[5年生向け]国試からみる,臨床実習のポイント!(その4)実習で見るものは,国試でも問われる!(検査・手技編)
こんにちは,編集部のM.Tです.
「国試からみる,臨床実習のポイント!」も第4回,
ついに後半戦に突入です…!
今回は前回に引き続き,「実習で見るものは,国試でも問われる!」をテーマに
実習で意識すべきポイントについて考えていきたいと思います.
■ 109回国試で出た問題!(検査・手技編)
前回は,109回国試の「器具」に関する問題を通して,
臨床実習をどう過ごすのがよいか考えてみました.
続いて今回は「検査・手技」についての問題を見ながら,
どのような姿勢で実習から学ぶべきか,一緒に考えていきたいと思います.
それではこの問題を見てください.
【109F3】
血液検査項目の組合せで,2回に分けて採血すべきなのはどれか.
a 血糖とHbA1c
b ALTとHBs抗原
c 白血球分画とCRP
d アルブミンと蛋白分画
e 血液型と交差適合試験〈クロスマッチ〉
「2回に分けて採血」という言葉が引っかかった受験生が多く,
35.7%と正答率が伸びなかった問題でした.
正解は「e 血液型と交差適合試験〈クロスマッチ〉」ですが,
なぜ2回に分けて採血するのか,皆さんはわかりますか?
例えば,「a 血糖とHbA1c」の2つは,
糖尿病の診断や経過の評価,という同じ目的のために測定されますね.
輸血では,ABO式・Rh式血液型を確認した後に,
不規則抗体なども含めた適合性を確認するため,クロスマッチが行われます.
大ざっぱにいうと,選択肢eの検査は,「輸血バッグを選ぶため」と
「赤血球凝集が起こらないか確認するため」で目的が異なり,
そのため,2回に分けて採血をする必要があるのです.
医療現場で用いられる検査は,
たくさんの根拠やエビデンスをもって,現在の形式になっています.
国試を通していえることは,医学生は漠然と手順を学ぶのではなく,
「なぜこの形式なのか」という理由も学ばねばならないということです.
そういったことはやはり,実習の中での先生とのやりとりの中でこそ,
印象強く学ぶことができるのではないでしょうか.
また,手技においても同じことがいえます.
それでは,次の問題を見てみましょう.
【109E28】
急性胆嚢炎の診断で超音波ガイド下に経皮経肝胆嚢ドレナージを行うこととなった.腹部超音波像を次に示す.
穿刺経路として最も適切なのはどれか.
a ①
b ②
c ③
d ④
e ⑤
この問題の正解は「b ②」で,正答率は24.3%でした.
また,問題文に「経皮経肝」という言葉があるにも関わらず,
受験生の50.1%が,肝臓を通らないd,eを選んでいました.
経皮経肝胆嚢ドレナージには,
穿刺やチューブ留置による胆汁漏出のリスクが伴います.
これを避けるために,胆嚢と肝臓が癒着している胆嚢床を通るルートで穿刺することが,経皮経肝胆嚢ドレナージでは重要となります.
この問題も,実習中に手技を見ることがあったか,
また,見た際に「なぜそうするのか」を学んだか,
この点で正答できたかどうかが分かれた問題でした.
最後にもう1問,手技についての問題です.
【109F14】
経鼻胃管を挿入する際に正しいのはどれか.
a 挿入時に患者の頸部を後屈する.
b 噴門を通過するときに抵抗を感じる.
c 成人男性では鼻孔から30cmの深さまで挿入する.
d チューブ先端の位置を腹部X線写真で確認する.
e シリンジで送気し上腹部で水泡音が聴取されれば適正な位置である.
経鼻胃管の合併症として気管内挿入が挙げられます.
これを回避するために,
経鼻胃管挿入後にはより確実性の高い確認方法が必要となります.
正解は「d チューブ先端の位置を腹部X線写真で確認する.」です.
聴診による水泡音・気泡音の聴取も,実際に確認手技として用いられます.
しかし,胃内の水泡音と肺内音を聴診で鑑別することは難しく,
これだけで経鼻胃管が適正位置にあると判断するのは,
非常に危険であるとされているのです.
胃管挿入後の確認として,聴診・胃内容物吸引・胸腹部X線が用いられますが,
なぜこの順番で行われるのか,どれが最も確実性が高いのかということを,
実際に臨床現場で働き出す前に知っておかねばなりません.
実習では他にも様々な確認手技を見かけると思いますが,
「なぜその確認をするのか,どれが最も確実性が高いのか」
ということにも興味を持って,臨床実習を過ごしていただければと思います.
「国試からみる,臨床実習のポイント!」,
今回は,現場で見る検査や手技についてお話しました.
いかがでしたか?
次回は,現場で見る治療について,
お届けしたいと思います!お楽しみに!
(編集部M.T)