[3~6年生向け]医師国試 新ガイドライン発表! 第14回:新ワード紹介(その11)
編集部Aです.
4年ぶりに改訂された「医師国家試験出題基準」に
新たに追加された用語を紹介しています.
今日は2つ.
『必修の基本的事項』の「検査の基本」に追加された『遺伝子関連検査』と,
『医学総論』の「IX 治療」「免疫療法」に追加された「抗体療法(生物学的製剤)」です.
◆遺伝子関連検査
遺伝子を調べれば病気が分かり,治療もできる.
この発想のもと,遺伝子検査は進歩し,普及してきました.
広がり続ける遺伝子検査を整理し,倫理的問題にも配慮するため,
日本医学会が2011年にガイドラインを発表しました.
その中で,遺伝子関連検査は,
1:ウイルス・細菌など感染症を起こす病原体を調べるもの
(病原体遺伝子検査)
2:がん組織などの疾患部位に限局した遺伝情報を調べるもの
(ヒト体細胞遺伝子検査)
3:遺伝子疾患,薬物などの効果を規定する遺伝子,個人識別に関わる遺伝学的検査などの一生保有する遺伝情報を調べるもの(ヒト遺伝学的検査)
の3つに分類されています.
遺伝子関連検査のメリットは,皆さんもすでにご存知だと思います.
病原体の核酸をPCRを用いて検出する方法は
培養による病原体の検出より迅速ですし,
肝炎ウイルスの核酸型を調べれば,インターフェロンの効果を予想できます.
がん組織を,病理検査だけで悪性度を決めるのではなく,
発現している遺伝子を調べることで,
予後の予測や,治療の選択(テーラーメイド医療)も可能になります.
生涯保有する遺伝情報には,
その遺伝子だけで病気になってしまうもの(単一遺伝子疾患)や,
例えば糖尿病になりやすい遺伝子などの疾患感受性遺伝子もあり,
これらを調べることで病気の早期発見や予防につながる可能性もあります.
ただし,これらの遺伝情報はいずれも重大な個人情報であり,
施行の際のインフォームドコンセントなど,十分な倫理的配慮が必要です.
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◆生物学的製剤
生物学的製剤は,生体内で合成される分子
(主に抗体.その他にサイトカイン,ホルモンなど)を臨床応用するために
遺伝子工学・細胞工学の知見と技術を用いて製造されています.
製造販売が承認された新薬のうち,生物学的製剤が占める割合は増加しており,
重要性は確実に高まっています.
例として,関節リウマチ,クローン病などに使用するインフリキシマブ,
がん治療に使用するトラスツマブ,ベバシツマブ,セツキシマブなどの抗体製剤や,
ホルモン製剤であるリコンビナントFSH製剤があります.
(ところで,抗体製剤の名前はやたらと「~マブ」が多いですが,
これはMonoclonal AntiBodyの“mab”です.)
生物学的製剤は,ほとんど全てが分子標的薬.
つまり,ターゲットにする分子を絞った上で開発されています.
このことからも,各疾患の病態生理,病因分子が
次々に明らかになってきた近年になって
活発に開発されていることがわかります.
ターゲットを絞ってつくられたものですので,
既存の薬にはない効果が期待され,
実際に大きな治療効果をもたらしています.
しかし標的を絞っているとはいえ,病気にだけ効くわけではないので,
インフリキシマブの免疫低下,抗がん剤での皮膚病変など,
気をつけなければならない副作用もあります.
また,開発,製造には多大なお金がかかりますので,お高い薬が多いです.
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「遺伝子関連検査」は『必修問題』で問われうる点に注意しましょう!
それだけ一般的になった検査なのですね.
(編集A)