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令和6年版医師国家試験出題基準 変更のポイントは?
編集M.N.です.今年の3月31日に発表された,
医師国家試験の新しい出題基準(ガイドライン)についてお伝えしています.
今回公表された出題基準は,今年度の国試(118回)から適用されます.
今日は,その改訂ポイントの概要をお話ししていきます.
目次
◆追加・変更・削除が多い領域
今回の出題基準の改訂で,いったいどのような領域で変更が発生したのか.118回以降の国試受験を控えるみなさんにとっては気になるポイントですよね.
【総論】【各論】【必修】の領域にて追加・変更・削除が多く見られた範囲について,まずはご紹介します.
【総論】
特筆すべき領域なし.前回の出題基準から,大きな変更はありませんでした.勉強すべき領域は今までと変わらず.ということですね.
【各論】
次に,各論レベルで変更等が多かった領域を確認しましょう.
Ⅰ 産科【追加・変更が多い】
・比較的新しい概念が多いが,症例報告の増加やガイドラインの変更に伴い出題基準に追加されたか.後述の「新ワード紹介」でも紹介予定の,「可逆性後頭葉白質脳症〈PRES〉」「周産期心筋症」などが,新たに明記されました.
Ⅱ 精神科【追加・変更が多い】
・用語の名称変更(「器質性精神病」→「器質性精神障害」など),用語追加(「コミュニケーション症」など)が非常に多く,各論領域で最も注視すべき範囲です.
・DSM5(日本語版は2014年公開)の普及,ICD-11の導入に伴う変更と考えられます.
Ⅲ 眼科【削除が多い】
・目の先天異常に関する項目が項目ごと削除されました.
Ⅸ 整形外科【削除が多い】
・出題基準から削除された項目が多いようです.「脊椎骨端異形成症」「大理石骨病」「先天性多発性関節拘縮症」「外反肘,内反肘」を始め,多くの用語が削除されています.
・整形外科の領域は「整形外科」としてまとまっておらず,「Ⅸ 神経・運動器疾患[約9%]」等に掲載されています.チェックの際は注意です!
Ⅺ 免アレ【追加・変更が多い】
・用語の名称変更(「抗GBM病」→「抗糸球体基底膜抗体病」など),用語追加(「血管炎症候群」「結晶誘発性関節炎」「免疫介在性壊死性筋症」など)が多いようです.
・比較的新しい概念が多く,新たな分類の追加や名称変更などが最近も盛んに行われているためか?
【必修】
1 医師のプロフェッショナリズム(B 患者の権利と義務)【追加・変更が多い】
・インフォームドコンセントに関わる項目がより強化された(共同意思決定<シェアードディシジョンメイキング>など).
12 死,緩和ケア,終末期ケア【変更が多い】
・緩和ケア,終末期ケアに関する項目がコンパクトにまとめられた(項目数としては減った).
・緩和ケアや終末期ケアが以前に比べて普及したため,当たり前の用語としてわざわざ項目を作らなくなった?(DNARなど)
◆「ブループリント」の変更点
出題基準には,各分野の出題割合を示した
「ブループリント」(医師国家試験設計表)とよばれるものが掲載されています.
[平成30年版はこちら】【令和6年版はこちら]
令和6年版における「ブループリント」の変更点は,
大項目レベルで
【必修の基本的事項】16「チーム医療」→「チーム医療と多職種連携」,
【医学各論】『Ⅱ 精神・心身医学的疾患』の3「神経症性障害、ストレス関連障害、身体表現性障害」→3「不安症、ストレス関連症、身体的苦痛症または身体的体験症」
といった名称変更や,
【医学各論】『Ⅱ 精神・心身医学的疾患』に6「成人のパーソナリティ・行動障害」
が追加されたなどありましたが,
全体として大きな変更点はありませんでした.
◆出題項目の「レベル分類」について
●今回から,出題項目の「医学各論」において新たにレベル分類がなされ,求められる知識の範囲が明確化されました.
(以下,令和6年版医師国家試験出題基準・ブループリントの趣旨の2ページより).
実際にどのように見るかを確認してみましょう!
次の出題項目の「医学各論」の赤枠内の記載に注目してください.
この場合,「医学各論」→「Ⅰ 先天異常,周産期の異常,成長・発達の異常」→「4 性分化・染色体異常,先天異常および成長・発達の障害」→「A 染色体・遺伝子異常」の中ではDown症候群がレベル分類 a,Turner症候群とKlinefelter症候群がレベル分類 b,trisomy(13番,18番)がレベル分類 cとなっております.
ここで,前述のレベル分類の表を参考にすると,Down症候群が一番出題内容の振り幅が広く,ついでTurner症候群とKlinefelter症候群,そしてtrisomy(13番,18番)については出題内容は「病名想起」のみであることがわかります.
(※a~cレベルはあくまで指標であり,現時点ではcレベルでも治療について問われないとは言い切れないので注意が必要です.)
もちろん,すべての病気について勉強することが大切ということは大前提として,上記のようにレベル分類を確認することでどの疾患をより重点的に,優先的に勉強するかの一つの指標にはなると思います.ぜひレベル分類を国試勉強に役立てて見てください!
◆表記の変更
細かな表記の変更点はたくさんありましたが,ここでは特に国試的に重要そうな変更点をいかにご紹介いたします.
考えられる理由も書いていますので,参考にしてみてください.
●優性遺伝 ➡ 顕性遺伝(優性遺伝) ●劣性遺伝 ➡ 潜性遺伝(劣性遺伝) (2017年9月11日に日本遺伝学会より遺伝学用語の改訂が行われました.それに伴い日本医学会の「遺伝学用語改訂に関するワーキンググループ(WG)」より2020年に報告書が出され,その中で当面「優性遺伝」「劣性遺伝」を「顕性遺伝(優性遺伝)」「潜性遺伝(劣性遺伝)」と表記することとなったようです.5年程度の期間を経た上で括弧内の併記を外し,「顕性遺伝」「潜性遺伝」と表記することについて検討するとのことで,今後の改定で表記がまた変わる可能性があるかもしれません.) ●副腎皮質ステロイド及び非ステロイド性抗炎症薬〈NSAIDs〉 ➡ グルココルチコイド及び非ステロイド性抗炎症薬〈NSAID〉 ●副腎皮質ステロイド ➡ グルココルチコイド (明確に言及されている訳ではないですが,治療薬として用いられる副腎皮質ステロイドは一般的にグルココルチコイドを指すためであると考えられます.国試的には選択肢として頻出ワードのため,この変更点が特に重要かも.) ●生活習慣病 ➡ 非感染性疾患〈NCD〉(生活習慣病を含む) (健康日本21(第二次)にNCDが明記されています.それに合わせての変更?) |
※用語については,日本医学会医学用語辞典 Web 版の内容を考慮し定めている.
いかがでしたでしょうか.次回の連載もお楽しみに!
今回はざっくりと,新しい出題基準の注目ポイントをご紹介しました.
次回からは,新たに加わった疾患や用語を具体的に紹介していきます.
お楽しみに!
◆バックナンバー
令和6年版医師国家試験出題基準 変更のポイントは?
新ワード紹介(1)喘息COPDオーバーラップ〈ACO〉
新ワード紹介(2)遺伝性乳癌卵巣癌症候群
新ワード紹介(3)アミロイド苔癬
新ワード紹介(4)可逆性後頭葉白質脳症〈PRES〉
新ワード紹介(5)周産期心筋症
新ワード紹介(6)脳脊髄液減少症
新ワード紹介(7)微小血管減圧術
新ワード紹介(8)血清シスタチンC
新ワード紹介(9)体軸性脊椎関節炎,強直性脊椎炎
新ワード紹介(10)先天性補体欠損
新ワード紹介(11)抗合成酵素症候群
新ワード紹介(12)免疫介在性壊死性筋症
新ワード紹介(13)発熱性好中球減少症
新ワード紹介(14)マクロファージ活性化症候群〈MAS〉
新ワード紹介(15)ヘパリン起因性血小板減少症〈HIT〉
新ワード紹介(16)抗第Ⅷ因子インヒビター
新ワード紹介(17)双極Ⅰ型障害,双極Ⅱ型障害
新ワード紹介(18)広場恐怖症
新ワード紹介(19)身体醜形症
新ワード紹介(20)睡眠時遊行症
新ワード紹介(21)場面緘黙
新ワード紹介(22)毛細血管拡張症〈angioectasia〉
新ワード紹介(23)アデレード宣言
新ワード紹介(24)ヒルの基準(関連強固性,時間性,一貫性,整合性,量反応関係,生物学的妥当性など)
新ワード紹介(25)mRNAワクチン
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