[分析]データでみる105回国試(その6) 割れ問・難問編
105回国試,受験生の皆さんが悩んだのは
どんな問題だったのでしょうか?
メック&メディックメディアが行っている「採点サービス」.
ここで集計されたデータから,
正答率の低い問題,答えが割れた問題がわかります.
どんなポイントで受験生が迷いやすいのか,実際にみていきましょう.
*採点除外問題もご紹介しますが,マニアックなものは省略し,
臨床的で今後繰り返し出題される可能性のある問題を選んでいます.
D49 (採点除外)
4ヵ月の乳児.予防接種を受けた部位の変化を心配して来院した.3日前に左上腕にBCG接種を受けた.昨日から接種部位の発赤を認め,接種痕が膿疱様になってきたという.体温36.8℃.身体診察所見に異常を認めない.哺乳力や機嫌に変化はない.接種部位の写真を次に示す.
説明として適切なのはどれか.
a 「通常の反応であり,検査や処置は不要です」
b 「1週後にまた受診してください」
c 「黄色い膿を採取して顕微鏡で検査しましょう」
d 「黄色い膿を採取して培養検査をしましょう」
e 「ツベルクリン反応の検査をしましょう」
【解説】
答えは『e ツベルクリン反応の検査をしましょう』です.
受験生の選択率は
a 65.9% b 20.7% c 4.5% d 4.2% e 5.1%
でした.現時点では経過観察と考えた人が大半だったようです.
BCG接種の針跡は,普通は10日程たたないと見えてきません.
しかし既に結核に感染をしていると,
接種後すぐに接種部位が発赤,腫脹,膿疱状になることがあり,
これを「コッホ現象」といいます.
コッホ現象が認められた場合には,結核感染の有無を調べるため,
早期(一週間以内)にツベルクリン反応の検査を行う必要があります.
(時間が経つとBCGにより擬陽性になる可能性があるため)
写真の針跡の発赤があまりひどくないことに惑わされるかもしれませんが,
問題文中の「膿疱様」は,コッホ現象の特徴です.
平成17年からBCG接種前のツベルクリン反応検査が廃止になり,
また,最近結核の注目度も高まっているので,覚えておいてくださいね.
B38 (採点除外)
多剤耐性緑膿菌〈MDRP〉と判断するために,感受性試験で抵抗性を証明すべき抗菌薬はどれか.3つ選べ.
a ニューキノロン系 b カルバペネム系 c アミノ配糖体系
d ペニシリン系 e セフェム系
【解説】
答えは『a ニューキノロン系,b カルバペネム系,c アミノ配糖体系』です.
受験生の選択率は
a 53.7% b 52.3% c 57.2 d 59.3 e 77.2%
でした.
緑膿菌は本来抗菌薬が効きにくい菌種で,
有効な抗緑膿菌薬はニューキノロン系薬,カルバペネム系薬,
アミノ配糖体系薬などに限られますが,この3系統すべてに
耐性を示す緑膿菌が多剤耐性緑膿菌(MDRP)と定義されます.
今回は採点除外となりましたが,
院内感染症や多剤耐性菌については今後も出題が予想さます.
今回出題されたMDRPの他にも,
・MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)
・VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)
・PRSP(ペニシリン耐性肺炎球菌)
・多剤耐性アシネトバクター
など,代表的なものはチェックしておきましょう.
F26,27
次の文を読み,26,27の問いに答えよ.
4ヵ月の乳児.体重増加不良と発達遅延の疑いとを主訴に来院した.
現病歴:生後数時間から心雑音が聴取され,7㎜の欠損孔を有する心室中隔欠損症と診断された.生後2週から利尿薬を内服している.この1ヵ月の体重の増加は約300gであった.
発育・発達歴:在胎38週2日,3,240gで出生.追視は可能,頸定は十分でない.
既往歴・家族歴:特記すべきことはない.
現症:体動は活発.身長64.2㎝,体重4.8kg.体温37.1℃.呼吸数60/分.心拍数132/分,整.右肋骨弓下に肝を2.5㎝触知する.
検査所見:胸部X線写真を次に示す.
F26 正答率31.9%
この児に認められる所見はどれか.
a 陥没呼吸 b チアノーゼ c 眼瞼の浮腫
d 乾燥した皮膚 e 甲高い泣き声F27 正答率8.7%(不正解の場合採点除外)
この児の胸部聴診所見で認められるのはどれか.
a Ⅰ音の亢進 b Ⅱ音の減弱 c 連続性雑音
d 肺動脈駆出音 e 拡張期ランブル
【F26解説】
心不全を伴うVSDの乳児の臨床症状を問う問題です.
受験生の選択率は
a 31.9% b 22.8% c 21.7% d 18.4% e 5.2%
と,割れました.
胸部X線写真で著明な肺うっ血があり,呼吸数も多いため,
『a 陥没呼吸』が認められると考えられます.
左・右短絡なのでチアノーゼは原則的には認めず,
肝臓は腫大し右心不全も認めますが,
右心不全では,浮腫は眼瞼よりも下半身に起こりやすいです.
また,心不全による高度の体重増加不良を伴う例では
皮膚が乾燥する例もありますが,
一般には発汗過多により皮膚は湿潤している場合が多いです.
e は猫鳴き症候群の所見ですが,問題文中にそれを示唆する情報はありません.
【F27解説】
答えは『e 拡張期ランブル』です.
受験生の選択率は
a 5.2% b 9.4% c 16.5% d 60.2% e 8.7%
でした.
左室→右室のシャントにより右室からの駆出量が増加し,
肺動脈駆出音が聴こえると考えた人が多かったようです.
しかし,収縮期には全収縮期逆流性雑音が聴こえているはずですよね.
心室中隔欠損症(VSD)では,
肺血流増加により左房が拡大,左房圧も上昇し,
相対的僧帽弁狭窄による拡張期ランブルを認めます(Carey-Coombs雑音).
F26,F27は必修問題で,
内容もVSDとメジャーな疾患であったにもかかわらず,
多くの人が足元をすくわれる結果となりました.
F27の聴診所見については,
実は『year note』に青字で強調してありました.
なんとなくわかった気になっている,メジャーな疾患こそ,
もう一度きちんと勉強して,確実に得点できるようにしておきましょう.
D44 正答率23.9%
67歳の女性.3ヵ月前からの腹部膨満感を主訴に来院した.脈拍76/分,整.心音と呼吸音とに異常を認めない.腹部はやや膨隆し,右肋骨弓下に肝を3㎝,左肋骨弓下に脾を5㎝触知する.血液所見:赤血球360万,Hb 10.5g/dl,Ht 32%,白血球18,700(骨髄芽球1%,好中球58%,好酸球5%,好塩基球1%,単球5%,リンパ球30%,赤芽球4個/100白血球),血小板65万.末梢血塗抹標本で巨大血小板を認め,骨髄穿刺はdry tapであった.骨髄の生検組織のH-E染色標本と鍍銀染色標本とを次に示す.
適切な対応はどれか.
a 自家骨髄移植
b 抗癌化学療法
c 無治療で経過観察
d エリスロポエチン投与
e 副腎皮質ステロイド投与
【解説】
原発性骨髄線維症の治療方針についての問題です.
答えは『c 無治療で経過観察』で,
受験生の選択率は
a 22.2% b 35.9% c 23.9% d 1.7% e 16.3%
でした.
原発性骨髄線維症に対しては,
予後を改善する標準的治療法は確立されておらず,
同種造血幹細胞移植が唯一の根治的治療法です.
実際の臨床では,予後因子や重症度分類,
臨床症状(貧血や腹部症状)によって,
経過観察,抗腫瘍薬,脾摘,ステロイド投与,
造血幹細胞移植など治療法を選択しています.
詳しくは割愛しますが,この症例は,低リスク群の可能性が高く,
また症状も腹部膨満感のみであるので,経過観察です.
105回国試では,このような専門的な問題が他にも何問か出題されました.
難しいですね・・・
——
さて,これで「データでみる105回国試」シリーズ全6回が終了しました.
これから国試を受ける皆さんは,
国試についてなんとなくイメージを掴めたでしょうか?
国家試験については,6月下旬に発行される無料情報誌
『INFORMA vol.41 夏号』でも詳しく特集しているので,
そちらも是非参考にしてくださいね.
106回受験生の皆さんは,
これからマッチングに勉強に,多忙な日々が始まると思います.
不安になることもあるかもしれませんが,
国試は大学受験のように「落とすための難関試験」ではなく,
「みんなが解ける問題を解ければ合格する試験」です.
105回国試の分析をふまえて,
恐れずに,これから一歩一歩レベルアップしていきましょう.
応援しています!
(編集部S)