[分析]データでみる110回国試(その3)
不合格者の内訳は?
こんにちは!編集部のM.Tです.
「データでみる110回国試」シリーズ.
3回目の今回は,
「医師国家試験の不合格者の内訳は?」
というテーマでお届けします.
今回のデータは,メディックメディアがメックと提携して行っている,
解答速報「TAKEOFF」(国試採点サービス)の結果をもとに分析しています.
※「TAKEOFF」とは,自分の選んだ解答をサイト上で入力すると,
約1週間後に弊社の模範解答をもとに作成した成績を閲覧できるサービスです.
皆さんからいただいた解答の情報から
「正答率の算出」や「不合格の原因分析」などを行っています.
それでは「TAKEOFF」のデータをもとに,
110回国試を分析していきましょう.
■ 一般も臨床も難しかった110回
国試採点サービス「TAKEOFF」,
今年はなんと,受験者数9,434名中6,544名の方が参加してくださいました!
(ありがとうございます!)
中でも500問すべての解答を入力してくださった5,670名の方のデータをもとに,
今回は不合格者の内訳について考えていきたいと思います.
では,その5,670名の合格率をみてみましょう.
実際の合格率よりも高いですが,これは「絶対に落ちた!」と確信している場合は,
「TAKEOFF」に参加しない人が多いからと考えられます.
次に合格者5,432人と,不合格者238人の成績をみてみましょう.
合格者の平均点は,合格ラインよりもはるかに高いことに比べ,
不合格者の平均点は,合格ラインギリギリですね.
あとちょっと!のギリギリのところで悔しい思いをされた方が多かったのではないでしょうか.
ではさらに,不合格者の内訳をみていきましょう.
前回(109回)と比較して,
必修落ちが38.5%→15.1%とかなり減少しているのがわかります.
また,1回目の「データでみる国試」でもご紹介した通り,
110回の一般・臨床問題の合格基準は,109回よりも低くなっています.
(https://informa.medilink-study.com/wordpress/web-informa/post9523.html)
このことからも「一般のみ落ち」,「臨床のみ落ち」の割合増加は頷けますし,
さらに111回に向けては「一般・臨床のバランスがとれた勉強」
が重要であることがわかります.
■ 「臨床問題」で「一般問題」対策
私,編集部M.Tも医学部出身で,
QBを解いて必死に国試対策をしていました.
その時よく思ったのは,
「一般問題って単純暗記ばかりでつまらないな…」
ということでした.
そこで皆さんにご紹介したいのが,
「臨床問題」で「一般問題」の対策をする,ということです.
私と同じタイプの方はモチベーションの点で,
そうでなくても純粋に効率の点でオススメの勉強法です.
この勉強法なら自然と「一般・臨床のバランスがとれる」はず.
まずは110回で実際に出題された臨床問題を見てみましょう.
【110I4】
肺動脈性高血圧症について正しいのはどれか.
a 平均肺動脈圧は低下する.
b 肺血栓塞栓症が原因となる.
c 心陰影の左第3弓突出がある.
d 先天性心疾患に伴う肺高血圧症が含まれる.
e カテーテル検査では肺動脈楔入圧が高値である.
肺高血圧症についての知識を問う問題で,
正解はd,正答率は25.5%でした.
受験生の67.0%がbと解答していたようです.
スッと解けなかった皆さんは,この1問を解くために,
定義,原因,画像所見,検査所見を
改めて暗記する必要があるわけですが,
なかなか億劫に感じてしまいませんか…?
そこで,109回で出たこの問題を見てください.
【109D32】
48歳の女性.全身倦怠感と浮腫とを主訴に来院した.38歳時に特発性肺動脈性肺高血圧症と診断され,エポプロステノール(プロスタグランディンI2製剤)在宅持続静注療法を受けている.1週前から,だるさで家事がおっくうになり,下腿に浮腫が出現したため受診した.下腿に軽度の浮腫を認める.胸部X線写真を下に示す.
この患者に認められない検査所見はどれか.
a 心電図で肺性P波
b 心エコー図で左心室拡大
c 6分間歩行試験で歩行距離の減少
d 心臓カテーテル検査で肺血管抵抗上昇
e 胸部CTで中枢側肺動脈の拡張と末梢側肺動脈の急激な狭小化
正解はb,正答率は95.2%の問題でした.
「肺動脈性なら右心負荷はあるだろうけど…左心は拡大しないでしょ…」
という感覚で解けてしまったようです.
実はこの【109D32】(=臨床問題)を『QB』あるいは『QBonline』でしっかり勉強していれば,
【110I4】(=一般問題)を正解することができたのです.
(QBonlineにご登録されている方は以下から【109D32】の解説をチェック!
http://qb-online.com/#/list/109D32 )
【109D32】の設問そのものから,
肺動脈性高血圧症の画像・治療を学ぶことができましたし,
さらにa~eの解説であらゆる検査の所見について目を通すことができました.
また,解説を「補足事項」まで読み進めてもらうと,
肺血栓塞栓症は肺動脈性高血圧症の原因ではない旨の記載があります.
この時点で消去法から【110I4】で正答肢であるdを選ぶことが可能ですし,
さらに『イヤーノート』の参照ページで確認をしてもらうと,
「先天性短絡性心疾患」が原因となるものがあることが,記載されています.
これで自信を持ってdを選択できますね.
このように,「一般問題」を解く上で必要な知識は
「臨床問題」の演習を通して身につけることが可能です.
まだ国試当日までたっぷり時間はありますし,
皆さんぜひとも丁寧な演習を重ねることで,
臨床から一般を学ぶ,バランスの良い効率的な学習をしてもらえたらと思います.
今回はここまで!
次回は「出題分野の割合」をみていきましょう.
お楽しみに!
(編集部M.T)