〔分析〕データでみる108回国試(その3)不合格者の内訳は?
こんにちは,編集部A.Mです.
データでみる国試3回目,
今回は「不合格者の内訳」から今年の傾向をみていきましょう.
今回のデータはメディックメディアがメックと提携して行っている,
解答速報「TAKEOFF」(国試採点サービス)の結果をもとに分析しています.
※採点サービスは,自分の選んだ解答をサイト上で入力すると,
弊社の作成した模範解答をもとに採点され,約1週後に自分の成績が閲覧できるサービスです.
みなさんからいただいた解答の情報から,「正答率の算出」や「不合格分析」なども行っています.
■今年は臨床問題落ちが多かった!
まずは「TAKEOFF」登録者の割合です.
今年はなんと,受験者数8,632名中6,762名の方が「TAKEOFF」に参加してくださいました!
(ありがとうございます!)
さて,この6,762人中の合格率ですが,次のようになりました.
実際の合格率よりも高いですが,これは「絶対に落ちた!」と確信している場合は,
「TAKEOFF」に参加しない人が多いからと考えられます.
合格者6,451人と,不合格者311人の成績をみてみましょう.
合格者の平均点は,合格ラインよりもはるかに高いことに比べ,
不合格者の平均点は,合格ラインギリギリですね.
あとちょっと!のギリギリのところで悔しい思いをされた方が多かったのではないでしょうか.
では次に,不合格者の内訳をみていきましょう.
前回(107回)は,不合格者内の割合は一般と臨床落ちが同程度だったのに対し,
今回(108回)は臨床落ちだった人の割合が増えています.
また,臨床のみで落ちた人の割合も増えていますね.
一回目のメルマガでお送りした通り,臨床問題の得点率が全体的に下がっていたことからも,
今年は臨床問題が難化したと考えられますね.
■臨床問題の出題傾向は?
今年は難化したと考えられる臨床問題ですが,
この臨床問題では,ある症例について,年齢,性別,現病歴,身体所見,検査所見,画像などが呈示され,
それらを解釈して診断名や病態,診断後の対応が問われます.
疾患についての一般的な知識を知っているだけでなく,
それを臨床でどう生かすかが問われます.
出題傾向を知るために,臨床問題を3タイプに分類しました.
1. 診断型:症例文で与えられた情報から,診断名を答える問題
2. 病態型:症例の基本病態や予想される所見,合併症を答える問題
3. 対応型:症例に対し,適切な検査や治療を選択する問題
それぞれどの程度出題されていたのかをみてみましょう.
※縦軸は公衆衛生以外の臨床問題に占める割合(%)
対応型が圧倒的に多いことがわかりますね.
単に診断をつけるだけではなく,その症例に対して適切な対応ができるかどうかが問われます.
また,病態について聞かれる割合が増えてきており,
症例ごとに何が起きているかを考えることが重要になってきています.
対応型や病態型の問題をみてみましょう.
◆対応型◆
【108I69】
11歳の男児.2週後の修学旅行を前に夜尿が治らないため母親と来院した.既往歴に特記すべきことはない.両親と姉と妹の5人暮らし.尿所見:蛋白(-),糖(-),沈渣に赤血球0~1/1視野,白血球1~4/1視野.腹部超音波検査で両側の腎と膀胱とに異常を認めない.
対応として適切なのはどれか.
a 経過観察
b オムツの使用
c 終日の水分制限
d 修学旅行への不参加
e 三環系抗うつ薬の内服
こちら正解はeの三環系抗うつ薬の内服で,正答率は39.0%でした.
a(解答率25.0%)やb(同24.1%)と迷った人も多かったようですが,
修学旅行を目前に控えており,早急な対策が必要として三環系抗うつ薬の内服を行います.
ここまで深く勉強するのはなかなか難しいですが,実臨床では本当にありそうな症例ですよね.
◆病態型◆
【108G60】
89歳の女性.室内で転倒し動けなくなり搬入された.左大腿骨転子部骨折と診断され,翌日に骨接合術を受けた.術後の経過は順調である.10年前からAlzheimer型認知症で内服治療を受けている.
手術当日に起こりうる合併症はどれか.3つ選べ.
a 褥 瘡
b せん妄
c 偽関節
d 関節拘縮
e 深部静脈血栓症
術後の合併症の問題です.
答えはabeで,正答率は51.1%でした.
解答率からみると,b(解答率99.4%)とe(同96.4%)は選べているようですが,
a(同53.0%)に自信がない人が多かったようです.
褥瘡は1日程度では生じないイメージがあるかもしれませんが,
仙骨部などの褥瘡が生じやすい部位では数時間の圧迫で生じることもあります.
こちらも実臨床では日常的な話ではないでしょうか.
■臨床実習は大切に!アウトプットの問題演習も怠らない!
では対応型や病態型の臨床問題を攻略するためにはどうしたらよいでしょうか.
まだ実習が残っている科については,以下の点に注目しましょう.
・初診の患者さんの,病歴や身体所見
・必要な検査のオーダーと,そこから得られる情報
・治療の選択と,効果判定,経過に応じた対応
実際の現場で診断から対応までの流れを,しっかりと自分の目で確認して下さい.
そして臨床実習でインプットした現場の知識を忘れないために,
また,解答力をつけていくために,必ずアウトプットをしておきましょう.
これは実際の国試を繰り返し解くことが効果的.
自分が実習中に回る科の過去問を解いて,知識の定着をはかりましょう.
今回はここまで!
次回は「出題分野の割合」をみていきましょう.
お楽しみに!
(編集部A.M)