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新ワード紹介(4)可逆性後頭葉白質脳症〈PRES〉【令和6年版 医師国家試験出題基準】

令和6年版医師国家試験出題基準(118回国試より適用)から,新しくガイドラインに加わったキーワードを紹介していくこの企画.今回は可逆性後頭葉白質脳症〈PRES〉についてご紹介いたします.

目次

出題基準のどこに追加されたの?

医学各論>I 先天異常・周産期の異常,成長・発達の異常>1 妊娠の異常 に追加されました.

可逆性後頭葉白質脳症〈PRES〉とは?

可逆性後頭葉白質脳症〈PRES〉とは,頭痛,痙攣,嘔吐,視力障害,神経障害などの症状を呈し,頭部CT/MRIにて後頭葉を中心に可逆性の浮腫状変化を認める疾患です.妊婦にも多く見られ,特に子癇や妊娠高血圧腎症に関連していることがわかっております(妊娠高血圧症候群のガイドラインでも明記されています).

PRESは子癇以外に高血圧性脳症,免疫抑制剤の使用,自己免疫性疾患,悪性腫瘍などでも認めますが,子癇患者ではほぼ必発です.子癇の病態は,急性高血圧による脳灌流圧増加の結果,脳血流自動調整能が破綻して血管原生浮腫が起こりますが,血圧が低下すると血管原生浮腫は消失します.ただ,高度血管原生脳浮腫は高血圧が持続すれば脳虚血となり細胞障害性脳浮腫や脳梗塞を発症する可能性があり,両者の混在型も存在します.脳梗塞へと悪化し後遺症を残すこともあるため,早期診断・早期治療が重要です.特異的な治療は現在ありませんが,原因の除去と痙攣のコントロール,血圧管理が有効とされています.

出題基準に追加された背景は?

1996年に提唱されたばかりの疾患であり,妊娠高血圧症候群のガイドラインでは子癇の項目で取り上げられています.近年産婦人科領域で症例報告がなされてきていること,上述のガイドラインにも明記されていることから,今回出題基準に追加されたと考えられます.

過去問での出題状況は?

新出題基準の発表があって最初の国試である118回国試での出題はありませんでした.

ですが,115D16の症例問題〔28歳の女性(1妊0産)〕で一度出題がありました.子癇発作を認め,まさに上述の臨床的背景と合致する問題でした.

これは是非問題を確認しておきたいですね.

確認問題を解いてみよう!

Q.可逆性後頭葉白質脳症の診断に最も有用な検査として正しいものはどれか.

a 視野検査
b 胸部X線
c 18F-FDG PET/CT検査
d 頭部MRA
e 頭部MRI

A.答えは記事の最下部にあります!


いかがでしたでしょうか.次回の連載もお楽しみに!

※監修:小岩 由紀子先生(鎌ヶ谷バースクリニック)

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確認問題の答え:e

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