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新ワード紹介(19)身体醜形症【令和6年版 医師国家試験出題基準】

令和6年版医師国家試験出題基準(118回国試より適用)から,新しくガイドラインに加わったキーワードを紹介していくこの企画.今回は《身体醜形症(しんたいしゅうけいしょう)》についてご紹介いたします.

目次

出題基準のどこに追加されたの?

医学各論Ⅱ-3「不安症,ストレス関連症,身体的苦痛症,または身体的体験症」のB強迫性障害〈強迫症〉の中に追加されました.

身体醜形症》とは?

身体醜形症について説明する前に,同じ疾患群に含まれる強迫症について解説します.

強迫症は,特定の物事や状況に対して繰り返し生じる不適切な思考(強迫観念)と,その不安と恐怖を打ち消すための繰り返しの行動(強迫行為)から構成され,日常生活に支障をきたす疾患です.

強迫症をはじめとする,強迫的な行動様式が病態の中心となる疾患群を強迫症群といい,この中に身体醜形症も含まれています.

ではいよいよ,身体醜形症についてです.身体醜形症の患者は,身体上の外見において知覚される欠点にとらわれています.患者は自身の外見が醜く,異常で,歪んだものと感じています.皮膚(目鼻立ち,にきびなど),毛(薄毛,濃い体毛),鼻などがよく気になる対象となりますが,身体ならどこでもあり得ます.

このとらわれによる不安や恐怖を打ち消すために,外見を他人と比較したり,鏡で確認したり,気になる部分をマスクや帽子などで隠したり,化粧に時間をかけたり,他人に確認したりという行為を繰り返します.

こういったとらわれや繰り返し行為に時間がとられて,学校や仕事に行けない家に引きこもるなど,日常生活への支障が生じてしまいます.また,自殺リスクも高いため注意が必要です.

なお,患者自身が感じている欠点というのは,実際は他人には認識できないか,できても気にならない程度のものです.

また,患者によって欠点への確信度合いは異なります.「自分は欠点と思っているけどもしかしたらこの認識は正しくないかも…」と思っている人もいれば(病識が十分),「絶対に正しい認識だ!」と思っている人もいます(病識が欠如して,妄想的な信念を伴う).

本疾患は女性にやや多く,患者の2/3は18歳までに発症するといわれています.さらに,美容形成手術との関わりも深く,美容手術を受ける7〜8%に身体醜形症があるだろうと見積もられています.

治療としてはSSRIなどの薬物療法や,認知行動療法が実施されることがあります.

出題基準に追加された背景は?

身体醜形症はもともと疾患として確立されておらず,ICD-10においてはその確信度の強さによって,持続性妄想性障害の一つ(妄想性醜形恐怖),または心気障害の一つ(醜形恐怖)に振り分けられていました.しかし,ICD-11(2019年WHO承認)においては強迫症または関連症群の中の一つの疾患として身体醜形症が独立しました.

また,ICD-11の身体醜形症の診断基準は,主要な診断基準であるDSM-5(疾患名は醜形恐怖症/身体醜形障害で,ICD-11と同じく一つの疾患として独立している)とほぼ同じです.このように,疾患概念が確立してきたことを受けて,出題基準にも追加されたと考えられます.

過去問での出題状況は?

新出題基準が適用された118回での出題こそなかったものの,過去には一問出題されています.

【100F5】

30歳の女性.昨年第一子出産後,赤ん坊に汚れが付いてはいけないと過剰に考えるようになった.外出から帰ってくるとすぐ衣類を着替え洗濯し,家の中の全てを毎朝消毒しないと気がすまないようになってきた.

最も考えられるのはどれか.

a 適応障害

b 強迫性障害

c 解離性障害

d 社会不安障害

e 身体醜形障害

※選択肢の疾患名は全て当時のままのものを記載しています.

この問題の解答はb 強迫性障害で身体醜形症は誤選択肢の一つです.

出題基準に明記されたことで,今後は誤選択肢の中に含まれるだけでなく,身体醜形症自体について問われる可能性もあります.しっかり勉強しましょう!

確認問題を解いてみよう!

Q.身体醜形症について正しいものを3つ選べ.

a 成人以降の発症が多い.
b 欠点とされる部位は,顔や頭が多い.
c 患者がとらわれている欠点は,他者が見ても非常に気になる点である.
d 引きこもりの原因になりうる.
e 認知行動療法が有効である.

A.答えは記事の最下部にあります!


いかがでしたでしょうか.次回の連載もお楽しみに!

※監修:三木 祐介(谷町みきこころの診療所)

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確認問題の答え:b,d,e

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