[5・6年生向け]ガイドラインからみる107回国試
第3回:多様化する“治療”を追え!(その1)

編集Aです.
107回国家試験と,平成25年医師国家試験出題基準(ガイドライン)について
お送りしているシリーズの3回目です.

今日からは少し視野を広げて,
ガイドラインで比重が高まった『治療』に関する出題について
見ていきたいと思います.

 

◆この2年間で急増している『検査・治療を答える問題』◆

先日配信した『データでみる107回国試(その3)』で,
臨床問題のパターンをご紹介しました.
臨床問題で最も多いのは「適切な検査,治療などの対応を答える問題」で,
特に106回と107回で急増しているのが印象的です.

実はこの傾向,新ガイドラインの傾向と合致するのです.

ガイドラインでは,特に『必修の基本的事項』の章で,
「治療」の比重が高まったことが特徴的でした.

また,「在宅医療」や「緩和医療」など,
高齢社会も顧みた,より様々なシチュエーションでの治療や対応について
記載が拡充されていることも印象的でした.

こうした治療について,107回国試ではどのように出題されたのでしょうか.
今日は,放射線治療血管系治療をとりあげます.

 

◆放射線治療◆

新ガイドラインでは,放射線治療について
根治的照射に加えて「予防的照射」「緩和的照射」などの用語が追加され,
放射線治療の目的が多様化していることを示していました.

そんな放射線治療に関する知識を問われたのがこちら.

107B38
前立腺癌の原発巣に対して根治的放射線治療として行われるのはどれか.2つ選べ.
a 腔内照射
b 組織内照射
c 電子線治療
d 強度変調放射線治療
e 放射性同位元素内用療法

正解:b,d(正答率:53.1%)

【解説】
b『組織内照射』の正答率は90.0%でしたが,dを選べた受験生は60.2%に留まり,
結果的に正答率は53.1%でした.
dは外照射療法ですが,知らなくてとまどった受験生も多かったのではないでしょうか.
放射線治療について一歩踏み込んだ問題でした.

主にがん治療において,放射線治療は
疼痛緩和などの姑息的手段としてだけでなく
術前術後の補助療法や根治療法の手段として,重要性が高まっています.

近年,さまざまな疾患ガイドラインで
放射線治療の位置づけが明確化されています.

国試においても,放射線科に属する出題は年々増えています
(105回では3問,106回で5問,107回では7問!),
今後も量・質ともに,さらに詳しい知識が問われる可能性が高いです.

無料冊子『INFORMA』44号や,昨年のWEB INFORMAで紹介した
「直線加速器(リニアック)」「ブラッグピーク」などの基礎知識とも合わせて,
放射線治療について確認しておきましょう.
『レビューブックマイナー』も活用してくださいね.
https://informa.medilink-study.com/wordpress/book/rb_minor.html

 

◆血管系治療◆

血管系治療も放射線同様,ガイドライン上で比重が高まっていました.
新たに「動注リザーバーポート」「経皮的中心静脈ポート留置術
下大静脈フィルター」といった言葉が 具体的にガイドラインに明記され,
このうちの2つは,INFORMAやWEB INFORMAでもご紹介しました.
その後,臨床実習などで注目していただけましたか?
https://informa.medilink-study.com/web-informa/post4500.html/

血管系治療に関する出題を2つ紹介します.

107E26
疾患と適応となるインターベンショナルラジオロジー〈IVR〉の組合せで誤っているのはどれか.
a 上顎癌・・・・・・動注化学療法
b 大動脈瘤・・・・・・ステントグラフト内挿術
c 肺動静脈瘻・・・・・・フィルター留置術
d 肝細胞癌・・・・・・動脈化学塞栓療法
e 腎血管性高血圧症・・・・・・経皮血管形成術〈PTA〉

正解:c(正答率:77.7%)

【解説】
IVRの手法を問う問題でした.
過去にも類題があり,特に新傾向問題というわけではありませんが,
前述のとおり,血管系治療の需要はますます高まっていますので,
IVRの主要な手技と適応については,最新技術も含めて注目しておきましょう.
『レビューブックマイナー』(第5版)X-38ページや,
『第107回医師国家試験問題解説』302ページにまとめの表を掲載していますので,
お持ちの方は確認してくださいね.

続いて,もう一題.

107G57
65歳の男性.左上下肢の脱力を主訴に来院した.1週前から左上下肢の脱力が時々出現し,5分ほどで改善していた.受診時,神経学的な診察で異常所見を認めない.体温36.5℃.脈拍60/分,整.血圧140/72mmHg.心電図で異常を認めない.頭部単純MRIで異常を指摘され検査目的で入院となった.脳血管造影の右総頸動脈側面像を下に示す.

kokushi107G57(画像をクリックすると拡大します)

この患者に血管内治療を行う場合に適切なのはどれか.
a 硬化療法
b 動脈塞栓術
c 血栓溶解療法
d ステント留置術
e フィルター留置術

正解:(正答率88.0%)

【解説】
選択肢に定番の『頸動脈内膜剥離術』がなく,
治療として『ステント留置術』も行うことを知っているかどうかが問われた問題でした.

これもガイドライン改訂に伴う新傾向問題とはいえませんが,
選択肢eの『フィルター留置術』が,先ほど紹介した107E26に続いて
2回も登場していることにも注目したいところです.

血管系治療は,いずれも
在宅医療の拡大やQOL重視に伴い普及している治療法です.

今後も継続して問われる可能性がありますので,
やはり日頃の実習などでも意識して注目してみましょう.
次回に続きます!

(編集部A)

 関連コンテンツ

 関連する記事

新着記事カテゴリー


 すべて

 国試

 CBT・OSCE

 動画・アプリ

 実習・マッチング

 研修医・医師

 コラム

 その他