[Dr. Yの研修医日記] あなどれない胸痛と腹痛
今回は,救急当直で体験した
2つの症例についてお話ししたいと思います.
胸痛と腹痛は救急外来でもメジャーな主訴であり,
国試でも確実にゲットしていきたい問題ですよね.
しかし,簡単そうにみえる胸痛・腹痛が,
実はとても奥深い症状であることを痛感させられました.
【 case 1 : 胸が痛いおばあさん 】
6月×日,胸が痛いという90歳代のおばあさんが
「胸全体が痛いんです.首がもともと痛くて,そこから痛くなりました」
と言って受診されました.
「胸が痛い」といえば,国試でも定番である
急性心筋梗塞の鑑別をしなくてはいけません.
問診から積極的に疑っていたわけではありませんが,
可能性を除外するために私も12誘導心電図をとると,まさかのST上昇!
その患者さんは5年前に心筋梗塞の既往があったのですが,
昔の心電図がないため比較することができず,
そのST上昇が今回のエピソードに関係しているのか,わかりません.
採血を行ったところCKが若干高値,
まさか本当に急性心筋梗塞なの・・・?と思いつつ,
ニトロの舌下投与や心電図の再検,心エコーまで行って,
結局整形外科的疾患が一番考えられるだろうと判断し,
帰宅していただきました.
しかし!
次の日にその患者さんが入院,しかも診断は急性心筋梗塞でした.
種明かしは採血データでの
白血球(WBC),AST,CK,LDHの高値でした.
急性心筋梗塞のときに上昇する“WACOLE”です.
今まで,“WACOLE”なんて国試だけにしか使わないだろ,
と思っていましたが重要な所見ですよ,皆さん!
・・・その患者さんは今,
謹んで私が担当させていただいています.
【 case 2 : やたらお腹を痛がる女性 】
50歳代で腹痛の女性が来るとの電話があり急患室に急ぐと,
待合室に“これぞ苦悶様顔貌”といった女性がいました.
「この人が患者さん・・・?(-_-;)」
と思いながら話を聞くと,
朝5時に起きたときから腹痛があり,
何を考えたのかコー○ックを2錠服用したとのこと.
このように,患者さんは「なぜそんなことをした・・・」という
ビックリ行動をとることがよくありますから要注意です.
腹部所見ではグル音やや低下,腹部全体に自発痛がありましたが,
反跳痛ははっきりしませんでした.
腹部レントゲンでは便塊がたくさん認められたものの,
ニボーは認められず,一番心配だったイレウスではないと判断して
その日は帰宅していただきました.
しかし翌々日にやっぱり入院・・・.
イレウスの診断でした.
なんと,入院日のレントゲンではばっちりニボーがうつっています.
なんで!?
あとから消化器内科の先生に聞いたところでは,
私の診察時はイレウスに至っていなかったため入院適応はなかったが,
それから病状が進行したのだろう,とのことでした.
腹痛もあなどれない…と実感した症例でした.
(研修医 Y)
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