[分析]データでみる107回国試(その3)対応が問われる!臨床問題編

こんにちは☆編集部のS藤です.

前回の,データでみる国試(その2)では,
国試の鬼門”といわれる必修問題についてお伝えしました↓
http://web-informa.com/kokushi/data/20130402-2/

続いて今回は,『臨床問題』について,お伝えしていきます.

◆臨床問題とは◆

ある症例について年齢,性別,現病歴,身体所見,検査所見,画像などが呈示され,
それらを解釈して解答する問題です.

疾患についての一般的な知識があるだけではなく,
呈示された症例について実際に診察・検査を行い,診断,治療を選択するための
知識があり,臨床医的な思考ができるかどうかが試されます.

解答として何が問われるか,
おおまかに分けると以下のような問題が出題されています.

1.診断名を答える問題
2.考えられる病態,所見,合併症(医原性も含む)を答える問題
3.適切な検査,治療などの対応を答える問題

それぞれどれくらい出題されているかというと,
以下のグラフの通りです.

臨床問題分類
最も多いのは「適切な検査,治療などの対応を答える問題」で,
特に106回,107回では以前よりも出題が多くなっています.

さて,様々な切り口から問われる臨床問題を攻略するためには,
どうしたら良いでしょうか.

まだ臨床実習の期間が残っている科については,
・初診の患者さんの,病歴や身体所見の把握
・必要な検査をオーダーし,得られた情報をもとに診断
・治療を開始し,効果判定,経過に応じた対応を行う

などの全ての段階について,意識して実習に取り組んで下さい.
流れを肌で感じることで,知らず知らずのうちに基礎的な思考回路が身につき,
臨床問題に対する抵抗感がなくなります.

そして,実際の解答力をつけていくためには,
問題演習を反復することが,最も重要です.
◆画像問題対策は充分に◆

107回国試では,例年になく多くの画像問題が出題されたことが話題になりました.

画像出題数の推移
全500問のうち,なんと134問26.8%)が画像問題でした.

特に臨床問題ではその割合が高く(200問のうち106問),
合否を分ける大きな要素です.

画像問題の多くは,問題文を読むだけでは解けず,
画像の情報がないと解答ができません.

実際に問題を見てみましょう.

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107A53
A53 75歳の女性.半年前から徐々に増大する左頸部の腫瘤を主訴に来院した.左頸部に圧痛を伴わない径3cmのリンパ節を1個触知する.血液所見:赤血球428万,Hb 12.4g/dl,Ht 38%,白血球7,500(好中球66%,好酸球1%,好塩基球1%,単球5%,リンパ球27%),血小板30万.CRP 1.7mg/dl.喉頭内視鏡像と胸部X線写真とで異常を認めない.左頸部リンパ節からの穿刺吸引細胞診では診断がつかず,確定診断のために生検を行った.生検のH-E染色標本を下に示す.

107A053

治療薬として最も適切なのはどれか.
a 抗真菌薬
b 抗結核薬
c 抗悪性腫瘍薬
d ペニシリン系抗菌薬
e 副腎皮質ステロイド
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【解説】
答えは『b 抗結核薬』で,正答率は59.8%
決め手はH-E染色標本でみられる乾酪壊死Langhans巨細胞でした.
結核の病理組織像は,いろいろな臓器で問われうるので,押さえておいて下さいね.

画像問題は,臨床経験の少ない学生さんには難しく,
苦手意識を持ちやすい部分です.

早いうちから,勉強に画像対策を取り入れて,画像慣れをしておくことが重要です.
year nore ATLAS』は,メジャー科,マイナー科,産婦人科疾患の,
典型的な画像が1冊で確認できるので,オススメです!!
◆臨床長文(3連問)は高齢者と救急ばかり◆

106回と同様に,Bで3連問×4,Eで3連問×3,Gで3連問×3,
合計10組の臨床長文(3連問)が出題されましたが,
今年はこの,連問のテーマに大きな特徴がみられました!

臨床長文の内容

ご覧の通り,ほとんどが高齢者と救急に関する問題でした.
水色の部分は,特に高齢者に特有な問題を扱った設問で,
日常の医療がリアルに再現されています.

107B52~B54を見てみましょう.
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107B52~54
次の文を読み,52~54の問いに答えよ.
88歳の女性.食事をとらないことを心配した家族から訪問診療の際に相談を受けた.
現病歴:5年前にAlzheimer型認知症と診断された.数年前から下肢筋力が低下していた.数ヵ月前からは長男の妻の介助だけでは車椅子乗車も不可能となり,ほとんど臥床している状態となった.通院が困難なため訪問看護と訪問診療が開始となった.長男の妻によれば「最近,食事をとらないことが多く,義歯をはめると嫌がり,むせることも多い」という.
既往歴:高血圧症のため内服加療中.
生活歴:夫は5年前に死亡.長男夫婦と同居.主な介護者は長男の妻である.要介護4.1日1回の訪問介護と,週に3回のデイサービスを利用している.排泄にはオムツを使用している.食事は家族の介助で摂取している.入浴はデイサービスを利用している.
家族歴:特記すべきことはない.
現症:身長145㎝,体重30kg(1ヵ月前の体重は32kgであった).体温35.8℃.脈拍56/分,整.血圧92/70mmHg.呼吸数12/分.SpO2 97%(room air).皮膚はやや乾燥している.眼瞼結膜に異常を認めない.眼球結膜に黄染を認めない.口腔粘膜に異常を認めない.甲状腺腫と頸部リンパ節とを触知しない.心尖部にⅡ/Ⅵ度の汎収縮期雑音を聴取する.呼吸音に異常を認めない.腹部は平坦,軟で,肝・脾を触知しない.四肢に軽度の浮腫を認める.
検査所見:血液所見:赤血球368万,Hb 11.9g/dl,Ht 38%,白血球5,300,血小板12万.血液生化学所見:血糖90mg/dl,総蛋白5.9g/dl,アルブミン2.9g/dl,尿素窒素25mg/dl,クレアチニン0.9mg/dl,総コレステロール186mg/dl,トリグリセリド70mg/dl,総ビリルビン0.7mg/dl,AST 20IU/l,ALT 12IU/l,ALP 273IU/l(基準115~359),γ-GTP 25IU/l(基準8~50),CK 28IU/l(基準30~140),Na 131mEq/l,K 3.2mEq/l, Cl 97mEq/l.

B52
最初に行うべきなのはどれか.2つ選べ.
a 頭部CT
b 腹部CT
c 上部消化管造影
d 歯科医への診察依頼
e 耳鼻科医への診察依頼

B53
訪問診療の1週後,同居する長男とその妻に嘔吐と下痢とが出現し急性胃腸炎と診断された.翌日,患者にも嘔吐と下痢とが認められた.
適切な対応はどれか.
a 抗菌薬を投与する.
b ワクチン接種を指示する.
c 水分摂取を中止するように指示する.
d デイサービスを休むように指示する.
e 長男とその妻に患者と接しないように指示する.

B54
患者の下痢は1週間で軽快したものの,下痢を契機に食欲は更に低下していった.認知症の進行のため患者の希望は聴取不可能であったが,家族と相談して自宅療養を続ける方針となった.
この患者で必要性が低いのはどれか.
a 褥瘡の予防
b 訪問診療の継続
c 訪問看護の継続
d 訪問介護の継続
e 降圧薬の経口投与の継続
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【解説】
答えと正答率は,以下の通りです.
B52:『d 歯科医への診察依頼』,『e 耳鼻科医への診察依頼』,正答率52.2%
→義歯不適合と嚥下障害が疑われるため.

B53:『d デイサービスを休むように指示する.』,正答率87.6%
→感染力の強い急性胃腸炎であるため施設の利用は控える必要がある.

B54:『e 降圧薬の経口投与の継続』,正答率96.0%
→現在高血圧ではなく,かえって下がりすぎることによる有害事象が起こる可能性がある.

いかがでしょうか.
超高齢化社会である日本の現状に合わせてか,
連問だけでなく国試全体において,高齢者関係の設問が多くみられます.
意識して,勉強してみてくださいね.
以上,『臨床問題』についてお伝えしてきましたが,いかがでしたか.
次回もお楽しみに!

(編集部S)

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