[5年生向け]国試からみる,臨床実習のポイント!(その3)教科書丸暗記では対応できない問題

こんにちは,編集部のA.Mです.
今週もお届けします,「国試からみる,臨床実習のポイント!」
第3回の今日は「教科書丸暗記では対応できない問題」についてお送りします.

■ 教科書の知識をベースに臨床での対応力を磨く!

最近の国家試験は,教科書に書かれていることを
ただ暗記するだけでは解けない問題が増えています.
臨床現場で柔軟に対応できる思考力が問われる傾向にあるんです.
ここで,実際に出題された111回の臨床問題をみてみましょう.

【111I44】
65歳の男性.大腸癌の手術後で入院中である.2週間前に右腹部の腫瘤と疼痛とを自覚して受診した.来院時,身長165cm,体重64kg.脈拍64/分,整.血圧140/88mmHg.右側腹部に可動性のある径5cmの腫瘤を触知した.腹部CTで上行結腸の不整な壁肥厚と上腸間膜静脈周囲のリンパ節腫大を認め,大腸内視鏡検査と生検で上行結腸癌と診断された.入院後,リンパ節郭清を伴う右半結腸切除術が行われた.現在,手術終了から16時間が経過している.脈拍104/分,整.血圧108/80mmHg.腹部は軟だが,やや膨隆している.腸雑音は低下している.16時間尿量560mL,尿比重1.020.経鼻胃管からの16時間排液量は1,200mLで性状は淡黄色混濁である.
行うべき処置はどれか.
a 輸液の増量
b イレウス管挿入
c 制吐薬の静脈投与
d 利尿薬の静脈投与
e ソマトスタチン誘導体の皮下投与

正答率57.1%だったこの問題.
「手術から16時間経過」,
「16時間尿量560mL」,
「16時間排液量1,200mL」と,
手術終了後「16時間」の状態から適切な処置を問われており,
多くの受験生が困惑しました.

問題解決のカギになるのが時間のながれです.
本症例では,術前に比べて術後のバイタルが頻脈,低血圧に変化しています.
また,時間尿量もやや少なく脱水状態であることを示唆されます.
これらのことから輸液量を増やせばいいのです.
ということで,正解はaでした.

なお,一番多かった誤答はbでした.
大腸切除術後16時間で超雑音低下は生理的範囲内であり
(生理的腸管麻痺の状態であり),
イレウス管を挿入するには時期尚早といえます.

臨床現場では患者さんの症状,身体所見,検査所見などが経時的に変化します.
そのときそのときで必要な情報を拾い上げ,
問題があれば解決する能力が必要とされます.
症状,身体所見,検査所見などを1つ1つ勉強することは教科書でできますが,
その経時的な変化に対応する力を教科書だけで
勉強するのはなかなか難しいと思います.

そこで,実習中は受け持ち患者さんの症状,身体所見,検査所見などの変化を追い,
プロブレムリストを挙げてその解決方法を考える
ということを積極的にやってみましょう.

今回のメルマガで紹介した問題のように,近年の国試では,
経時的変化を追って考える必要のある問題や,
臨床現場で柔軟に対応できるかが問われる問題が多くなっています.
教科書丸暗記ではなかなか対応が難しい問題ではないでしょうか.
実習をうまく活かして国試勉強にもつなげてみてくださいね.

今日はここまでです.
次回は「イメージしにくい用語や症例」についてです.
それではまた来週.

(編集部A.M)

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