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国境なき医師団やJICAで働く(6:JICAへの応募)~竹中裕先生~[みんなが知らない医師のシゴト]
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【JICAで働く その3】
↑本記事の目次です
■JICAに応募
私が国際協力機構(以下JICA)とはじめてつながりを持ったのは2013年の年末である。
その当時、国境なき医師団(以下MSF)での活動は7回を数え、初回の派遣から2年半が経過していた。次にいったいどのようなキャリアの選択があるのかを模索していた。
たまたまインターネットでJICAがインターンを募集していることを知り、そのなかに医師枠もあったため、迷わず応募した。
同時に、知り合いの産婦人科医から、JICAで短期専門家の仕事を紹介され、2014年の2月にはドミニカ共和国での仕事が決まった。
実はこの2年後の2015年からはJICAに就職して2年間働くことになるのだが、その当時はそのようなことは当然、予想もしていなかった
●ドミニカ共和国にて。病院でカルテを調査
■JICAとは“日本政府としての海外援助を一元的に管理する組織”
私の経験談を進めていく前に、そもそもJICAとはどのような組織で、どのような活動をしており、医師としてJICAで(あるいはJICAと)働くにはどのような道があるのかを紹介したい。
JICAとは、一言で言うと、“日本の政府としての海外援助を一元的に管理する組織”である。
援助の内容は、多岐にわたり、保健・医療はその一部でしかない。
他に農業、教育、環境問題、エネルギー、貧困削減、平和構築、道路、港湾、法整備、民主化支援などが例として挙げられる。
JICAのような組織は先進国各国に存在し、たとえば、アメリカではUSAID、韓国にはKOICAが存在する。
JICAで働いていた話をすると、よく“私もJICAで働きたい”とか、“友人もJICAに行っていました”と看護師の方から言われることがある。
こういうときよくよく話を聞いてみると、青年海外協力隊(以下JOCV)のことを指しているのであった。
JOCVはJICAの事業の一つであるが、JOCV=JICAではないので注意が必要である。
■青年海外協力隊は医師の募集はない
残念ながら現在、JOCVでは医師としての募集枠はない。
助産師・保健師・看護師・薬剤師・獣医師の枠は健在である。
一般論として、JICA本体の事業およびJOCVの活動で、実際の臨床に携わる(つまり侵襲的な医療行為)ことは禁止されていることが多い。
現地のスタッフへの教育や、病院内外での医療体制の構築、教材の作成などが業務内容となっている。
ただし、自然災害などの際に派遣される緊急援助隊に関してはその限りではない。
●シエラレオネの助産師に超音波の使い方を教える
■世界にはさまざまな援助機関がある
国際社会にはさまざまなプレイヤーが存在し、JICAのような組織は援助機関(ドナー)と呼ばれている。
援助機関はJICAをはじめとした国対国の援助機関以外に、国家を主体としない世界銀行やGlobal Fund、民間の資金により運営されているBill & Merinda Gates Foundation(ビル・ゲイツとその妻により設立)などがある。
それ以外に、MSFなどの非政府組織(NGO)、国連系の機関(保健医療の業界では、WHO、UNICEF、UNFPAなど)、赤十字、そのほか大学などの研究・教育機関やコンサルタント会社などが挙げられる。
実際に働いてみないと分からないことは多いし、実際に働いてみても分からないことだらけなのだが、ばりばり海外で臨床をやりたいのなら臨床系のNGOか赤十字、それ以外のプロジェクト管理やガイドラインの作成、研究、交渉などのデスクワーク(頭を使う仕事)が好きならばそれ以外がいいのではないかというのが私の印象である。
■JICAのインターンに合格
さて、上記のようなことはその当時は全く知らずJICAのインターンに申し込んでみた私であるが、無事に選考には合格した。
今でも医師枠のインターンは存在すると思うので、まめにインターネットなどで情報収集をしてみるといいかもしれない。
MSFもJICAも広くその名を知られるほど有名なので、とりあえず有名どころからあたってみたというのがそもそもの始まりであるが、それはそれで悪くなかったと思う。
●JICA 国内研修の様子
~第7回へ続く~
※全10回を予定しています!続きもお楽しみに!
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