[分析]データでみる110回国試(その4)
出題分野の割合は?
こんにちは,編集部M.Tです.
今回で「データでみる国試」シリーズも4回目となりました.
もう少しお付き合いくださいね.
さて,今回は「出題分野の割合」をテーマに,
国試を分析していこうと思います.
■ 出題数最多は公衆衛生!
まずは109回と110回で分野別出題数にどんな変化があったのか,
早速みていきましょう.
例年と変わらず,最も多いのは公衆衛生でした.しかし,
「公衆衛生は直前にサクッと終わらせて,メジャー科目などに勉強時間を充てたい.」
「法律や統計の勉強は,やる気があまり起きないよ…」という本音もチラホラ….
ですが,国試の1割以上を占める公衆衛生の勉強を疎かにはできません!
そこで,今年の公衆衛生ではどんな問題が出たのか,確認してみましょう.
【110B24】
学校保健について正しいのはどれか.
a 学級閉鎖は学校医が命ずる.
b 学校医は養護教諭と密に連携する.
c 養護教諭は看護師資格が必要である.
d 学校保健委員会は避難訓練を指揮する.
e 健康診査後の二次診査は学校医の業務である.
皆さん答えがわかりますか?
答えはbで,正答率85.4%の問題でした.
このように,学校保健のような医療現場以外のシーンについても,
医師として必要な知識であればあらゆるものが出題されます.
また,【110B13】「intention to treat〈ITT〉解析」や
【110G10】「交絡因子の作用と調整」といった,
臨床研究をする上で重要な事項についての出題も増えてきており,
覚える範囲は非常に幅広くなっています.
そんな公衆衛生の対策で一番大事なのは,なんといっても過去問を解くことです.
ぜひ過去問を通して,「広い範囲の中でも特によく問われる事項」を
しっかりおさえてもらえたらと思います.
そして過去問を解いてわからなかった事項を
QB公衆衛生の解説でしっかり確認.
さらに,周辺知識を『公衆衛生がみえる』や
『レビューブック 公衆衛生』などで補充すれば,
自信をもって国試本番を迎えられますね!
科目別の出題数については他にも,
「メジャー科目は呼吸器,神経,循環器,消化器の出題が多い」や
「マイナー科目だけでも合計で80問を超える」と様々なことがいえます.
「呼吸器,こんなに多く出るのにまだ演習全然進んでないから,しばらく強化期間にしよう」
「覚えること比較的少なそうやし,マイナー科で効率よく点数とろう」
といった,自分自身の分析と学習計画を立てる参考にしてもらえたらと思います.
■今年は放射線科・感染症が難しかった(?)
では次に,分野別の得点率をみてみましょう.
110回で得点率が最も低かったのは放射線科でした.
どのような問題が出たのか,早速みていきましょう.
【110G3】
放射線被ばくについて誤っているのはどれか.
a 冠動脈造影CTによる被ばく量は肺の高分解能CTより多い.
b わが国ではCTによる被ばく量が医療被ばくの50%以上を占める.
c わが国では自然放射線による平均被ばく量が世界の平均より少ない.
d 妊婦の腹部CTの被ばく量は胎児に確定的影響を及ぼす線量より多い.
e 5回の日米間往復フライトによる被ばく量は胸部X線撮影より多い.
皆さんすぐに答えられますか?
私自身,放射線科の問題はあまり得意ではありません.
やはり目に見えないものはイメージもつかみにくく暗記しづらいような気がします.
正解はdで,正答率63.3%の問題でした.
あまり大きな声で言えることではないのですが,
国試では放射線科は出題数も毎年3問程度ですし,
捨ててしまうのも手かもしれません.
ただし!臨床では放射線科の知識は非常に重要です.
妊婦さんに放射線被ばくのリスクについて正しく説明する必要もありますし,
医療被ばくから自らの身を守ることも要求されます.
放射線科の知識は実際の現場に出る上で非常に重要なものです.
実際に臨床に出るまでには,みなさんぜひしっかり勉強するようにしておきましょう.
次いで正答率が低かったのは感染症でした.
感染症からも1問ご紹介します.
【110E34】
QT延長に注意すべき抗菌薬はどれか.2つ選べ.
a セフェム系
b ペニシリン系
c マクロライド系
d ニューキノロン系
e アミノグリコシド系
投与回避の理由となるような副作用については,
私自身,産婦人科や小児科の問題演習を通してすぐ暗記できたイメージがあります.
しかし,本設問の正解はc,dで,正答率は10.7%であり,
明らかな禁忌の理由とならないような副作用については,
しっかりと網羅できている受験生は少なかったようです.
近年の国試をみていると,
「もうすぐ現場に出るのだから,
自分の使うものや行うことくらい,きちんと理解しておきなさい」
という出題委員の意図がにじみ出ているような設問が多くみられます.
これまでは「実習をきちんと見て学んだかを問う問題が増えた」と
お伝えすることが多かったのですが,
110回では「研修医になる準備ができているかを問う問題が増えた」
といった印象を非常に受けます.
皆さんぜひ「研修医になってすぐに必要となる知識を身につける」,
そんな意識を持って国試に向けて勉強をしていきましょう.
そういった先を見据えた勉強が,国試対策にもつながっていくと思われます.
今回は「出題分野の割合」から国試を分析しました.いかがだったでしょうか.
出題数や難易度を把握しておくと,勉強の優先順位を決める際に便利だとも思います.
国試の勉強,何をすべきかわからない!という方は,是非参考にしてみてください.
次回は「正答率からみる難問・割れ問」についてお届け予定です.
お楽しみに!
(編集部M.T)