位
この3つの視点で,腹痛をきたす疾患を列挙できるでしょうか?
しかも,患者さんの前で,あわてず,素早く,的確に!
腹痛だけではありません.
意識障害,失神,頭痛,めまい,胸痛,呼吸困難,
悪心・嘔吐,吐血,下血,便秘,腰背部痛,浮腫,横断,しびれ…
などなど,主訴となる症候は多彩です.
繰り返しトレーニングすることが重要ですが,
研修医は忙しいので,繰り返し勉強する時間はないかもしれません.
なるべく研修医になる前に,医学生のうちから,
トレーニングしておきたいところです.
総合診療医・救急医レベルとはいいません.
研修医レベルでなくてもいい.
基本の「き」のレベルでもいいんです.
主訴に応じて鑑別疾患の名を列挙できる.
このレベルまではできるようになっておくのが望ましいですね.
そこまでアタマにシナプスを作っておけば,
研修医になってからも,重要な問診のポイントや,
プライマリケア的な思考・技能を加えやすくなるはずです.
デキる研修医を目指す人はもちろんですが,
「見逃し」はどんな研修医にも起こりうるだけに,
当直・救急がある病院で研修医になる人ならば,
トレーニングしておきたいところですね.
医学生のキャンパスライフは,
●4年のCBT・OSCE,
●5年の臨床実習,
●6年前半のマッチング試験,後半の卒試・国試
と盛りだくさんで,部活を引退しても,なお忙しい.
しかも,昔の国試と違い,医学の多彩な進歩を反映して,
勉強する情報が圧倒的に増えています.
診断学の教科書や,研修医向けの本を読時間がない!
そんな診断学・臨床推論の勉強をする余裕がない場合にも,
「鑑別!1st impression」はオススメです.
◆次回予告◆
気になるその中身は?
次回,「鑑別!1st impression」の誌面をご紹介します.
(編集部K子)