[分析]データでみる110回国試(その2)
選択肢の形式は?
こんにちは!編集部のM.Tです.
先週からスタートいたしました
「データでみる110回国試」シリーズ.
2回目の今回は,
「医師国家試験の選択肢の形式は?」
というテーマでお届けします.
■ 選択肢の形式
国試で最も多いのはA形式と呼ばれる五肢択一ですが,
101回からはX2形式と呼ばれる“2つ選べ”問題,
103回からはX3形式と呼ばれる“3つ選べ”問題や
“6肢以上の選択肢から選ぶ”多肢選択問題,
“数値を組み合わせて解答する”計算問題も出題されています.
ここで,110回国家試験の出題形式の内訳をみてみましょう.
この表からもわかるように,A形式が圧倒的に多く,
次いでX2形式が59問,X3形式が19問出題されています.
多肢選択,計算問題はそれぞれ2問ずつと,
出題の比率としてはごくわずかになります.
また,平均正答率については
A形式,X2形式,X3形式の順に高いという特徴はあれど,
どの形式もさほど大きな差はないというのが現状です.
それでは,それぞれの問題形式について,
110回国試の実際の問題を通してみていきましょう.
◆A形式◆
【110A1】
深部静脈血栓症のリスクファクターでないのはどれか.
a 肥満
b 妊娠
c う歯治療
d 長期臥床
e 担癌状態
110回国試一発目,深部静脈血栓症(DVT)についての問題です.
入院中や術後管理などにおいて,特に注意すべきポイントですね.
この場合cの「う歯治療」が正解になります(正答率91.3%).
cはDVTではなく,感染性心内膜炎のリスクファクターとして有名ですね.
このように答えを1つ選ぶ最もスタンダードなものを「A形式」といいます.
医師国試のほとんどを占めており,
必修問題においてはすべてがこの形式となります.
◆X2,3形式◆
【110A16】
先天性心疾患で連続性雑音を聴取するのはどれか.2つ選べ.
a 肺動脈狭窄症
b 動脈管開存症
c 心室中隔欠損症
d 大動脈弁狭窄症
e 先天性冠状動脈瘻
今度は先天性心疾患の問題です.
答えはb,eで,正答率は73.9%でした.
bは98.0%の受験生が選べたのですが,
eを選べたのが75.1%とやや少なかったようです.
「冠状動脈瘻」でなく「冠動静脈瘻」と覚えているのが一般的であり,
「何この疾患…初めまして…」となった受験生は,
どうしてもeを選びにくかったようです.
このようにX2形式の問題では,
「1つだけならすぐに選べるのに,もう1つがわからない!」
という悔しい思いをすることが多いようです.
X3形式はお察しの通り5択のうち3つを選ぶ形式です.
選ぶものが多い方が難しくなりそうですが、
X3形式は裏を返せば「誤っているものを2つ選べ」ということなので,
実質,X2形式と同じと考えてよいでしょう.
■X2,X3形式問題への対策
1つだけなら正解選択肢を選べるのに,もう1つの正解がわからないから
この問題は点数を落とすかもしれない!
そんなプレッシャーは意外と大きいと思います.
(実際毎年,X2,X3形式のほうが正答率は低いです.)
このプレッシャーに打ち勝つためには,
1つ1つの選択肢が正解か不正解か,きちんと考えられることが重要です.
『QB』を解くだけでは1つ1つの選択肢を
ゆっくり吟味することは難しいこともあります.
そこで活用していただきたいのが1問1答形式の『データマニュアル』です.
https://informa.medilink-study.com/wordpress/book/post8635.html
『QB』でうろ覚えだった部分の再確認に使ってみてください.
◆多肢選択◆
【110G69】
動脈血ガス分析(room air)の結果を示す.
pH 7.48,PaCO2 52Torr,PaO2 72Torr,HCO3- 37mEq/L
単純性の酸塩基平衡障害として,最初の変化(1次性変化)と代償性変化(2次性変化)の組合せで正しいのはどれか.
1次性変化 2次性変化
a 呼吸性アシドーシス・・・・・・なし
b 呼吸性アシドーシス・・・・・・あり
c 呼吸性アルカローシス・・・・・・なし
d 呼吸性アルカローシス・・・・・・あり
e 代謝性アシドーシス・・・・・・なし
f 代謝性アシドーシス・・・・・・あり
g 代謝性アルカローシス・・・・・・なし
h 代謝性アルカローシス・・・・・・あり
このように「呼吸性/代謝性」,「アシドーシス/アルカローシス」,「2次性変化あり/なし」
といった組み合わせの都合上,6つ以上の選択肢を並べて出題するケースが多いようです.
本問ではhが正解となります(正答率79.9%).
実質A形式と同様のものですが,勘で選ぶ場合の正解確率は下がりますね.
しかし,組み合わせの都合のみで多肢問題となっている場合,
判断すべきポイントはむしろ5つより少ないこともあるはずです(本設問であれば,3つ).
選択肢の数に惑わされることなく,落ち着いて解答することを心掛けましょう.
◆計算問題◆
【110B62】
吸入酸素濃度50%で人工呼吸中の患者.動脈血ガス分析:pH 7.40,PaCO2 40Torr,PaO2 80Torr,HCO3- 24mEq/L.
この患者のP/F〈PaO2/FIO2〉比を求めよ.
ただし,小数点以下の数値が得られた場合には,小数点以下第1位を四捨五入すること.
解答:①②③
(①②③それぞれに0~9までの数字を選んでマークする。)
P/F比の計算ということで,
PaO2の値を吸入酸素濃度で割るだけのシンプルな問題でした.
(答えは160.正答率は73.8%.)
僕もICUでの実習中には,P/F比とA-aDO2の計算をして,
患者さんの換気の状態についての評価を毎日求められていました.
計算問題ではこのように実際に計算する必要が出てきます.
近年,計算自体は簡単なものが多いのですが,
与えられた検査データの中から必要なものを正しく選び出せるかどうか,
というところで詰まる受験生が多いように思われます.
計算問題は授業や実習で使った式をノートにまとめ,
過去問に関連することは確認しておくのが重要になってきます.
また,『レビューブック必修・禁忌』と『QB必修』には
「国試に出る!重要公式」として主な計算式を掲載しています.
式の暗記と計算の練習に,こちらも参考にしてみてください!
また,もう1つの計算問題であった
110D60「呼吸機能検査における残気率の算出」は,正答率75.2%の問題でした.
小数点以下まで出てくる計算であったりと,
意外と小さな計算ミスで失点した受験生が多かったようです.
皆さんぜひとも問題演習を通して,
受験までに手計算の感覚を取り戻しておいてくださいね.
それでは今回はここまでです.
次回は「不合格者の内訳」についてです.
お楽しみに!
(編集部M.T)