国試

新ワード紹介(7)微小血管減圧術【令和6年版 医師国家試験出題基準】

令和6年版医師国家試験出題基準(118回国試より適用)から,新しくガイドラインに加わったキーワードを紹介していくこの企画.今回は微小血管減圧術についてご紹介します.

目次

出題基準のどこに追加されたの?

各論Ⅲ8C②「三叉神経痛」と⑧「顔面けいれん、眼瞼けいれん」の備考欄に追加されました.

微小血管減圧術とは?

頭蓋内血管による脳神経の圧迫で起こる神経症状を神経血管圧迫症候群と呼びます.また,この血管を移動させることで脳神経の圧迫を解除する術式が,今回紹介する新ワードの微小血管減圧術です.

神経血管圧迫症候群の主なものとして三叉神経痛と顔面けいれんが挙げられます.

また,今回の医師国試出題基準の改訂で微小血管減圧術は,独立した項目としてではなく,下記2項目の備考として追加されました.

・各論Ⅲ8C② 三叉神経痛

・各論Ⅲ8C⑧ 顔面けいれん,眼瞼けいれん

そのため,今回は微小血管減圧術の適応疾患の中でも,三叉神経痛・顔面けいれんに絞ってお話できればと思います.

 圧迫する血管圧迫される脳神経
三叉神経痛上小脳動脈三叉神経
(片側)顔面けいれん前下小脳動脈顔面神経

三叉神経痛の場合,脳槽部やREZ(root exit zone,脳幹部から分枝する根元の部分)での神経圧迫が原因であれば,微小血管減圧術による減圧が期待できます.
顔面けいれんは,原因となる神経圧迫の部位がREZであることが多く,こちらも同様に微小血管減圧術が有効です.

脳神経がREZで圧迫されている場合には,微小血管減圧術で脳幹部にアプローチすることになります.その際には,対象となる脳神経だけでなく,その近傍で脳幹から分枝する脳神経に関係する術後合併症を認めることがあります(難聴や嚥下障害など).
もちろん他の開頭術と同様に出血や感染などの合併症についても,十分な説明やケアが必要です.

出題基準に追加された背景は?

微小血管減圧術は三叉神経痛,顔面けいれんに対して行われる手術ですが,近年,内視鏡を併用することでより低侵襲で確実な減圧手術が可能となってきています.
また,術中モニタリングを導入することで術後の脳神経合併症を軽減できます.特にABR(auditory brainstem response:聴性脳幹反応)は術後聴力障害の軽減に寄与しています.

こういった背景もあり,医師国試出題基準に追加されたのだろうと考えられます.

過去問での出題状況は?

神経血管圧迫症候群に該当する疾患を選ばせる.という問題が,114A10で出題されています.

正答率は77.1%.
微小血管減圧術が有効な疾患を理解する上で有用な問題ですので,ぜひ一度演習しておきましょう.

確認問題を解いてみよう!

Q.微小血管減圧術の適応となるのはどれか.2つ選べ

a 片頭痛
b 三叉神経痛
c 動眼神経麻痺
d 顔面けいれん
e 内頸動脈海綿静脈洞瘻

A.答えは記事の最下部にあります!


いかがでしたか?それでは,次回の連載もお楽しみに!

※執筆:《柴尾 俊輔先生(足利赤十字病院 脳神経外科)》

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