[読み物]医学界の偉人伝(その3)E.T.コッハー
みなさんこんにちは!S藤です。
「医学界の偉人伝」第三回は、
おなじみ“コッヘル鉗子”の考案者、
エミール・テオドール・コッハー博士です。
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不器用な手がつかんだ成功
エミール・テオドール・コッハー
◆手先の鈍さを術式で補う◆
1841年にスイスのベルンで生まれる。
ベルン大学で医学を学び、ベルリン、パリ、ウィーン大学で外科学を修めた。
1872年から1911年までの40年間、ベルン大学で外科学教授を務めたが、
決して天才肌とは言えず、むしろ手先の動きが鈍かったという。
しかしその分慎重に手術を進めると評判が高く、
また外科医が用いる器具の改良にも励んだ。
コッハーが開発したコッヘル鉗子は、現在でも広く用いられている。
◆術式改良でノーベル賞◆
コッハーが主として行ったのは、肩甲関節の治療と甲状腺腫瘍の研究である。
コッヘル法は彼が開発した肩関節脱臼の基本的整復術であり、現在も多用されている。
またコッハーは甲状腺手術の術式改良に励み、
1909年に甲状腺の生理学・病理学および外科学的研究でノーベル生理学・医学賞を受賞した。
1912年には、手術時の死亡率を従来の18%から0.5%にまで下げることに成功している。
術例は、甲状腺だけで5000例を超えていたという。
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いかがでしたか?
生まれつきの器用さには恵まれなくても、術式や手術器具の工夫や改良を重ね、
ノーベル賞受賞にまで上り詰めた努力は素晴らしいですね。
★おまけ:鉗子の種類★
外科手術で用いられる鉗子とは、組織の把持、牽引、止血などに用いられる道具で、
大きさや先端部の形状が異なるさまざまな種類があります。
外科実習でよく目にする鉗子としてはまず、コッヘル鉗子、ペアン鉗子があります。
この2つは一見よく似ているのですが、一般的には先端部の鉤の有無で区別します。
コッヘルは有鉤で把持力が強く、筋膜など丈夫な組織の把持に使われるのに対し、
無鉤のペアンは組織傷害性が少ないため、止血鉗子としてよく用いられます。
その他にも色々ありますが、
剥離操作に使うケリー鉗子や、繊細な脈管や組織の把持に用いるモスキート鉗子などは、比較的よく目にすると思います。
次回の医学界の偉人伝は、
医師国試の必修問題でも出題される「死の受容のプロセス」を提唱した、
エリザベス・キューブラー=ロス
をお送りします。
どうぞお楽しみに!
(編集部S)