[6年生向け]○○から予想する109回国試第8回:流行状況から予想!【梅毒】

こんにちは.
編集部Mです.

 

気が付けば夏も過ぎ,いつのまにか秋になってしまいました.
夏は終わっても,夏休み企画「○○から予想する109回国試」はまだまだ続きます.
第8回目の今日は,いまや過去の病気ではなくなりつつある,
「梅毒」をテーマにお送りしたいと思います.

 

第8回:流行状況から予想!【梅毒】

 

さて,梅毒です.
性感染症ですね.

 

1960年代には日本を含め世界的に流行がみられた疾患です.
最近では,日本国内での患者数は1987年をピークとして減少傾向にあり,
以後90年代から2000年代にかけて国内報告数は年間1000例未満で推移してきました.

 

そのためか,近年の医師国家試験においては
梅毒をテーマとした問題の出題頻度は高くありません.

 

しかし現在,梅毒患者数は再び増加の傾向にあります.
2010年の国内報告数は621例でしたが,2011年には827例,
2012年には875例と増加していき,昨年2013年には1226例と急増しました.
国試においても,今後頻出疾患となる可能性がないとは言い切れません.

 

ちなみに,過去の国試では
臨床症状および検査に関する知識を要求される問題が多く出題されています.
特に臨床症状については覚えることが多く,苦手意識のある方もいるかと思います.
ポイントをしっかりおさえておきましょう.

 

ということで,予想問題です.

 

問題
梅毒について正しいものはどれか.2つ選べ.
a 外陰部疼痛をきたす
b バラ疹は第Ⅰ期にみられる.
c 扁平コンジロームは第Ⅱ期にみられる
d TPHAにも生物学的偽陽性がある.
e 胸部大動脈瘤の原因となる

 

 

回答を発表する前に,梅毒について簡単にまとめてみます.

 

◆梅毒とは◆

 

梅毒はトレポネーマの感染によって発生する感染症です.
感染経路は性的接触のほか経胎盤感染があり,先天異常の原因にもなります.
近年問題になっているのは主に性的接触による後天性梅毒です.

 

ちなみに,『感染症法』では5類感染症,全数把握対象疾患に指定されています.
診断したら7日以内に保健所に届出をしましょう.

 

◆臨床経過◆

 

梅毒の症状は感染から約3週の潜伏期を経て出現します.
臨床経過は第Ⅰ期~第Ⅲ期に分けられ,それぞれの病期で特徴的な臨床症状を呈します.

 

第Ⅰ期は感染部位局所の症状が主です.
外陰部の無痛性の硬結硬性下疳のほか,口腔粘膜疹が出現する場合もあります.
また,リンパ節の腫脹は局所にとどまります.

 

第Ⅱ期になると,トレポネーマが血行性に移行し全身性に症状が現れます.
全身のリンパ節腫大に加え,紅斑・丘疹(バラ疹)や扁平コンジロームなどの皮膚病変,
髄膜炎や肝炎,腎炎が生じることもあります.

 

第Ⅲ期梅毒へは,Ⅱ期梅毒の症状消失後,数年の無症状期を経て移行します.
第Ⅲ期では全身に肉芽腫性病変(ゴム腫)を形成します.
また,大動脈瘤(胸部に多い)や大動脈炎などの心血管系病変のほか,
進行麻痺,難聴といった中枢神経系の変性による症状が現れます.

 

◆診断◆

 

梅毒の検査は,①鏡検,②血清梅毒反応 の二つをおさえましょう.

 

①鏡検は初期梅毒を確定診断する唯一の方法です.
硬性下疳などの皮膚病変から得た漿液を直接観察する方法で,墨汁法,暗視野法が重要です.

 

②血清梅毒反応は,一般にSTS法TPHA法(or FTA-ABS)の
二種類の検査を組み合わせて行います.

 

それぞれどういう検査かといいますと,
まず,STS法はトレポネーマの脂質(カルジオリピン)を抗原とする反応をみる検査で,
感染から4週以降,比較的早期に陽性化します.
ただし,このカルジオリピンは梅毒に特異的なものではなく,梅毒以外の疾患,
たとえばSLEや抗リン脂質抗体症候群,妊娠などでも陽性となりえます(生物学的偽陽性).

 

一方,TPHA法はトレポネーマそのものに対する抗体を検出する,特異的な検査です.
「じゃあTPHA法だけでいいのでは…」と思いきや,このTPHA法,
いったん梅毒に感染して陽性になると,治った後もずっと陽性のままなんですね.
つまり,TPHA法で陽性というだけでは,その時点で感染しているのか,
それとも以前に感染して検査の時点では治癒しているのか,区別がつかない…

 

ということで,STS法とTPHA法を併用するわけです.
TPHA法で陽性で,かつSTS法でも陽性なら梅毒と診断できます.
また,STS法はTPHA法と異なり治癒によって陰性化するので,治療効果の判定に有用です.

 

◆治療◆

 

治療にはペニシリンGを用います.
垂直感染の予防として母体に用いるのも同じく,ペニシリンGです.
以上ふまえて,正解はc,eになります.

 

 

いかがでしたでしょうか.
第8回「○○から予想する109回国試」は以上です.

 

過去の国試の出題では,梅毒をテーマとした問題はもとより,
大動脈瘤や抗リン脂質抗体症候群,SLEなどの他の疾患をテーマとした問題でも
梅毒についての知識が必要となる場面が少なくありません.

 

また,今回のメルマガではほとんど触れませんでしたが,
先天性梅毒に関する問題も国試ではたびたび出題されています.
確認しておきましょう.

 

みなさんも
「109回ではこのあたりが狙われるんじゃないか」といったネタがありましたら
ぜひ,(voice@medicmedia.com)までお送りください.

 

ということで今回はこのあたりで.
次回もおたのしみに!

 

(編集部M)

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