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新ワード紹介(20)睡眠時遊行症【令和6年版 医師国家試験出題基準】

令和6年版医師国家試験出題基準(118回国試より適用)から,新しくガイドラインに加わったキーワードを紹介していくこの企画.今回は《睡眠時遊行症》についてご紹介いたします.

目次

出題基準のどこに追加されたの?

Ⅱ 精神・心身医学的疾患の4 生理的障害、身体的要因に関連した障害,B 睡眠-覚醒障害の項目として追加されました.

睡眠時遊行症》とは?

ノンレム睡眠期(特に入眠してから2~3時間後,最初の1/3の間の,比較的深いノンレム睡眠期)に起き上がり,歩き回る,トイレに行く,独り言を言う,食事を摂るなどの異常行動を特徴とする疾患です.異常行動の間は,周囲の人間に話しかけられても上の空で,異常行動をやめさせようとすると暴れる場合もあります.数分間すると再び眠りに入り,翌朝起床後には健忘を生じており異常行動のことを忘れています.

睡眠時遊行症は,同じくノンレム睡眠期に突然悲鳴を上げて起き上がり,おびえた様子や交感神経系の亢進を見せる睡眠時驚愕症(夜驚症)と併存することが多いため,同じ病態により生じると考えられています.

また,小児期に好発することも特徴です.多くの場合は成長に従って自然に症状が消失するため,積極的な治療は必要としないことが多いです.

ちなみに,「睡眠中に動く」ことが特徴的な疾患としては,他にレム睡眠行動障害がありますね.睡眠時遊行症や睡眠時驚愕症は小児に好発し,ノンレム睡眠期に症状が出現するのに対して,レム睡眠行動障害は高齢者に好発し,レム睡眠期に症状が出現します.レビー小体型認知症に先行することが多いという点でも重要な睡眠障害なので確認しておきましょう!

出題基準に追加された背景は?

睡眠時遊行症は,ICD-10では「睡眠時遊行症(夢中遊行症[夢遊病])」と複数の名称が併記され,平成30年度版医師国家試験出題基準には「夢中遊行症」という名称で掲載されていました.ここまで読んでくださった皆さんは,この名称に違和感を覚えませんか?

「夢」を見る体験が生じるのは一般的にはレム睡眠期です.

一方で,睡眠時遊行症の異常行動が出現するのは,ノンレム睡眠期でしたね.

つまり,「夢中遊行症」や「夢遊病」という名称は,睡眠時遊行症の特徴を誤解させてしまう可能性があるのです.ちなみに,英語ではsleepwalkingといいます.

現在(2023年6月8日時点)発表されているICD-11の仮訳では「睡眠時遊行症」のみ記載されており,令和6年版医師国家試験出題基準でも「夢中遊行症」から「睡眠時遊行症」へと疾患名が変更されました.

過去問での出題状況は?

新出題基準が適用された118回では,早速118A47で選択肢に「睡眠時遊行症」が登場し,レム睡眠行動異常を睡眠時遊行症と鑑別できるかが問われています.

▲118A47,正解はe

また,過去に出題された,症状から睡眠時遊行症を想起できるかと問う問題として,109I44があります.

▲109I44,正解はc

他にも,第100回以降の問題には,「入眠後2~3時間」がノンレム睡眠期にあたることを理解していないと解けない106I25や,誤答選択肢として夢中遊行症(睡眠時遊行症)が登場する104A58があります.しっかり復習しておきましょう!

確認問題を解いてみよう!

Q.睡眠時遊行症について,正しいものはどれか.

a 異常行動は,ノンレム睡眠期に出現する.
b 高齢者に好発する.
c 下肢に虫が這うような不快感が特徴である.
d 入眠時に幻覚を伴う.
e Lewy小体型認知症に先行することがある.

A.答えは記事の最下部にあります!


いかがでしたでしょうか.次回の連載もお楽しみに!

※監修:三木 祐介(谷町みきこころの診療所)

【参考文献】

https://journal.jspn.or.jp/Disp?style=ofull&vol=124&year=2022&mag=0&number=3&start=192

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確認問題の答え:a

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