[5年生向け]国試からみる,臨床実習のポイント!(その6)教科書だけでは学べない,リアルな症例!Part.3
こんにちは,編集部のA.Mです.
本シリーズも6回目となりました.
今回は症例問題のなかで,私が個人的に気になった問題をみていきたいと思います.
■経験しておけばわかったかも?!■
ではさっそく問題です!
【108E27】
5名の患者の血液検査所見を示す.
意識が清明である可能性が最も高いのはどれか.
ただし,他に血液検査所見の異常はないものとする.
全てのデータが正常である患者がいない中で,意識が清明な可能性のある人を選ぶのは難しいと思います.
正解は「b」で,正答率が12.7%ととても低くなりました.
高度の高血糖状態では実際のNa濃度よりも低く測定されてしまうため,
補正後のNa濃度は意識障害をきたすほど低値ではないと考えられます.
また,高度の高血糖状態でも,血漿浸透圧が正常であれば意識障害をきたさないことが多いんです.
こちらの問題について受験生にお話を伺ったところ,
「血糖値がものすごく高いのに意識清明な人をみたことがある!」という方がいらっしゃいました.
自信をもって解くことができたそうです.
自分が一度経験していると,とても印象に残る症例ってありますよね.
私は学生の頃,消化器科の実習で胃GISTの方の担当となりました.
他の班員が胃癌を調べているなか,成書にはあまり記載のないGISTについて調べるのは大変でしたが,
(英語の論文を読んだりもしました・・・)そのぶんとても記憶に残りました.
【108A43】では胃GISTの治療を問う問題が出題されましたが,
臨床実習を3年前に行った私でも,胃に限局しているGISTに対しては局所切除を行うことを覚えていました.
受験生に聞いてみたところ,「切除をすることは知っていたけれど,どこまで切除するのか
わからなくて迷った」という方もいました.
自分が経験したことあるからこの答えで間違いない!と決めつけるのはよくないですが,
解答する際の自信には繋がるかもしれませんね.
もちろんすべての症例をみんなが経験できるわけではないですが,
自分の受け持った患者さんの疾患については,とことん知り尽くすことをオススメします.
■臨床の傾向が反映される?!■
次の問題は出題者の意図を読み取ってみましょう.
【108G64】
65歳の男性.頭部挫創を主訴に来院した.
現病歴:飲酒後,家の階段の下で倒れているところを帰宅した家族に発見された.頭部に挫創を認めたため家族に付き添われて受診した.
既往歴:心房細動のためワルファリン内服中.
生活歴:定年退職後無職.
家族歴:特記すべきことはない.
現 症:アルコール臭があるが意識は清明.ただし,本人は受傷時のことは覚えていない.脈拍80/分,不整.血圧150/90mmHg.呼吸数24/分.頭頂部やや後方に3cmの挫創があり出血を認めた.身体の他の部位に創傷は認められなかった.
検査所見:頭部CTでは頭蓋骨骨折は認められず,後頭蓋窩にごくわずかな硬膜下血腫が認められた.
この患者における頭蓋内病変の重症化を予測する上で,最も注意すべきなのはどれか.
a 健 忘
b 飲 酒
c 年 齢
d 創傷部位
e ワルファリン内服
頭蓋内病変,つまり硬膜下血腫の重症化を引き起こす危険因子が選べれば,答えは簡単ですね.
この患者さんで最も注意すべきなのは,「e ワルファリン内服」でした.
一見簡単そうな問題ですが,内容はとても重要です.
なぜなら,近年ワルファリンを始めとした抗血栓薬を使用する人が増えており,
使用中は易出血性に考慮しなければ危険だからです.
みなさんも実習中に抗血栓薬を内服している患者さんに何度も遭遇するのではないでしょうか.
抗血栓薬に関連した問題は他に,【108A28】や【108G67~69】などがありました.
抗血栓薬以外にも,降圧薬や糖尿病治療薬など使用している人が多い薬剤は
チェックしておくといいかもしれません.
臨床の傾向を反映した内容の問題が今後も出題されると思います.
実習中によくみかけることには目を光らせておきましょう.
ちなみに【108G64~66】は3連問です.
【108G65,66】でも大事なことを問われているので,ぜひ確認してみてくださいね.
※QBオンラインに登録している方は,下のURLから問題を見てみてください.
(ログインしていれば問題にとべます!)
http://qb-online.com/#/list/108G64-66
次回で本シリーズは最終回となります.
お楽しみに!
(編集部A.M)