[分析]データでみる110回国試(その6)
難問と割れ問,リベンジ問題とは?
こんにちは,編集部M.Tです.
データでみる国試,最終回である今日は,
「難問と割れ問」,「リベンジ問題」をテーマにお話します.
■110回の難問と割れ問
まず110回で出題された難問についてです.
正答率が低かった問題を1問紹介します.
【110B5】
輸液製剤で維持液に分類されるのはどれか.
輸液に関する非常にシンプルな問題ですが,
みなさん正解がわかりますか?
各選択肢の選択率は,以下のとおりです.
a 5.5%,b 30.1%,c 26.7%,d 34.6%,e 3.2%
排泄・不感蒸散などにより失われる水分・電解質を
補うために用いられるのが維持液です.
体重60kgの健常人であれば1,500mLの水分と
Na+ 60mEq,K+ 30mEqを1日に失っています.
そのことからも維持液として適当なのはdとなります.
正答率は34.6%,一般問題の平均正答率が75.2%である中,
受験生の約2/3が誤答した難問でした.
また,本設問ではb,c,dで解答が割れており,
このように2つ以上の選択肢で解答がわかれたものを,
そのまま「割れ問」と呼んでいます.
国試の会場ではこの「割れ問」をめぐって色んな所で議論が起こり,
「あの問題間違えたかも…」と不安にさせられることが多々あります.
毎年何問かこういった「割れ問」が出てくるので,
試験当日はあまり気負いすぎることなく,
「沢山の人が迷っている問題だし,気にせず次にいこう」
と前向きに対応できるといいですね.
■難問はたくさん出るの?
次に110回国試では難問,つまり正答率の低い問題が
どのくらい出題されていたのかをみていきましょう.
上の表は必修を除く一般・臨床問題の正答率の分布です.
(採点除外となった3問を除く)
医師国試は合格率が毎年90%前後で推移する試験ですから,
難問が解けることより,多くの人が解ける問題で確実に正解することが重要となります.
上記の表から正答率70%以上の問題は270問,
つまり一般・臨床問題のおよそ68%を占めています.
データでみる国試 第1回でも紹介したように,
一般・臨床問題の合格基準は65%程度ですから,
正答率70%以上であればできるだけ落としたくない問題であることがわかります.
先ほどの【110B5】のような「半分以上の受験生が間違う難問」となると,
その数は397問中54問,1割強しかないことがわかります.
当日の受験生であればこの1割強を
「難しい問題だから仕方がない」と済ませてよいかもしれません.
しかしこれから受験するみなさんは,はたして
「難問だし解けなくていいやー」
「採点除外なら勉強しなくていいじゃんー」
と考えてよいのでしょうか.
ここでポイントとなるのが「リベンジ問題」です.
■リベンジ問題って何?
国試では「正答率の低かった問題」や「採点除外となった問題」が
翌年以降に再び出題されることがあり,
こういった問題は「リベンジ問題」と呼ばれています.
ここで今年のリベンジ問題を紹介します.
105回と110回の問題を1問ずつ見てみましょう.
まずは105回の問題です.
【105D49】
4ヵ月の乳児.予防接種を受けた部位の変化を心配して来院した.3日前に左上腕にBCG接種を受けた.昨日から接種部位の発赤を認め,接種痕が膿疱様になってきたという.体温36.8℃.身体診察所見に異常を認めない.哺乳力や機嫌に変化はない.接種部位の写真を次に示す.
説明として適切なのはどれか.
a 「通常の反応であり,検査や処置は不要です」
b 「1週後にまた受診してください」
c 「黄色い膿を採取して顕微鏡で検査しましょう」
d 「黄色い膿を採取して培養検査をしましょう」
e 「ツベルクリン反応の検査をしましょう」
次に110回の問題です.
【110D53】
5ヵ月の乳児.BCG接種部位が赤く腫れてきたため母親に連れられて来院した.BCG接種後2日目に接種部位が赤く腫れてきたことに気付き,日ごとに増悪したため接種後5日目に受診した.これまで成長や発達に異常を指摘されたことはない.来院時,左上腕部の接種部位に発赤と腫脹とを認め,一部膿疱様になっている.身体所見に異常を認めない.
まず行うのはどれか.
a 経過観察
b CRP測定
c ツベルクリン反応
d イソニアジド内服
e 膿汁の抗酸菌染色
この2問はともに
「乳児に対するBCG接種でコッホ現象がみられた際の対応」
を問う問題で,画像の有無以外に大きな違いはありません.
実は【105D49】は「問題としては適切であるが受験生レベルでは難しすぎるため」
という理由で採点除外になっていたのですが,
今回の【110D54】ではしっかり採点対象となっていました.
正解はc,正答率は45.4%でした.
上で例に挙げた問題は,105回が採点除外のため正答率を比較できませんが,
リベンジ問題として出題された場合には一般的に,
正答率が大幅に上がる傾向にあります.
過去の例としては
【107I66】大腿骨近位部骨折を診断する問題(正答率45.5%)
→【108F22】大腿骨近位部骨折を疑わせて,股関節X線撮影を選ばせる問題(78.3%)
【107G21】悪性リンパ腫のリンパ節の典型的所見(69.1%)
→【108H4】がんの転移によるリンパ節腫脹の特徴(99.0%)
などが挙げられます.
正答率が低かった,あるいは採点除外となったからこの問題の対策は必要ない!と投げるのではなく,
翌年以降に改めて出題されることはないか,見極めることが大事です.
過去問は近年3年分(できれば5年分)をしっかりと解きましょう.
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『110回医師国家試験問題解説』が4月26日(火)に発売されました.
111回国試に向けて,ぜひ手にとってみてくださいね!
それでは「データでみる110回国試」は以上になります.
お付き合いくださり,ありがとうございました!
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(編集部M.T)