[5年生向け]国試からみる,臨床実習のポイント!(その6)
入院から退院までのイメージを持とう!

皆さんこんにちは,編集部のM.Tです.
「国試からみる,臨床実習のポイント!」もついに最終回.
今日は「入院から退院までを意識する」をテーマにお送りします.

■ 入院から退院までのイメージを持とう!

突然ですが,皆さんに質問です.
皆さんが受ける実習である「クリニカルクラークシップ」,
この目的とは一体何でしょうか.
改めてそれを考えるために,110回の問題を1問みてみましょう.

【110D59】
60歳の女性.1回経妊1回経産婦.性器出血を主訴に来院した.50歳で閉経.1年前から時々性器出血があった.身長154cm,体重64kg.子宮は手拳大で両側付属器は触知しない.経腟超音波検査で子宮内膜の肥厚を認め手術を行うこととした.子宮内膜生検のH-E染色標本を次に示す.

110D59

この患者の術前検査として適切なのはどれか.3つ選べ.
a HbA1c測定
b 骨盤部MRI
c 腹部造影CT
d 骨シンチグラフィ
e ヒトパピローマウイルス〈HPV〉検査

まず症例文と病理画像から子宮体癌と診断し,
そのあと術前検査として適切なものを選ぶ問題です.
各選択肢の解答率は,
a 31.5%,b 99.1%,c 93.9%,d 72.1%,e 2.3%でした.
皆さんはどれを選ぶでしょうか.

正解はa,b,cで,正答率は25.3%でした.
実際の解答率からもb,cは選びやすい選択肢なのがわかります.
では,解答率の低かったa HbA1c測定についてはどうでしょうか.

この問題,実は設問文の「この患者の術前検査」という記載が重要ポイントです
問題文の流れ的に受験生の思考として,
「子宮体癌」という疾患に焦点がいきがちです.
しかし,今回問われているのは「子宮体癌」についてと,
さらに「この患者」に手術を行う際に
何に気をつけなければいけないかということです.

この患者は「身長154cm,体重64kg」と肥満であり,
そこから糖尿病,脂質異常症などの生活習慣病についても
気にしなければいけないことがわかります.
なかでも糖尿病には「術後感染症のリスクが高くなる」,
「傷の治りが遅くなる」といった問題があります.
このことから,この患者の術前検査としてHbA1c測定が適切であることがわかりますね.

ここで最初の質問に戻ってみましょう.
皆さんが受ける実習である「クリニカルクラークシップ」,
この目的とは一体何でしょうか.

これまで「国試対策において臨床実習がいかに有用か」,
このメルマガを通してお話してきましたが,
臨床実習の目的は疾患の学習だけではありません.
上級医の指導の下で「クラーク」として患者さんを受け持ち
「入院から退院まで」,実際の医療の基本を修得すること,
そこに病院実習の目的の本質があると思います.

今回は「術後まで考えて術前検査を行えますか?」という問題をご紹介しました.
扱われているのは「入院から退院まで」のワンシーンに過ぎませんが,
患者さんと向き合って,その方に合った「入院から退院までのイメージを持つこと」の
重要性が少しでも伝わってくれたらなと思います.

「国試からみる,臨床実習のポイント!」,
1ヶ月にわたってお送りしてきましたが,皆さんいかがでしたか?

最後まで読んでくださり,ありがとうございました.
それではまた別のメルマガでお会いしましょう.
皆さんの臨床実習が,より充実したものになりますように.

(編集部M.T)

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