〔分析〕データでみる109回国試(その5)英語問題,難問・割れ問の勉強の仕方は?
こんにちは,編集部M.Tです.
データでみる国試,第5回は,
「変化した英語問題,正答率からみる難問・割れ問」をテーマにお話します.
■英語問題,新しい傾向に
国試の必修ガイドラインを皆さんはご覧になったことがありますか?
109回国試では「一般教養的事項」として医学史や医学英語が
およそ4点分出題されることが,ガイドラインで事前に発表されていました.
必修問題で許される失点は基本的に40点ですから,
一般教養的事項を全て落とすと,そのうち10%を使うことになりますね.
たった4点と侮るなかれ.しっかりと対策すべき項目になります.
まずは108回の問題を見ていただきましょう.
【108C12】
頭部にみられる病的所見はどれか.
a asterixis
b clubbing
c gynecomastia
d nystagmus
e scoliosis
正解はdのnystagmusで眼振です.
選択肢の5つの単語を理解していれば解ける作りになっていましたが,
それでも解答率は以下の通り.
a 17.3%,b 15.9%,c 24.7%,d28.6%,e 13.5%
綺麗に解答がわかれており,英語の意味がわからずお手上げだったようです.
次に109回の英語問題を見ていただきましょう.
【109F25】
44歳の男性.航空会社の職員に付き添われて空港内の診療所を受診した.持参した英文紹介状の一部を示す.
This patient is a 44-year-old man with a complaint of right flank pain*.
The pain suddenly occurred while he was on the airplane. It was colicky
and radiated to the right inguinal region. Neither nausea nor diarrhea was
associated. He had appendectomy when he was 8 years old.
Urinalysis results:Protein(-),Sugar(-),Occult blood(2+)
*flank pain:lateral abdominal pain
出張のため近隣国へ向かう飛行機内で上記の症状を認めたため,到着直後に現地の空港内の診療所を受診し鎮痛薬を投与された.疼痛は我慢できる程度になり,予定を変更して次の便で日本に帰国した.現在,紹介状に書かれた症状は我慢できる程度に続いており,新たに生じた症状はない.意識は清明.身長165cm,体重68kg.体温37.1℃.脈拍76/分,整.血圧136/76mmHg.
この患者にみられる可能性の高い身体診察所見はどれか.
a 腸雑音亢進
b 陰嚢の透光性
c 腹部血管雑音
d Blumberg徴候
e 肋骨脊柱角の叩打痛
108回の単語の問題でもさっぱりだったのに,
109回は英文紹介文が出題されました.正解はeの肋骨脊柱角の叩打痛です.
知らない単語の意味を他の単語から推測ができるのは文章問題のよい点ですが,
「appemdectomy=虫垂切除→イレウス?」と
間違った方向に推測した受験生も実際いたようです.
医学英語について,これまでは一般問題で問われてきましたが,
今回は臨床問題で英語の知識を問われました.
必修の3点は非常に大きいですし,これまで以上に医学英語の勉強が重要になるのでは…?
「英語は苦手だなー…」という皆さん!
英語問題でしっかり得点するために,『QB必修』の英語予想問題をオススメします.
さらに『レビューブック必修・禁忌』の「DOCtan」も活用してみてくださいね.
この2つを使うことで,知っておいたほうがよい英単語や,
意味の推測に役立つ接頭辞・接尾辞がスムーズに勉強できると思います.
次に割れ問についてみていきましょう.
まずは必修についてです.
■必修対策,あなたはどうする?
109回国試の問題を正答率で分けてみました.
まずは必修の分布をみてみましょう.
必修問題では,90%以上の問題は誰でも反射的に解けるレベル,
70%未満は,「これ必修なの?」とざわつくレベルです.
合格基準が80%以上の絶対基準である必修では,
正答率80%以上の問題は確実に正当しなくてはいけない問題と考えられますね.
これまでのメルマガでお伝えしたとおり,
過去に類似問題があった場合,正答率はかなり上がる傾向にあります.
正答率80%を考えると,過去問の演習は必須ですね.
しかし,「正答率が80%を超えている問題は,必修100問中80問しかない」
ということも,上記の表からわかると思います.
余裕を持って本番に臨むためには,正答率80%未満の残り20問について,
つまり「過去に出題されていない内容について」も
十分に勉強しておきたいところです…!
「QB必修」では,過去問を中心に演習しつつ,
『予想問題』を使ってさらに深い勉強ができます.
ひたすら必修問題のみを解く期間を作り,
必修問題に慣れておくことも大切ですね.
さて,それでは,必修除外となった次の問題を考えてみましょう.
【109C11】
妊娠中の深部静脈血栓症の発症に最も注意すべきなのはどれか.
a 妊娠悪阻
b 過期妊娠
c 妊娠糖尿病
d 羊水過少症
e 血液型不適合妊娠
妊婦のDVTについて問う問題ですが,みなさん正解がわかりますか?
それぞれの解答率は,
a 22.2%,b 35.3%,c 35.6%,d 0.8%,e 6.1%
となっており,abcの3つで解答が割れたようです.
「bの過期妊娠では巨大児になる傾向があるし,静脈圧迫しそうだな」
「よく分からないけど…糖尿病なら関係ありそうだしcで…」
と受験生も色々と悩んだようでした.
しかし正解はa「妊娠悪阻」で,
嘔吐や摂食・飲水困難に伴う脱水が深部静脈血栓の誘因となるようです.
今回は「問題としては適切であるが,必修問題としては妥当でない」
と判断され,以前のメルマガで紹介したように,必修除外となっています.
(ただし,199×80%=159.2となり,採点除外でも合格基準は変わらす160点でした.)
■みんなが悩んだ割れ問・難問は?
続いて,一般・臨床問題の分布です.(採点除外,複数正解を除きます.)
医師国試では,多くの人が解けた問題を確実に解くことが重要です.
一般・臨床問題については,70%以上の正答率の問題は落とさないでおきたいところですね.
過去問を解く際に全てを一様に解くのではなく,
「正答率の高い問題=皆が解けるレベル」と意識して、
メリハリのある演習を行うのもよいと思います.
さて,次に正答率が低かった問題についてです.
109回ではどんな問題で受験生が悩んだのか見てみましょう.
【109D14】
リウマチ熱の診断に有用でない所見はどれか.
a 皮下結節
b 舞踏運動
c 輪状紅斑
d 口腔内アフタ
e 多発性関節炎
リウマチ熱の診断にはJones改定基準が用いられます.
その基準に含まれないdの「口腔内アフタ」が正解となりますが,
正答率は48.6%と非常に低かったです.
「リウマチ熱―輪状紅斑,シェーグレン病―環状紅斑」といった,
組み合わせ問題でよく知られているものは除外できたようですが,
解答率は,b 43.2%,d 48.6% となっており,
この2つで受験生は悩んだようですね.
診断基準や増悪因子は一般問題で尋ねやすい内容であり,
これからしっかり暗記すべき項目かもしれません.
このように2つ以上の選択肢で解答が割れたものを,
そのまま「割れ問」と呼んでいます.
他にどんな割れ問があったのか,
次の問題をみてみましょう.
【109G6】
最近5年間における精神障害者の医療の実態について正しいのはどれか.
a 精神病床の平均在院日数は約90日である.
b 精神病床数は人口千人当たり約1床である.
c 精神病床入院患者は65歳以上が約半数を占める.
d 精神病床入院患者は統合失調症より認知症が多い.
e 精神科外来患者は気分障害より統合失調症が多い.
この問題の解答の内訳は,
a 28.3%,b 30.7%,c 28.0%,d 6.0%,e 7.0%
となっており,abcの3つで割れたことがわかります.
答えはcの「精神病床入院患者は65歳以上が約半数を占める.」ですが,
精神障害者の医療について,統計を把握している人は少なかったようです.
精神保健福祉に関して,入院形態や制度については頻出ですが,
今後は統計データのような具体的な知識も必要になるかもしれませんね.
■迂闊に飛びついてはいけない問題
それでは最後の問題です.
【109A37】
81歳の女性.食欲不振を主訴に来院した.昨日から食欲不振を訴え食事をとらないため,家族に連れられて受診した.60歳時に胆嚢結石で開腹手術を受けている.Parkinson病で74歳からレボドパ〈L-dopa〉を服用している.体温36.8℃.脈拍72/分,整.血圧120/74mmHg.呼吸数14/分.腹部は軟で,軽度膨満している.下腹部に腫瘤を触れ,軽度の圧痛を認める.筋性防御はない.腹部単純X線写真(A)と腹部造影CT(B)とを次に示す.
この疾患の原因として最も考えられるのはどれか.
a 癒着
b 内服薬
c 小腸腫瘍
d 小腸軸捻転
e 外ヘルニア
Aの画像のniveauからイレウスと診断し,問題文中の開腹歴から
aの「癒着」と55.6%の受験生が解答しています.
確かに単純性イレウスの原因では術後癒着が最多なのですが….
だとしたらBの画像には何の意味があるのでしょうか?
この問題,実はeの「外ヘルニア」が正解なのです.
正答率は19.4%と低めでしたが,Bの画像には膀胱の位置が示されており,
この注釈の意図を考えれば正答できる問題だったのです.
最近の国試では画像問題が増加しており,
実際に自分で画像を読む機会が重要になっています.
year note ATLASの画像と似た画像が国試で出ることもたくさんあります.
(実はこの問題もATLASのA-64に類似画像があったのです)
画像の読み方が1番身につく方法は,
実習で先生方に教えていただくことだと思います.
しかしその中で触れられる症例も限られますので,
「year note ATLAS」や「病気がみえる」で
その不足分をしっかり補って,国試に臨んでくださいね!
今回は109回の問題の正答率を参考に,
難しかった問題や割れ問を紹介してきました.
実は「その時点の受験生にとっての難問,割れ問」が,
これから国試を受けるみなさんにとっては,
「解けなくてはならない問題」になることがあるのです…!
そういった問題を「リベンジ問題」というのですが,
その話は次回のメルマガで詳しくお話しいたしましょう!
では今回はこのへんで!
次回をお楽しみに!
(編集部M.T)