[分析]データでみる106回国試(その4)必修問題編
こんにちは♪編集部のS藤です.
一般問題,臨床問題に引き続き,
今回は,『必修問題』について,お伝えしていきます.
◆必修問題とは◆
平成21年度版医師国家試験出題基準(ガイドライン)には,
必修問題について
・プライマリ・ケアを主題とする出題であり,
聴診器,血圧計等を用いて,口頭や通常の身体診察で行える内容を原則とする.
・また,多科にまたがるような基本的な問題を出題する.
と書かれています.
この文面を見る限りでは,なんだか簡単そうな感じがしますね.
でも実は例年,国家試験の不合格の主要な原因として,
“必修落ち”があり,国試の鬼門として恐れられているんです.
◆3つの特徴◆
必修問題が国試の鬼門といわれる理由は,ズバリ!次の3つです.
1.合格基準は絶対基準で8割
2.普段あまり勉強しないテーマの出題
3.独特の出題傾向~モヤっとする問題が多い~
106回のデータと照らしあわせながら,一つずつみていきましょう.
1.合格基準は絶対基準で8割
106回国試の必修問題は,
一般問題形式50問,臨床問題形式が50問(うち2連問×9)で,
合計200点,合格基準は絶対基準で80.0%,
必修除外の扱い(不正解の場合,採点対象とされない問題)となった問題はありませんでした.
難易度は,例年に比べ平易な問題が多いとの声が多く聞かれました.
ただし,臨床問題は1問3点なので,
2連問を1つ落としてしまうとマイナス6点と失点が大きく,
2連問のテーマに苦手分野があった人は焦ったようです.
許される失点がマイナス40点までと考えると,油断できませんよね.
2.普段あまり勉強しないテーマの出題
必修問題のガイドラインには,医療面接,終末期ケア,一般教養など,
普段は勉強する機会の少ない項目が並んでいます.
また,“多科にまたがるような基本的な問題”ということで,
診察や検査,治療の手技,ライフステージに伴う変化,生活指導など,
医療についてありとあらゆる角度から知識が問われることが特徴です.
実際に問題を見てみましょう.
まずはライフステージについての問題↓
106H9
成人の歩行において,加齢に伴って増大するのはどれか.
a 歩幅(左右の足の着地点の縦幅)
b 歩隔(左右の足の着地点の横幅)
c 腕を振る角度の大きさ
d 踵を挙上する高さ
e つま先を挙上する高さ
【解説】
答えは『b 歩隔(左右の足の着地点の横幅)』で,正答率は94.1%でした.
お年寄りの歩き方をイメージすれば解ける問題ですが,
なかなか普段考えたことのない視点からの分析で,面白いですよね.
高齢化社会の流れを受け,
これからも高齢者についての問題が狙われることが予想されます.
加齢による身体機能の変化や,
公衆衛生では高齢者の虐待や社会的サポートについてなど,
チェックしておいて下さいね!
次に,身体診察についての問題↓
106F2
身体診察について誤っているのはどれか.
a 腎臓の触診は膝屈曲位で行う.
b 腎臓は呼気終末時に触知しやすい.
c 前立腺の直腸指診は示指で行う.
d 陰囊内腫瘤を認めたら透光性を調べる.
e 尿管結石を疑ったら背部の叩打痛を確認する.
【解説】
答え(誤っているの)は『b』で,正答率は82.3%でした.
腎臓は,吸気終末時には横隔膜に押し下げられるため,触知しやすくなります.
診察や手技については,
それぞれの目的や理由も合わせて覚えておくとよいでしょう.
次に,医学英語の問題↓
106C11
症候と英語表記の組み合わせで誤っているのはどれか.
a 黄疸・・・・・・jaundice
b けいれん・・・・convulsion
c 不整脈・・・・・anorexia
d 脱水・・・・・・dehydration
e 便秘・・・・・・constipation
【解説】
答え(誤っているの)は『c』で,正答率は77.0%でした.
不整脈はarrhythmiaで,anorexiaは食思不振です.
基本的な医学用語は,普段から意識してチェックしておきましょう!
ちなみに『イヤーノート』では,
疾患名や症候名の右横に,対応する英語が掲載されています!
重要な英語にはマーカーをひいて目立つようにしておくのがオススメです.
(私が受験生の時にやりましたが,病気について調べるたびに目につくので
効果的だったと思います.)
以上にお見せしたような,様々な切り口で問われる問題の対策は,
普通に各科の勉強をしたり,各科QBを解くだけでは難しいです.
必修の過去問題と予想問題のみを収録した『QB必修』や,
“必修的”な知識を凝縮した『RB必修・禁忌』で
必修に特化した勉強をまとめて行うことが,一番の近道です.
3.独特の出題傾向~モヤっとする問題が多い~
こちらはまず,問題を見てみましょう.
106F16
63歳の男性.咳と発熱とを主訴に来院した.黄色の痰も伴っている.5年前にアルコール性肝硬変とアルコール依存症との診断を受け,3回の入院歴がある.1人暮らしである.体温38.2℃,SpO2 93%(room air).左の全胸部と背部下方とにcoarse cracklesを聴取する.胸部X線写真で左下肺野に浸潤影を認める.肺炎と診断し,入院することになった.
これから収集する情報のうち,安全管理の観点から最も重要性が高いのはどれか.
a 職業歴
b 喫煙歴
c 家族歴
d 海外渡航歴
e 最終飲酒日時
【解説】
正解は,『e 最終飲酒日時』で,正答率は78.6%でした.
この問題についての感想を聴いてみると,
「安全管理の観点から」という設問の意味が,
わかりにくいと感じた人が多かったようです.
また,選択肢a~eは,全て入院時に聴取すべき重要な情報であり,
また多かれ少なかれ安全管理にも関係しそうなので,
最も重視すべきものは,と問われると,
「大事なことは複数あるのに,1つだけ選ぶ必要があるのか?」
とモヤモヤしてしまったそうです・・・
問題文の前半部分に,入院するほどのアルコール依存症の病歴が書いてあるため,
出題者の意図として,アルコールの離脱症状を問いたいのだと気付くことが重要です.
もう一問見てみましょう.
106H15
成人の口腔内を舌圧子とペンライトとを用いて診察する際,視認できるのはどれか.
a 喉頭蓋
b 甲状腺
c 舌小帯
d 咽頭扁桃
e 耳管咽頭口
【解説】
答えは『c 舌小帯』で,正答率は67.6%でした.
すごく基本的っぽい雰囲気の問題です・・・が,正答率が低めです.
出題者の意図としては,きっと
「喉頭鏡などを使わず,普通に口を開けただけで見えるものはな~に?」
という問題を作りたかったのだと思いますが,
正しい舌圧子の使い方を知っている受験生は,
「舌小帯を観察するのに,舌圧子を使うのは間違っているよね・・・
もしかして引っ掛け?」
と深読みしてしまいます.
dの咽頭扁桃を選んだ人が28.6%いましたが,
咽頭扁桃(アデノイド)は口から覗いても視認できません.
そう薄々思いつつも,
のどを見る時,舌圧子で舌を押さえることを考えて,もしかしたら・・・と,
咽頭扁桃を選んでしまった人も多かったでしょう・・・.
このように必修問題では,
絶対的な1つの答えがなかったり,
設問が曖昧で何を答えたらよいのかがわかりづらかったりと,
モヤモヤする問題が多いことが特徴で,
つい深読みをしてしまうと失点し,悔しい思いをすることが多いです.
攻略するためには,どうしたら良いのでしょうか.
こちらもやはり,必修問題をまとめて演習して,問題慣れをすることです.
問題演習を数多くこなすことにより,
・必修問題では,医療者としてどのような考え方が求められているのか
・どういう答えが正解であることが多いのか
・出題者の意図は何か
のパターンがつかめてきます.
また,
・正解となりそうな選択肢が複数ある場合でも,動揺せずベターな選択肢を選ぶ
・深読みせず,直感を重視してサクサク解く
という,必修問題を解く上で独特な技術が身についてきます.
ざっくり言ってしまうと,必修に多いモヤモヤ問題は,
“必修の空気”を読めるか,が攻略のポイントです.
空気が読めるようになるまで,練習して下さい!
以上,少し長くなってしまいましたが,
『必修問題』についての分析でした.
簡単そうにみえても,要注意!ということがお伝えできたでしょうか.
必修対策をするのは,もう少し先の話になるとは思いますが,
頭の片隅に,留めておいて下さいね!
次回は少し視点を変えて,
各診療科ごとの出題数や難易度を分析していきたいと思います.
お楽しみに☆
(編集部S)