〔分析〕データでみる109回国試(その3)不合格者の内訳は?

こんにちは!編集部M.Tです.
データでみる国試,3回目の今日は,

「不合格者の内訳」から今年の傾向をみていきましょう.

今回のデータは,メディックメディアがメックと提携して行っている,
解答速報「TAKEOFF」(国試採点サービス)の結果をもとに分析しています.

※採点サービスは,自分の選んだ解答をサイト上で入力すると,
弊社の作成した模範解答をもとに採点され,
約1週後に自分の成績が閲覧できるサービスです.
みなさんからいただいた解答の情報から,
「正答率の算出」や「不合格分析」なども行っています.

それではTAKEOFFのデータをもとに,
109回国試を分析していきましょう.

■今年は一般問題落ちが増加!

まずは「TAKEOFF」登録者の割合です.
今年はなんと,受験者数9,057名中6,282名の方が
「TAKEOFF」に参加してくださいました!
(ありがとうございます!)

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さて,この6,282人中の合格率ですが,次のようになりました.

 

実際の合格率よりも高いですが,これは「絶対に落ちた!」と確信している場合は,
TAKEOFFに参加しない人が多いからと考えられます.

次に,合格者6,004人と,不合格者278人の成績をみてみましょう.

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合格者の平均点は,合格ラインよりもはるかに高いことに比べ,
不合格者の平均点は,合格ラインギリギリですね.
あとちょっと!のギリギリのところで悔しい思いをされた方が多かったのではないでしょうか.

ではさらに,不合格者の内訳をみていきましょう.

 

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前回(108回)は臨床落ちの割合が高かったのですが,
今回(109回)は一般落ちと臨床落ちがほぼ同じ割合となりました.
また,一般のみで落ちた人の割合が増えていますね.

一回目のメルマガでお伝えした通り,
一般問題の得点率が全体的に下がっていたことからも,
今年は一般問題が難化したと考えられそうです.

■一般で臨床を,臨床で一般を学ぶ

今回,一般問題の平均点が下がりましたが,
どのように一般問題を勉強すべきか
それをここで考えていきたいと思います.

国試の問題は大きく分けると
「一般」,「臨床」の2形式になると思います.
これらはそれぞれ独立した対策しかできないのでしょうか?
実は,そんなことないのです…!
そこで109回の一般問題を見てみましょう.

【109I28】
小児期の皮膚筋炎で正しいのはどれか.
a 男児に多い.
b 悪性腫瘍の合併が多い.
c 死因は横紋筋融解症が多い.
d 診断にはMRIが有用である.
e 抗Jo-1抗体は半数の患者に陽性を示す.

国試最後のブロックにして,問題数最多のI問題で出題された問題です.
「小児期の皮膚筋炎」の疫学について,
細かく覚えている受験生は少なかったようで,
正答率は37.4%となりました.

しかし,この問題が出る「兆し」が108回であったのです.
次の問題を見てみましょう.

【108D45】
35歳の女性.脱力を主訴に来院した.9ヵ月前から徐々に歩行時の疲れやすさを自覚し,2ヵ月前に手すりにつかまらないと階段を昇れないことに気付いた.1ヵ月前から洗髪時に腕を挙げるのが難しくなり,洋式便器から立ち上がることができなくなった.身長164cm,体重56kg.胸腹部と脳神経とに異常を認めない.徒手筋力テストで頸部屈筋は2,四肢筋力は左右対称に近位筋は3,遠位筋は4と低下している.筋痛,筋把握痛はない.血液生化学所見:総蛋白7.5g/dl,アルブミン3.7g/dl,AST 52IU/l,ALT 42IU/l,CK 870IU/l(基準30~140).脳脊髄液所見に異常を認めない.左上腕二頭筋生検のH-E染色標本を以下に示す.

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この患者でみられるのはどれか.
a 末梢神経伝導速度低下
b ミトコンドリアDNAの欠失
c 抗アセチルコリン受容体抗体陽性
d 針筋電図で刺入時ミオトニー放電
e 四肢MRIのT2強調像で筋内の高信号

近位筋が左右対称に傷害されていることや
生検の結果などから,皮膚筋炎と診断できます
この問題の選択肢に「MRIのT2強調像での高信号」がありました.
皮膚筋炎の診断におけるMRIの有用性について,
今後出題される「兆し」があったということですね.
このように,臨床問題で選択肢になった内容は
臨床問題だけでなく,一般問題で問われることもあるのです.

同様のパターンが次のものになります.

【109D2】
脳血流SPECTを次に示す.

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最も当てはまるのはどれか.
a 脳血管性認知症
b 前頭側頭型認知症
c Lewy小体型認知症
d Alzheimer型認知症
e Creutzfeldt-Jakob病

Bの画像を見てください.
赤が大きく脳血流が低下している領域を示しており,
頭頂葉の血流低下を顕著にみとめます.
一方,後頭葉では血流低下をみとめません.
これらから判断し,正解はd「Alzheimer型認知症」で,
正答率は80.1%の問題でした.

そしてこの「兆し」であったのが,次の問題です.

【108A38】
78歳の女性.手指振戦と動作緩慢とを主訴に来院した.1年前から手指の震えが出現し,次第に動作が緩慢になっていた.半年前から物忘れを自覚していた.1か月前から,誰もいないのに「人が座っている」と訴えたり,「蛇がいる」と怖がったりするようになったため,1週前にリスペリドンを少量投与したところ,四肢の筋強剛と流涎とを認めるようになった.
この疾患にみられるのはどれか.
a 側頭葉内側の萎縮
b 後頭葉の糖代謝の亢進
c 後部帯状回の血流低下
d 心臓交感神経機能の亢進
e 基底核ドパミン取り込みの低下

正答率42.9%のこの問題.皆さんいかがでしょうか.
パーキンソン症状幻視抗精神病薬の感受性亢進から,
Lewy小体型認知症が最も考えられますね.
正解はe「基底核ドパミン取り込みの低下」なのですが,
38.5%の受験生がc「後部帯状回の血流低下」と解答しました.
Lewy小体型認知症でみられるのは「後頭葉の血流低下」です.

この「後部帯状回の血流低下」の画像が,
今回の【109D2】のSPECTだったのです!
過去問の誤選択肢について勉強していると
しっかり得点できた問題が【109D2】でした.

このように過去問演習では,
臨床問題とその選択肢を深く吟味することで,
臨床・一般,両方の勉強ができるのです.

もちろん逆も然りで,
過去に一般で問われた内容が
臨床問題で改めて問われることもあります.

例として【108D8】「Creutzfeldt-Jakob病の感染防御」(一般)
【109I69】「Creutzfeldt-Jakob病の感染防御」(臨床)
が挙げられます.

過去問演習から得る知識量を最大限にするために,
今回紹介したことを意識していただけたらと思います!

今回はここまで!
次回は「出題分野の割合」をみていきましょう.
お楽しみに!

(編集部 M.T)

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