[分析]データでみる105回国試(その3) 画像問題編1
「データでみる国試」3回目からは,
いよいよ国試の問題の内容に迫っていきたいと思います.
◆画像問題の数と傾向は?◆
今回は,受験生の悩みの種,「画像問題」.
長文を頑張って読んでも,画像がわからないと答えが全くわからないし,
数も多いから,悩むとどんどん時間が無くなってしまうんですよね...
105回国試は,画像のある問題が113問,画像の総数は186点でした.
(カウントは弊社基準による)
グラフを見ると,画像総数はやや減ったものの
問題数は104回と同水準を保っています.
相変わらずボリューム満点です...
(ちなみに95~97回の全問題数は試行問題を含めて550問,98~100回は同じく530問だったので,全問題数が500問になった101回以降でガクッと下がったようにみえていますが,全体の問題数に差があることをご了承ください)
画像から診断や治療を選ばせるスタンダードな問題の他,
心電図の電極の位置やPEG(胃瘻)造設など,
手技や器具の問題も出ているので,
実習中にできるだけ検査や処置をみておくとよいでしょう.
また,画像上の解剖学的知識を求める問題も目立ちました.
画像問題は見たことがあるかどうかが勝負の分かれ道!
イヤーノートとセットになった『イヤーノート・アトラス』で
万全の画像対策をしましょう.
さて,ここからは,実際に出た問題を見ていきましょう.
画像問題を,いくつかの代表的な出題パターンにわけてご紹介します.
◆画像問題 診断編◆
画像を見て診断をつける問題です.
まずは,“画像→診断”タイプ.画像の読みが全てです.
105D7
乳房超音波写真を別に示す.
最も考えられる疾患はどれか.
a 嚢胞 b 乳癌 c 脂肪腫
d 線維腺 e 悪性リンパ腫
不整形腫瘍で境界不明瞭,微細石灰化,
不均一な腫瘍内部,低~等エコー,などから,
正解は「b 乳癌」となります.
次は応用タイプで,画像から組織所見を診断,
更にその病態・病歴が問われました.
105G24
腎生検PAM染色標本を別に示す.
患者の病歴として最も合致するのはどれか.
a 扁桃炎罹患2週後に乏尿となった男児
b 全身浮腫が数日の経過で出現した20歳台の男性
c 発熱,関節痛,顔面の紅斑および浮腫が出現した20歳台の女性
d 糖尿病腎症の治療中に浮腫が出現し増悪した60歳台の女性
e 浮腫と腎機能低下とが数ヵ月で進行した70歳台の男性
まず,腎生検PAM染色標本より,組織所見を,
管外増殖性糸球体腎炎(半月体形成性糸球体腎炎)と診断します.
次に,管外増殖性糸球体腎炎は,
臨床的には急速進行性腎炎症候群を呈することが多いことを踏まえて,
各選択肢を検討していきます.
a「溶連菌感染後の急性腎炎症候群」→管内増殖性糸球体腎炎
b「若年者のネフローゼ症候群」→微小変化型or巣状糸球体硬化症
c「ループス腎炎」→半月体形成性腎炎もありうるが,その場合は
他に免疫複合体の内皮下沈着,管内増殖病変を
同時に認めることが多い.
d「糖尿病性腎症によるネフローゼ症候群」→びまん性病変や結節性病変
というように,a~dは違いそうです.
そしてeは・・・まさに急速進行性腎炎症候群の病歴なので,
正解は「d 浮腫と腎機能低下とが数ヵ月で進行した70歳台の男性」
となります.
他に診断タイプとして多いものに,
『臨床所見と画像を合わせて診断をつける問題』があります.
こちらは問題が大変長いため,今回は割愛しますが,ごく簡単にまとめると,
105D25
(閉塞性黄疸,IgG高値,抗核抗体陽性)+(CTでびまん性膵腫大,ERCPで主膵管狭細像)=自己免疫性膵炎
というような問題です.
ちなみに自己免疫性膵炎は,104回でも出題されており,
注目されている疾患なので,ついでにチェックしておきましょう.
◆画像問題 治療編◆
次は,画像から診断をつけさせ,更に治療法を選択させる問題です.
まずは必修問題から.
105H26
32歳の女性.咽頭痛と呼吸困難とを主訴に来院した.昨夜から咽頭痛が出現し.強い嚥下痛のため食事がとれなくなった.今朝から呼吸困難を自覚し,その後,急激に増悪している.体温38.9℃.苦しくて横になれず,吸気時に強い喘鳴がある.喉頭内視鏡写真を別に示す.
まず行うのはどれか.
a 仰臥位安静
b 内視鏡的鉗子生検
c 抗ウイルス薬投与
d 輪状甲状軟骨間膜切開
e 経鼻経腸栄養チューブ挿入
これは国試頻出です!
『急性喉頭蓋炎による呼吸困難⇒すぐに気道確保』なので,
正解は「d 輪状甲状軟骨間膜切開」
生検は禁忌肢になる可能性が高いです.
最後に,少し難しい問題です.
105I47
62歳の女性.貧血を主訴に来院した.高血圧症の治療中,血液検査で貧血を指摘され,消化管の精査のために紹介された.意識は清明.身長168cm,体重57kg.体温36.4℃.脈拍72/分,整.血圧136/86mmHg.甲状腺と頸部リンパ節とを触知しない.心音と呼吸音とに異常を認めない.肝・脾を触知しない.尿所見:蛋白(-),糖(-).血液所見:赤血球302万,Hb 7.9g/dl,Ht 26%,白血球8,100,血小板15万.血液生化学所見:総蛋白6.6g/dl,アルブミン3.4g/dl,尿素窒素19mg/dl,クレアチニン0.5mg/dl,総ビリルビン1.8mg/dl,AST 26IU/l,ALT 34IU/l,LD 540IU/l(基準176~353),ALP 286IU/l(基準115~359),Na 138mEq/l,K 4.0mEq/l,Cl 102mEq/l.免疫学所見:CRP 0.8mg/dl,CEA 2.8ng/ml(基準5以下),CA19-9 26U/ml(基準37以下).上部消化管内視鏡検査で胃内に病変を認める.胸腹部CTでは胃の病変以外に異常を認めない.上部消化管内視鏡写真を別に示す.
治療として適切なのはどれか.
a 手術
b 動脈塞栓術
c 放射線治療
d ステント留置
e 抗癌化学療法
画像より,噴門部の進行胃癌(1型)であり,問題文から,
リンパ節転移・遠隔転移はなく胃に局在する病変だということがわかります.
全身状態や合併症など手術適応外になる条件は記載されていないので,
答えは,進行胃癌の標準治療「a 手術」です.
今回は実際に105回の問題をいくつかご紹介しましたが,
いかがだったでしょうか.
今日ご紹介した他にも,様々なタイプの問題があるので,
是非早めに『クエスチョン・バンク』で過去問をチェックしてみてくださいね.
それでは今日はこのへんで.
(編集部S)