診察ができる vol.1 身体診察
[6年生向け]Post-CC OSCE【体験記】問診で攻略するPCC OSCE
今回は,6年時の実技試験「Post-CC OSCE(PCC OSCE)」の体験記をお届けします!
問診で攻略するPCC OSCE
(T大学 T.Kさん)
●問診の型を決める
Post-CC OSCEは時間的にシビアな面もあり,ある程度自分の中で型を決めておくことが効果的です.特に問診では,うまく焦点を絞れず多くのことを聞いてしまい,タイムオーバーになりがちです.私の場合,以下の点に注意して,問診を6~7分に収める練習をしました.
1. 症候ごとに緊急疾患を軸として,疾患をスムーズに浮かべる訓練をする
2. 主訴を基にOPQRST+「かきくけこ,さしすせそ」+解釈モデルを聴取する
3. 攻める問診を意識する
1.症候ごとに緊急疾患を軸として,疾患をスムーズに浮かべる訓練をする
公式資料(臨床研修開始時に必要とされる技能と態度に関する学修・評価項目)や同級生と作成した資料を用いて,学習しました.症候ごとに緊急性の高い疾患を中心に学習することがコツです.
胸痛を例にすると,緊急疾患である5 killer chest pain(急性冠症候群,大動脈解離,肺塞栓,緊張性気胸,食道破裂)に加え,心膜炎・胸膜炎や帯状疱疹があることを確認しました.
このように,症候ごとに鑑別が4~5つは挙げられるよう覚えておくとよいと思います.
2.主訴を基にOPQRST+「かきくけこ,さしすせそ」+解釈モデルを聴取する
まずは有名な「OPQRST」で症状の問診を進めることを,自分の中の型として定着させました.
O:onset(発症様式)
P:provocative/palliative(増悪・寛解因子)
Q:quality/quantity(症状の性質・ひどさ)
R:region/radiation(部位,放散痛)
S:associated symptoms(随伴症状)
T:time course(時間経過)
加えて既往歴・家族歴,酒タバコなど生活歴の聴取を行います.私の場合,「かきくけこ,さしすせそ」の語呂合わせで覚えていました.聞き漏らしのない語呂合わせがあると安心感があり効果的です.
か:家族歴
き:既往歴
く:薬,アレルギー
け:健康診断
こ:海外渡航歴
さ:酒タバコ
し:職業,食事・水分
す:睡眠
せ:性活動
そ:その他(排便・排尿など)
また患者さんに,問診中に言い忘れたことがないかや,ご自身の解釈モデルも聞き忘れないようにしましょう.ここで思いがけない情報が得られる場合もあります.
3.攻める問診を意識する
「攻める問診」という表現は,山中克郎先生の『わいわい診断推論』で用いられていたもので,あやしい疾患が思い浮かんだら,その疾患に特徴的な事項に焦点を当てて問診するテクニックのことです.これは,時間の限られた試験本番でも役立ちました.
例えば胸痛では「痛い場所を指差すことができますか(ピンポイントの痛みであれば急性冠症候群の可能性が下がり,筋骨格系の痛みの可能性が上がる)」と聞いてみる,腹痛では食中毒を想定して食事歴を入念に聞いてみる,などです.
●本番を想定したロールプレイを
実際に経験してみて,最も効果的だったと感じたのは同級生同士でのロールプレイの繰り返しです.本番で焦らないためにも,試験を想定した練習は非常に効果的です.また意外と一人で勉強していると気がつかないことが多くあるため,お互い教えあって対策することが大切です.さらにロールプレイで扱った症候は印象に残りやすいので,鑑別疾患を覚える際にも非常に有効でした.
他にも4年時のPre-CC OSCEの際に練習した身体診察も忘れてしまっている内容が多かったため,お互い練習することで良い復習になりました.身体診察の復習には『診察と手技がみえる』を活用しました.一通りの手技を図解付きでスムーズに復習できるため,問診に練習時間を使いたい中で非常に役立ちました.
●Post-CC OSCEを終えて
「鑑別の8割は問診で決まる」と言われますが,実際に試験を受け,やはり問診で必要な情報を聴取できるかが大きなウェイトを占めていると感じました.時間的制約の多い試験ですが,自分なりの流れを作ることができれば,本番で焦ることも少なくなります.繰り返し練習することで身につけてみてください.
体験記はいかがでしたか?
効率のよい勉強法で鑑別診断の基礎を習得し,来年の今頃は研修医として活躍しましょう.
T.Kさん,貴重な体験記をありがとうございました!
なお,この方は緊急疾患を挙げるのに同級生と作成した資料を使用されたとのことですが,『鑑別!1st impression』にも,緊急処置の必要な疾患,見逃してはいけない疾患,Commonな疾患がまとまっています.
近日中にこちらの体験記も配信予定ですので,お楽しみに!
(編集部N)