[分析]データでみる111回国試(その3)医師国家試験の不合格者の内訳は?

こんにちは!編集部のA.Mです.
「データでみる111回国試」シリーズ.
3回目の今回は,
「医師国家試験の不合格者の内訳は?」
というテーマでお届けします.

今回のデータは,メディックメディアがメックと提携して行っている,
解答速報「TAKEOFF」(国試採点サービス)の結果をもとに分析しています.
※「TAKEOFF」とは,自分の選んだ解答をサイト上で入力すると,
約1週間後に弊社の模範解答をもとに作成した成績を閲覧できるサービスです.

皆さんからいただいた解答の情報から
「正答率の算出」や「不合格の原因分析」などを行っています.
それでは「TAKEOFF」のデータをもとに,
111回国試を分析していきましょう.

■必修落ちが増えた111回

国試採点サービス「TAKEOFF」,
今年はなんと,受験者数9,618名中6,044名の方が参加してくださいました!
(ありがとうございます!)
中でも500問すべての解答を入力してくださった4,638名の方のデータをもとに,
今回は不合格者の内訳について考えていきたいと思います.

では,その4,638名の合格率をみてみましょう.

実際の合格率よりも高いですが,これは「絶対に落ちた!」と確信している場合は,
「TAKEOFF」に参加しない人が多いからと考えられます.

では,不合格者の内訳を確認していきましょう.

前回(110回)と比較して,必修落ちが15.1%→55.6%と
かなり増加しているのがわかります.
ちなみに,必修問題の合格者・不合格者合わせた全体得点率ですが,
110回は90.0%だったのに対し,
111回では87.4%に低下していました.
このことからも必修問題の明らかな難化が伺えます.

一方,一般落ちは63.9%→41.9%,
臨床落ちは56.7%→42.2%と減少しています.
必修のみ落ちが多いことも合わせて考えると,
今年は一般・臨床問題より,
必修問題で合否が分かれた人が多かったようです.

■臨床実習で必修対策

111回医師国家試験は必修落ちが多い結果となりました.
正答率50~70%の合否をわけるような問題を確認してみましょう.
その中で多かったのは,臨床実習で習うような知識について問われている問題.
C13,F9,F29,H9,H14などは,
授業で取り扱われるような内容ではないものの,
実臨床では常識であるような知識が問われていました.

一例としてF9を見てみましょう.

【111F9】
動脈血ガス分析の採血について正しいのはどれか.
a 動脈の走行は目視で確認する.
b 穿刺針の太さは18Gを選択する.
c 穿刺針と皮膚との角度は15~20度を保つ.
d 採血シリンジはペンを握るように保持する.
e ピストンに十分な陰圧をかけながら採血する.

動脈血採血についての知識を問う問題で,
正解はd,正答率は必修問題としては低い66.0%でした.
救急やその他の実習で動脈血採血を見たことがなければ正解を選ぶことが難しく,
実習重視の国家試験となっていることがわかります.
動脈採血は学生のうちはやらせてもらえる機会は少ないかもしれませんが,
研修医になってから行う手技は必修問題で出題されやすいです
実習のときには研修医がやっている手技は確認しておくようにしましょう.

■病態生理も確認を

またその他の傾向として,病態生理を問われる問題も正答率が低かったようです.
C15やC21,H2,H8,H25などが挙げられます.
どのような病態でどのような症状が生じるのか理解を深めるようにしましょう.
一例としてC21をみてみましょう.

【111C21】
43歳の女性.歩行障害を主訴に来院した.小児期から走るのが遅く,すり足で歩いていたが,日常生活に支障はなかった.40歳ごろから階段を降りるのが難しくなってきたため来院した.患者の歩行姿勢の図を示す.

障害されている部位はどれか.
a 頭頂葉
b 小脳
c 脊髄側索
d 末梢神経
e 神経筋接合部

踏み出そうとしているのに左膝関節が曲がっていない,
踏み出した側の右下肢は内旋しているといったことなどから,
痙性歩行が示唆されます.
痙性は錐体路症状であるためcが正解となります.
この問題なんと,正答率は27.2%でした.
最も多く選ばれた選択肢はdで,52.3%の人が選んでいました.

dの選択肢を選んだ人に理由を聞いてみたところ,
Charcot-Marie-Tooth病(CMT)を思い浮かべたそうです.
しかし,CMTでは下垂足となるため膝を高く挙げる鶏歩と呼ばれる歩行を示します.
本問のようにすり足とはなりません.
病態生理の正確な理解が求められていることが分かる出題となりました.

111C21は必修除外の問題となりましたが,
リベンジ問題としてイラストや症例文に修正を加えて
今後の国試に出題される可能性があります.
(リベンジ問題については今後のメルマガでお話しする予定です.)

今回はここまで!
次回は「出題分野の割合」をみていきましょう.
お楽しみに!

(編集部A.M)

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