イヤーノート2025 内科・外科編
新ワード紹介(6)脳脊髄液減少症【令和6年版 医師国家試験出題基準】
令和6年版医師国家試験出題基準(118回国試より適用)から,新しくガイドラインに加わったキーワードを紹介していくこの企画.今回は脳脊髄液減少症についてご紹介します.
目次
出題基準のどこに追加されたの?
各論Ⅸ10A⑧に髄液漏に併記される形で追加されました.
脳脊髄液減少症とは?
脳脊髄液減少症はその名の通り脳脊髄液の減少した状態になり,頭痛をはじめとする様々な症状を認める疾患です.脳脊髄液減少の主な原因は「脳脊髄液の漏出」で,それも外傷性(交通事故など)・医原性(脊椎手術など)・特発性と多岐にわたります.
主な症状として,頭痛,頸部痛,めまい,耳鳴,視機能障害,倦怠感が挙げられます.起立位や座位で増悪することが特徴といわれ,連日症状を認めることが多いです.
また,炎症によるものではないため,市販の消炎鎮痛薬による症状改善はみられません.
脳脊髄液の量を直接評価することは困難であるため,検査は「脳脊髄液が漏れ出ている様子(脳脊髄液漏出症)」や「髄液圧が低下している様子(低髄液圧症)」を確認するために行われます.
脳脊髄液漏出症 | 低髄液圧症 | |
画像検査 | 脳槽・脊髄液腔シンチグラフィ MRミエログラフィ | 頭部MRI |
画像以外の検査 | - | 髄液圧測定 硬膜外生理食塩水注入試験 |
出題基準に追加された背景は?
2016年に脳脊髄液漏出症に対しブラッドパッチ療法が保険適用となり,2021年には脳脊髄液漏出症学会が設立するなど,治療や病態の研究が進むことが期待されています.
過去問での出題状況は?
最新の118回国試を含め,これまでに「脳脊髄液減少症」という疾患が国試で登場したことはありません.
確認問題を解いてみよう!
Q.脳脊髄液減少症の患者の訴えとして考えにくいのはどれか.
a 「体のだるい感じがあります」
b 「毎日のように頭痛がします」
c 「ふらふらとしためまいがあります」
d 「痛み止めを飲んでも頭痛にあまり効かないです」
e 「横になっていると次第に症状がひどくなります」
A.答えは記事の最下部にあります!
いかがでしたか?それでは,次回の連載もお楽しみに!
※監修:《柴尾 俊輔先生(足利赤十字病院 脳神経外科)》
連載バックナンバー
令和6年版医師国家試験出題基準 変更のポイントは?
新ワード紹介(1)喘息COPDオーバーラップ〈ACO〉
新ワード紹介(2)遺伝性乳癌卵巣癌症候群
新ワード紹介(3)アミロイド苔癬
新ワード紹介(4)可逆性後頭葉白質脳症〈PRES〉
新ワード紹介(5)周産期心筋症
新ワード紹介(6)脳脊髄液減少症
新ワード紹介(7)微小血管減圧術
新ワード紹介(8)血清シスタチンC
新ワード紹介(9)体軸性脊椎関節炎,強直性脊椎炎
新ワード紹介(10)先天性補体欠損
新ワード紹介(11)抗合成酵素症候群
新ワード紹介(12)免疫介在性壊死性筋症
新ワード紹介(13)発熱性好中球減少症
新ワード紹介(14)マクロファージ活性化症候群〈MAS〉
新ワード紹介(15)ヘパリン起因性血小板減少症〈HIT〉
新ワード紹介(16)抗第Ⅷ因子インヒビター
新ワード紹介(17)双極Ⅰ型障害,双極Ⅱ型障害
新ワード紹介(18)広場恐怖症
新ワード紹介(19)身体醜形症
新ワード紹介(20)睡眠時遊行症
新ワード紹介(21)場面緘黙
新ワード紹介(22)毛細血管拡張症〈angioectasia〉
新ワード紹介(23)アデレード宣言
新ワード紹介(24)ヒルの基準(関連強固性,時間性,一貫性,整合性,量反応関係,生物学的妥当性など)
新ワード紹介(25)mRNAワクチン
新ワード紹介(26)患者・市民参画
新ワード紹介(27)心臓震盪
確認問題の答え:e
(脳脊髄液減少症では起立位や座位で症状が出現・増悪するのが特徴です.急性の起立性頭痛に対しては臥位での安静を指示しましょう)