[6年生向け]○○から予想する109回国試第6回:ニュースから予想!【デング熱】

こんにちは,編集部のT.Rです.
今回は国試対策のポイントと絡めて,
医療ニュースに関するメルマガをお届けしたいと思います.

 

第6回目のお題は,8月の後半頃から連日報道され,
国内での感染者数が増加している4類感染症の【デング熱】.
東南アジアなど海外を訪れた際に感染し,日本に帰国後発症する人は毎年200人ほどいますが,
日本国内で感染・発症したのは1945年以降,約70年ぶりのことです.

 

そんなわけで,感染の拡大が懸念されている【デング熱】について勉強していきましょう!

 

第6回:ニュースから予想!【デング熱】

 

まずは今回のデング熱に関するニュースについてまとめてみましょう.
最初の感染者について報告されたのは8月の終わり.
当初,感染者の共通点に東京・渋谷区の代々木公園周辺を訪れていたことが挙げられていました.
しかし,時間が経つにつれ代々木公園周辺以外での感染も明らかになってきており,
2014年9月10日の時点では東京都を始めとして16都道府県で,
計97人の感染者がみつかっています.

 

公園によっては封鎖されたところもあり,感染拡大を防ぐための様々な措置がとられています.
さらに厚生労働省の要請を受け,蚊を採取しウィルスの調査を行っている区もあります.
また,海外渡航歴や東京都に訪れたことのない方が発症し,
その感染経路を調べるべく,ウィルスの遺伝子配列の解析が行われた結果,
代々木公園で発見されたウィルスと一致したそうです.

 

今夏のニュースのため,109回国試にすぐ反映されることはないかとも考えられますが,
実はこのデング熱,108回の国試で出題されているんです!
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では,デング熱について勉強していきましょう.
デング熱は「感染症法」で4類感染症に分類されています.
フラビウイルス属のデングウィルスが,
ネッタイシマカヒトスジシマカによって媒介される感染症です.
ヒトからヒトへ直接感染することはなく
感染者を吸血した蚊が他のヒトを吸血することにより感染拡大していきます.
感染経路の理解は,医療従事者にとって大事なことなので,
国試で狙われるポイントですね.

 

ちょっと発展的なことになりますが,
デングウィルスはネッタイシマカやヒトスジシマカの唾液腺に生息し,
吸血によってヒトの皮膚のランゲルハンス細胞に侵入・増殖します.
その後,マクロファージなどの免疫反応により血中に入り込み,
肝臓などの多臓器に侵入していきます.

 

それではここで,デング熱に関する症例問題(過去問)を解いてみましょう.
普段馴染みのない疾患は,ポイントをどうおさえたらいいのか難しいときがありますが,
実は,症例問題の所見などが,覚えるべきポイントだったりします.
症例を通じ正確な理解をしておきましょう.

 

98A55
35歳の男性.39℃を超える発熱,全身の筋肉痛および関節痛を訴えて来院した.カメラマンとして西サモア諸島に2週間滞在し,10日前に帰国した.撮影中よく蚊に刺されたと言う.意識は清明.体温39.5℃,脈拍92/分,整.血圧110/76mmHg.軟口蓋に小出血点が散在しているが,頬粘膜に紅暈を伴った白色斑は認めない.頸部リンパ節腫大はない.腹部では肝を右肋骨弓下に1cm触知し,脾濁音界の拡大を認める.尿所見:蛋白1+,糖(-).血液所見:赤血球450万,Hb 14.5g/dL,Ht 41%,白血球2,800,血小板8万.血清生化学所見:血糖102mg/dL,総蛋白7.2g/dL,尿素窒素28mg/dL,クレアチニン1.0mg/dL,総ビリルビン2.3mg/dL,AST 156単位,ALT 223単位,Na 140mEq/L,K 4.0mEq/L,Cl 99mEq/L.CRP 1.6mg/dL.発熱3日目に全身に発疹が出現した.その時の写真(A,B)を次に示す.

考えられるのはどれか.
a 麻疹
b 黄熱病
c ラッサ熱
d デング熱
e 熱帯熱マラリア

解答
答えは「d デング熱」ですが,どのようにデング熱と診断していけばよいのか,
確認したいと思います.

 

まず,本症例の主要所見.
高熱,筋肉痛,関節痛,発疹(点状出血斑)ですが,これらはデング熱でみられる所見です.
デング熱は一過性熱性疾患であり,2~7日の潜伏期の後,
典型的には発熱,頭痛,後眼部痛,重度の筋肉痛,背部部痛が出現します.
その後,発疹が出現し1週間程度で回復します.
一般的に予後良好な疾患です.
しかし,重症化すると血漿漏出出血傾向を示すデング出血熱となり注意が必要です.

 

そして海外渡航歴.
西サモア諸島(熱帯地方)に滞在し蚊に刺されていることから,
熱帯地方で蚊が媒介する感染症が疑われます.
ちなみに,ネッタイシマカやヒトスジシマカは熱帯・亜熱帯地域に生息しています.

 

さらに検査所見.
血小板減少,白血球減少,AST,ALT値が上昇しており,
これらもデング熱の典型的な所見といえます.

 

以上のことから,本症例はデング熱が考えられますね.
では次に,それ以外の選択肢についても考えましょう.
国試の勉強では,他の選択肢がなぜ否定されるのかを考えることも大切です.

 

a 麻疹
症状は点状出血斑ではなく,Koplik斑です.

 

b 黄熱病,e 熱帯熱マラリア
黄熱病と熱帯熱マラリアは,熱帯地方の海外渡航の際に蚊が媒介する疾患という点が,
デング熱と共通している特徴になります.
しかし,黄熱病は黄疸を,熱帯熱マラリアは発熱・貧血・脾腫を特徴とする疾患であり,
本症例には適しません.
また,熱帯熱マラリアは診断に末梢血中での原虫の証明が必要になります.

 

c ラッサ熱
ナイジェリア,西アフリカでみられ,野ネズミが媒介しています.
デング熱やラッサ熱以外にどのようなウィルス性出血熱があるのかも確認しておきましょう.

 

以上のことから,他疾患は否定されますね.
デング熱は海外渡航歴やその他の所見から総合的に考えて診断していきましょう.
では,最後に予想問題です.
デング熱の診断について今まで考えてきました.
最後は治療や予防について考えていきましょう.

 

問題
デング熱の予防・治療に関して正しいものはどれか.
a 抗ウィルス薬を用いる
b 対症療法を行なう
c 発熱に対してアスピリンを投与する
d 予防法は特にないため何もしなくてよい
e 予防にはワクチンの接種が有効である

解説
a 抗ウィルス薬を用いる・・・×
b 対症療法を行なう・・・○
対症療法,主に輸液と解熱鎮痛薬の投与を行います.
最近の話題として,名古屋市にあるベンチャー企業が,
デング熱の治療薬に必要となるウィルスの抗体を開発し,
治療薬の実用化に向け臨床試験を行っていくことを発表しました.

 

c 発熱に対してアスピリンを投与する・・・×
出血傾向やアシドーシスの助長,Reye症候群の発症の可能性があり禁忌です.
解熱鎮痛薬にはアセトアミノフェンを用います.

 

d 予防法は特にないため何もしなくてよい・・・×
感染拡大を防ぐためには,何よりも蚊に刺されないことが大切です.
そのための対策を行いましょう.
例えば,日中蚊がいそうな場所に行く場合は,
長袖服・長ズボンの着用や昆虫忌避剤の使用などが重要ですね.
蚊のいなくなる時期まで対策は続けましょう.

 

e 予防にはワクチンの接種が有効である・・・×
現在デング熱に対する有効なワクチンは存在しません(108A9もチェックしてください).
しかし,大手製薬企業がワクチン開発に向けた臨床試験を進めているようです.
WHOは,地球温暖化に伴う気候変動がこのまま進むと,
2030~50年の間に感染症や熱中症による死者が現在より年間約25万人に増加すると予測しています.
熱帯地域に分布しているデング熱を媒介する蚊の生息域に注意が必要となるかもしれません.
こうした現状からも,デング熱をしっかりと理解しておくことは非常に重要だと思います.

 

デング熱は媒介生物,症状,治療・予防法に分けて理解し,
さらに,4類感染症やウィルス性出血熱も合わせて勉強することがポイント!
「○○から予想する109回国試」第6回目,以上です.
次回もお楽しみに!

 

(編集部T.R)

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