[Dr.Pの研修医日記]第10回:痛みを訴える患者への問診(その3/最終回)
こんにちは,研修医Pです.
痛みを訴える患者への問診に役立つ語呂合わせ「OPQRST」の最終回です
(復習はこちらから:その1,その2).
◆S:associated Symptoms & Severity ~随伴症状,重症度◆
associated symptomsは随伴症状の意味です.
随伴症状を聞くことによって,ある程度,疾患を連想できます.
例えば,腹痛だけなら,
虫垂炎,胆嚢炎,便秘,イレウス,上腸間膜動脈症候群,憩室炎,卵巣出血…と,挙げればキリがないけれど,
腹痛+失神ではどうでしょうか.腹部大動脈瘤の破裂や子宮外妊娠を考えられます.
腹痛+嘔吐では,イレウスや虫垂炎を考えたり.
また,腹痛に限らず,
突然の頭痛+嘔気でクモ膜下出血,
頭痛+発熱で髄膜炎,などもありますね.
あくまでも,思い込んで安直に診断を付けるのではなく,
だいたいの見当や,見逃してはいけない疾患を考えるのに使うべきです.
severityは重症度.
疼痛スケールといって,具体的に数字で表してもらいます.
人生で考えられ得る最大の痛みを10だとすると,10分のいくつぐらい痛いのか.
まぁ,人生最大の痛みなんてまだ経験したことないからわからないよ…って感じですが,
あくまでも目安です.
あんまり痛そうじゃなくても10って言う人もいれば,
かなり痛そうなのに3って言う人もいるので….
でも,同じ人に対してなら,
例えば薬を使ってみてどれくらい効果があったのかなどを判定するときに役に立ちますね.
◆T:Time course ~時間経過◆
発症してから現在まで,どのように痛みが変わっているか.
2~3日かけてだんだんひどくなって,今日は我慢できないくらい痛いとか,
3日前から同程度の痛みが持続しているとか.
痛さの程度を縦軸,時間を横軸にとって,
発症からの経過がグラフにかけるような問診を心がけます.
(もしくは,患者さんにグラフを書いてもらいます)
あとは,腹痛の時には特に,痛みに波があるかも確認します.
先ほどの疼痛スケールを使って,
一番痛い時で10分のいくつぐらい痛いのか,痛くない時には10分のいくつくらいになるのかを聞きます.
痛くない時にゼロになるかならないかも大事です.
数分周期で波がある痛みなら,消化管の病気による蠕動痛なのかな,と考えたりします.
いかがでしたか.
途中でも何度も繰り返しましたが,
ひとつの指標だけで疾患を特定できるわけではない点に注意したうえで,
この語呂について,少しでも現場のイメージと一緒につかんでもらえたなら幸いです.
(研修医P)
◆◆◆
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▼「鑑別!1st impression」の紹介誌面(『INFORMA for medical』53号 p.55より))
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(編集部A)