〔分析〕データでみる108回国試(その6)正答率が上がる,リベンジ問題!

こんにちは,編集部A.Mです.
「データでみる国試」も6回目となりました.
最終回の今回は,「リベンジ問題」をテーマにお届けします.

■「リベンジ問題」って?
さて,まずは「リベンジ問題」とはなにか,実際の問題をみてみましょう.

【108E55】
20歳の男性.意識障害のため搬入された.約1時間前に自殺目的で有機リン系殺虫剤を約500ml飲んだことが判明している.救急隊からの連絡によると,救急車内での意識レベルはJCSⅢ-300.体温36.0℃.脈拍80/分,整.血圧110/72mmHg.呼吸数10/分.SpO2 100%(リザーバー付マスク10l/分 酸素投与下).救急外来への搬入時に嘔吐し,尿失禁と便失禁とがあり,有機溶媒臭が漂っている.
まず行うべき対応はどれか.
a 除 染
b 血圧測定
c 拮抗薬投与
d 制吐薬投与
e 緊急血液透析

正解はaの除染でした.
正答率は56.0%と低いのですが,実は前年度同じような問題が出題された際は更に低く,26.7%でした.
それが下の問題です.

【107G63】
25歳の男性.気分不良を主訴に来院した.
現病歴:官庁街近くのレストランで昼食をとっていたところ「液体のようなものがまかれた」という声がして,レストラン内で数人が倒れた.気分が悪くなったためレストランから飛び出し,徒歩で近くの病院を受診した.会話は可能であり,目の前が暗く感じ,鼻水が止まらないと訴えている.
病院の受付から報告を受け,患者を他の患者と接触のない救急室の一室に隔離するよう指示した.
最初に行うべきなのはどれか.
a 警察に問い合わせる.
b 動脈血ガスを測定する.
c バイタルサインをチェックする.
d 症状と発症時の状況とを詳しく聞く.
e 患者に服を脱いでもらい,密封できる袋に詰めてもらう.

二次災害を防止するために,患者を脱衣し汚染物質を密封することが第一優先となります.
医療現場では何を優先して動かなければならないのか,
緊急時にも対応できる判断能力があるのか問われた問題です.

聞かれた知識は基本的なことだけど,
問題の読み方によっては間違え選択肢を選んでしまうため,正答率が低くなる問題もあります.
このような問題は,翌年以降に欠点が改善され再び出題されることがあります.
これが「リベンジ問題」です.

これらのリベンジ問題の正答率は前年に比べ高くなり,
点数を落としづらい問題になります.

では,次の問題をみてみましょう.
まずは前年度(107回)の問題です.

【107H4】
flow-volume曲線を次に示す.
107H4
長年の喫煙習慣と関連する閉塞性障害を示すのはどれか.
a ①
b ②
c ③
d ④
e ⑤

長年の喫煙習慣と関連する閉塞性障害というキーワードから,
COPDを連想して,さらにそのflow-volume曲線を選べるか,という問題です.
正解はaで,正答率は64.9%でした.
bと迷った人が多かったようですが,COPDは残気量が大きく,努力肺活量が小さいことが特徴ですね.

さて,この問題が本年はどのように出題されたのでしょうか.

【108E49】
66歳の男性.労作時の呼吸困難を主訴に来院した.2ヵ月前から階段を昇るときに呼吸困難を自覚するようになった.身長175cm,体重60kg.脈拍72/分,整.血圧136/80mmHg.呼吸数20/分.SpO2 94%(room air).呼吸音は両側でやや減弱し,打診で両側の胸部に鼓音を認める.胸部X線写真と肺野条件の胸部単純CTとを次に示す.
108E49A 108E49B
次に示すflow-volume曲線のうち,この患者に予想されるのはどれか.
a ①
b ②
c ③
d ④
e ⑤
108E49①108E49②108E49③108E49④108E49⑤

こちらもCOPDを診断したうえでflow-volume曲線を選ぶ問題ですね.
答えはeで,正答率は82.4%でした.
正答率は107回と比べ上がっていますね.

他にもこんな問題がありました↓
【107I66】大腿骨近位部骨折を診断する問題(正答率45.5%)
【108F22】大腿骨近位部骨折を疑わせて,股関節X線撮影を選ばせる問題(正答率78.3%)

【107G21】悪性リンパ腫のリンパ節の典型的所見(69.1%)
【108H4】がんの転移によるリンパ節腫脹の特徴(99.0%)

リベンジ問題からいえることは,前年度で正答率が低かったり,採点除外になったからといって,
次の年も捨て問になるとは限らないことです.
過去問で出たことは誰でも勉強してきますし,
第1回のメルマガでお話した類似・プール問題と同様に,正答率が上昇するものが多いです.

正答率が低かった,あるいは採点除外となったからこの問題の対策は必要ない!と投げるのではなく,
なぜ正答率が低かったのか,採点除外となったのか,
翌年以降に改めて出題されることはないか,見極めることが大事です.
過去問は近年3年分(できれば5年分)をしっかりと解きましょう.

本メルマガで紹介した問題の詳しい解説が読める
108回医師国家試験問題解説』は5月3日に発売となりました.
109回国試に向けて,ぜひ手にとってくださいね!

それでは「データでみる108回国試」は以上になります.
お付き合いいただきありがとうございました!

(編集部A.M)

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