[分析]データでみる106回国試(その3)臨床問題編
こんにちは☆編集部のS藤です.
前回の,データでみる国試(その2)一般問題編に引き続き,
今回は,『臨床問題』について,お伝えしていきます.
データでみる106回国試(その2)一般問題編はこちら↓
http://web-informa.com/kokushi/data/20120418/
◆臨床問題とは◆
ある症例について年齢,性別,現病歴,身体所見,検査所見,画像などが呈示され,それらを解釈して解答する問題です.
一般問題では,ある事柄についての知識の有無を問うているのに対し,
臨床問題では,知識に加えて,
ある症例について実際に診察・検査を行い,診断,治療を選択するための,
臨床医的な思考回路を求められます.
解答として何が問われるか,
おおまかに分けると以下のような問題が出題されています.
・診断を答える問題
・考えられる病態を答える問題
・予想される所見を答える問題
・予想される合併症(医原性も含む)を答える問題
・適切な検査を答える問題
・適切な治療・対応を答える問題
上記のように,様々な切り口から問われる臨床問題を攻略するためには,
どうしたら良いでしょうか.
まだ臨床実習の期間が残っている科については,
・初診の患者さんの,病歴や身体所見の把握
・必要な検査をオーダーし,得られた情報をもとに診断
・治療を開始し,効果判定,経過に応じた対応を行う
などの全ての段階について,意識して実習に取り組んで下さい.
流れを肌で感じることで,知らず知らずに基礎的な思考回路が身につき,
臨床問題に対する抵抗感がなくなります.
そして,実際の解答力をつけていくためには,
問題演習を反復することが,最も重要です.
◆画像問題対策は充分に◆
臨床問題では,毎年多くの画像問題が出題されています.
106回では,(必修問題を除く)
臨床問題200問のうち49問が,別冊に画像掲示のある問題でした.
実際に問題を見てみましょう.
106E45
78歳の男性.全身麻酔で冠動脈バイパス術を受けた.手術終了後,未覚醒の
状態で,人工呼吸管理下にある.心拍数92/分,整.血圧132/72mmHg.
動脈血ガス分析(100%酸素投与下):pH7.30,PaCO2 53Torr,
PaO2 270Torr,HCO3- 22mEq/l.
術前と術後の胸部エックス線写真(別冊No.5 A,B)を別に示す.術後の病態として最も考えられるのはどれか.
a 気胸
b 胸水
c 無気肺
d 肺塞栓
e 縦隔血腫
【解説】
答えは『c 無気肺』で,正答率は78.8%でした.
決めては典型的な無気肺のエックス線写真でしたが,
11.5%の人が縦隔血腫を選んでいます.
画像問題は,臨床経験の少ない学生さんには難しく,
苦手意識を持ちやすい部分です.
早いうちから,勉強に画像対策を取り入れて,画像慣れをしておくことが重要です.
『year nore ATLAS』は,メジャー科,マイナー科,産婦人科疾患の,
典型的な画像が1冊で確認できるので,オススメです!!
◆新傾向問題に要注意◆
最近の国試では,
「即戦力となる初期研修医を育成したい」との目的から,
初期研修医が対応するであろう,プライマリケアを主題とした問題や,
臨床実習での経験を問うような問題が多く出題されています.
ここ何年か,「現時点での対応」を問う問題が多くみられていましたが,
106回の長文問題では,さらに実践的な,新しいタイプの問題が出題されました.
106D65~D37
次の文を読み,65~67の問いに答えよ.
75歳の男性.重症肺炎で入院中である.
現病歴:2週前に肺炎と低酸素血症のため搬入された.救急室で気管挿管を施
行され,集中治療室に入院となった.
既往歴:53歳から糖尿病で内服加療中.60歳から高血圧症で内服加療中.
生活歴:長男夫婦と同居.妻が5年前に脳梗塞のため死亡.
家族歴:父親が糖尿病.
65
入院後,人工呼吸器管理が長期にわたったため,本日気管切開術を行い,
引き続き人工呼吸管理を行った.1時間後にアラームが鳴ったため駆けつ
けると,人工呼吸器のモニターで気道内圧が上昇しており,患者の頸静
脈は怒張していた.
この時点で考えるべき病態はどれか.2つ選べ.
a 気道閉塞
b 緊張性気胸
c 肺血栓塞栓症
d 急性心筋梗塞
e 心タンポナーデ
66
直ちに気管内を吸引したところ,少量の白色痰が認められた.10分後,血圧が
78/42mmHgに低下した.左前胸部で呼吸音を聴取しない.
現時点で認められる可能性が高い所見はどれか.
a 心膜摩擦音
b wheezes
c 左胸部の鼓音
d 腹部の膨隆
e 下腿の浮腫
67
心電図モニター波形上,心拍数42/分.頸動脈の拍動を触知しない.
直ちに行うべき治療として適切なのはどれか.2つ選べ.
a 心嚢穿刺
b 胸骨圧迫
c 胸腔穿刺
d ヘパリンの投与
e リドカインの投与
【解説】
答えと正答率は,
65:『a 気道閉塞』,『b 緊張性気胸』,正答率59.4%
66:『c 左胸部の鼓音』,正答率93.8%
67:『b 胸骨圧迫』,『c 胸腔穿刺』,正答率80.3%
今までの長文問題(3連問)では,ある症例について,
設問1:検査を問う,設問2:治療を問う,設問3:合併症を問う
というような形式がほとんどで,
106D65~D67のように,短期間での時間の経過に沿った出題はありませんでした.
初期研修医にとして働きはじめたら,まさにこんな状況が起こるかもしれない,
と思うような問題ですよね.
特に難問!というわけではありませんが,
このような傾向の問題が出るかもしれない,ということを,
意識して勉強しておくと良いと思います.
以上,『臨床問題』についてお伝えしてきましたが,いかがでしたか.
次回は,『必修問題』について,せまっていきたいと思います.
お楽しみに!
(編集部S)