〔分析〕データでみる108回国試(その1)今回の合格率・合格基準は?
こんにちは,編集部のA.Mです.
108回国試に合格されたみなさんは,いよいよ研修医生活がスタートしました.
臨床研修は大変なことも多いと思いますが,体に気を付けて頑張ってくださいね!
応援しています!
さて,新6年生のみなさんはすでに本格的な受験勉強を始めた方も多いと思います.
先輩たちが受けた108回,どんな試験だったのか気になりますよね.
このメルマガでは「データでみる国試」と題して,
108回医師国試を分析していきたいと思います.
■合格率は微増,合格基準は低下
合格率は昨年と比べて0.8%上昇しました.
必修問題の合格基準が80%であることは例年と変わりませんが,
今年は必修除外となった問題が1問(必修臨床)ありました.
必修除外は一般・臨床の除外問題と異なり,
正解した場合は点数に含み,不正解だった場合は含まれません.
つまり,正解だった場合は160/200点以上,
不正解だった場合は158/197点以上が合格基準となります.
必修以外の一般問題では,除外問題と複数正解の問題がそれぞれ1問ずつありました.
除外問題については、今後のメルマガで触れていこうと思います.
そして,一般・臨床問題の合格基準ですが,こちらは昨年と比べて下がりました.
特に臨床問題については,近年2回は70%を超えていましたが,
今回は66.2%にまで下がっています.
メディックメディアで毎年行っている解答速報「TAKEOFF」の登録者全員の成績をみても,
臨床問題の得点率は77.8%(昨年は82.8%)となっており,
今年は臨床問題が難しかったことがわかりますね.
(ちなみに今後のメルマガで詳しく触れますが,
臨床問題で点数が足らずに不合格となってしまった人の割合も昨年に比べ多かったです.)
どんな問題が出題されてみんなが悩んだのか,実際の108回国試をみてみましょう.
【108A28】
70歳の女性.左上腹部痛を主訴に来院した.昨夜,久しぶりに孫たちと遊んだり歌ったりして騒いだ.その3時間後から左上腹部に痛みを感じるようになった.診察室には前かがみの姿勢で入ってきた.食事摂取は良好であり,悪心や嘔吐はなく便通も正常である.3年前に脳梗塞を発症し,その後アスピリンを内服している.体温36.5℃.脈拍88/分,整.血圧140/90mmHg.左上腹部に限局した圧痛を認めるが,反跳痛はない.腹筋を緊張させると疼痛と圧痛とは増強する.腸雑音は正常である.
最も考えられるのはどれか.
a 急性膵炎
b 腹壁血腫
c 腸腰筋膿瘍
d 虚血性大腸炎
e 穿孔性胃潰瘍
こちら正解はbの腹壁血腫で,正答率は56.3%でした.
腹壁血腫は新出疾患ですが,その他の疾患について冷静に除外していけば解けた問題です.
アスピリンの服用歴と,腹筋の緊張による疼痛と圧痛の増強もヒントとなりました.
ちなみに出題背景として,近年,予防的に抗血栓薬を内服する高齢者が多くなっており,
その有害事象に関する問題が出題されたと考えられます.
除外診断で選ぼうとしても,今までの国試で出題されたこともなく,
聞き覚えのない疾患を答えとして選ぶのには勇気がいるのかもしれません.
そのため,正答率が56.3%とやや低いものになったのではないでしょうか.
■2割以上が過去問の類似・プール問題
国試では上記のような聞き覚えのない疾患や新傾向の問題ばかりが出題されるのではなく,
毎年,過去問の類似問題やプール問題が出題されます.
今回の国試では,500問中108問が過去問の類似問題でした.
例年よりはやや少ないのですが,
それでも「5問に1問は過去問でみたことある」問題なんです.
実際の問題を例にみてみましょう.
【103E8】
薬剤とその拮抗薬の組合せで誤っているのはどれか.
a フェンタニル――――ナロキソン
b プロポフォール―――アトロピン
c ベクロニウム――――ネオスチグミン
d ヘパリン――――――プロタミン
e ミダゾラム―――――フルマゼニル
こちら,103回の国試に出題された問題です.
誤っているのはbのプロポフォールですね.
プロポフォールに拮抗薬はありません.
正答率は低く,42.3%でした.
では,今年出題された問題をみてみましょう.
【108G18】
抜管後の術後呼吸抑制の原因薬物と拮抗薬の組合せで適切なのはどれか.
a ジアゼパム――――――アトロピン
b フェンタニル―――――ナロキソン
c ベクロニウム―――――ロクロニウム
d チオペンタール――――スガマデクス
e スキサメトニウム―――ダントロレン
正解はbのフェンタニルとナロキソンの組み合せでした.
【103E8】の選択肢が正解選択肢となっており,
正答率は84.7%と,103回に比べ2倍に上がりました!
こういった類似問題やプール問題は全体的に正答率が高めとなっています.
1度出題されたことはみんな勉強しているので,絶対に落としてはいけない問題となります.
特に近年の過去問の類似問題は,古い過去問の類似問題よりも正答率が高くなります.
過去問(特に近年5回分)を解くことは,国試対策では必須となりますね.
今回はここまでとなります.
次回は「選択肢の形式」についてお届けします!
お楽しみに!
(編集部A.M)